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2017年上半期ベスト

 この時期恒例の上半期ベストです。6月中に手元に届いた音源から25枚選んで順位をつけました。画像がbandcampやyoutubeなどの試聴サイトへのリンクになっています。ではどうぞ。

 

 

25. Theo Bleckmann『Elegy』

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コンテンポラリージャズ。様々な参加作品でその声の素晴らしさは知っていた(特に本作にも参加しているJohn Hollenbeckの作品での歌唱は印象深い)Theo Bleckmannだけどリーダー作を聴くのは初めてだった。一歩一歩踏みしめるようにメロディーを歌いあげたり、器楽的というかスキャットのような歌唱で他の楽器に絡んでいったり。こんな深みがあって肌触りがグラデーショナルに変化するような「ア~」出せるひとなかなかいない。全体的なサウンドにどこかプログレの香りを感じるのは音楽的、楽理的な複雑化と歌が同居しているから?

 

 

24. Satomimagae『Kemri』

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アシッドフォーク。こんな声で歌うの反則。

 

 

23. Kassel Jaeger & Jim O'Rourke『Wakes On Cerulean』

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電子音響/アンビエント。深みのあるドローンに時にコズミックな音色などで(節度ある範囲で)差し込むシンセ、物語のガイドとして絡むような環境音など、二者の持ち味がとても上手くかみ合った一枚。

 

 

22. DJ Krush『軌跡』

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ヒップホップ。厚みを感じさせる低域の鳴りがとにかく気持ちいい。全体的にクリアな音像ながらドープさを失わないのはその辺りで音楽としての重み、説得力を保っているからか。最初はOMSBと5lackの参加曲が印象強かったが最近はR指定呂布カルマの曲にハマってる。

 

 

21. Eivind Opsvik『Overseas V』

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コンテンポラリージャズ。めちゃくちゃ演奏ウマい捻くれロックバンドのアルバムみたい。曲調の変化球っぷりが痛快。でも3曲目はとんでもなく美しい。

 

 

20. Helm『Rawabet』

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エクスペリメンタル/インダストリアル。音素材の種類はそれほど多くないと思うけど、ゴツゴツとした環境音と官能的なシンセ(?)などなどを同一線上で捻りあげるような所作にセンスとグルーヴめいたものが感じられてとても好みだった。コラージュ的な技法を用いながら(おそらくライブ録音だからだろうけど)節操なく矢継ぎ早に展開していくようなものではなく取捨選択された素材と手法の効果的な配列が息の長い緊張感を生み出していて何か品格のようなものが感じられる。とても美しい音楽だと思う。あとこれ聴いてて初めて思ったんだけど、この人の音楽の持つエクスペリメンタル性ってミュージック・コンクレートやコラージュっていうよりもダブ由来のものって感じが強いのかも。今作の音の飛ばし方とかすごくダブの影響を感じさせるし、1曲目に(Version)とかついてるし。

 

 

19. Ambrose Akinmusire『A Rift in Decorum: Live at the Village Vanguard

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コンテンポラリージャズ。現代を代表するトランペッターの二枚組ライブ盤。それぞれのディスクの最後の曲などでは過剰な表現も出てくるけど、全体としてはリーダーが突出したりというよりは各奏者の演奏がとてもバランスよく耳に入ってくるような内容で終始端正さを失わない、なんだかとても“らしさ”を感じる作品だった。

 

 

18. Basic Rhythm『The Basics』

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ロウなテクノ。こういうのあんまり詳しくないからいろいろ言及したりはできないけど、前作よりリズムパターンが曲毎に違う印象があるのと、より思い切ってスカスカな曲だったり粗さが目立つ曲があったりして、そのちょっと不揃いな感じが作品全体の猥雑さだったり怪しさを増幅させてる気がして滅茶苦茶かっこよかった。前作のほうが統一感はあると思うけど自分はこっちのほうが好きだな。

 

 

17. Phil Julian『Relay』

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実験音楽。換気システムのフィールドレコーディングを軸としたマルチチャンネル & 再加工のミニマル反復パターン録音集とのことだけど、本当に?って思うくらいインダストリーな響きがバンバンでてきてかなりパンチ効いた内容。反復を基にした構造的な作り?なのかもしれないけど、トーンクラスターのような高圧的な響きで迫ってくる場面のほうが印象に残った。

 

 

16. Giuseppe Ielasi『3 Pauses』

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実験音楽アンビエント。丁寧に編まれた繊細な音響作品のようにも、ラフに描かれた曲以前のスケッチのようにも聴こえる。全編にうっすらと淡い情緒のようなものが漂っているように思えて、そこが不思議かつ魅力的。

 

 

15. Yann Leguay『Headcrash』

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実験音楽ターンテーブルに見立てた四台のハードディスクドライブを使用したサウンドアート的な内容(言葉ではわかりにくいと思うけど映像を見れば一発でわかる)。まず装置の見た目や仕組みだけで滅茶苦茶興味惹かれるんだけど、出てくる音もグリッチ的な不規則なノイズだったりフィードバックによる厚みのあるドローンだったりが多層的にうねっててめちゃくちゃかっこいい。これはマジでヤバい。インダストリーな音の響きはPhil Julian『Relay』と、多層的に鳴っている音が大きなひとつのうねりを生むようなところはHelm『Rawabet』と通じるところがあるかも。

 

 

14. Roedelius / Hausswolff『Nordlicht』

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ドローン/アンビエント。コアな音響作家であるHausswolffとニューエイジ的なイメージの強かったローデリウスのコラボってことでかなり意外に感じたし正直悪い予感がしたんだけど、案外違和感なくまとまってた。といって自分はやっぱり最もHausswolff色が強いドローンが楽しめる(そういった意味ではコラボ色の薄い)1曲目が最も好きなんだけど。2~4曲目はそれぞれ違ったかたちで両者の個性が混じる。画像のリンクはレーベルのデジタル販売のページにしてますが、これ意外にも(?)Apple MusicSpotifyにもあるみたいなんで試聴などはそちらで。

 

 

13. tricot『3』

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ロック。前作と比べるとリズムが複雑でそこに多少のついて行けなさを感じなくもないんだけど、不思議とやりすぎな感じは全くなくてなんかやけにサラっと聴けてしまう。アルバムの曲の並びとかも最初はちょっとチグハグに感じたはずなんだけど…。

 

 

12. Imaginary Forces『Runnin's』

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インダストリーな音響/テクノ。前作で初めてこの人の音楽聴いた時は「BPM速めたMika Vainioやんけ!(最高…!)」って感じてドハマりしたんだけど、今作には声ネタ入ってる曲なんかも結構入ってるからかそういった印象はあまりなくて、ちょっと見当違いだったかなと思い直し中。しかしまあ音の圧は相変わらずで、しっかりテクノでループミュージックなんだけどそのループを構成してるシーケンスひとつの快楽性がとにかく半端ない。ループミュージック特有のだんだん上がってくるような感覚より一発目でブチ上げてくる感覚が強い。最早ループしなくても音楽としての快楽が成立しそう。

 

 

11. Félicia Atkinson『Hand In Hand』

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モジュラーシンセと声を用いた電子音楽実験音楽。どこがどういいのか説明するのが難しい類の音楽…。ただただモノクロームに流れていくような音だけどその雰囲気がとてもいい。しかしこの感じでよくこの時間聴かせられるなあ。この音をこの状態で出せるセンス羨ましい。

 

 

10. DJ Yazi『Pulse』

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エクスペリメンタル~アンビエントからディープなテクノまで幅広く用いたMIX音源。いろんな音をごった煮し違和感なく一篇の音絵巻に纏め上げているのはもちろん、トラックリストがわかったとしてもまず真似できないような音の編み上げっぷりで完全に総体として“DJ Yaziの音”になってるのが凄い。フィルターなどの各種エフェクトも時に過激なほどに用いているんじゃないかと思うんだけど、それらのツールを単に繋げる、重ねる以上に響きに自分の意思を練り込むような一段深い使い方をしているように思う。トータル70分越えにも関わらず何度も聴いた。

 

 

9. The Necks『Unfold』

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即興演奏。彼らにしては珍しく20分程度の曲4曲という構成。昨年観たライブを鮮明に思い出させてくれるような内容で、今の彼らの音をとてもうまくパッケージングできてると思う。

 

 

8. 坂本龍一『async』

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クラシック~現代音楽をベースにした個人的な音楽。手法として新しさを感じさせるものはほぼないんだけど、その代わりに自分の中に深く根付いているものを中心に自分の体に自然に入ってくる、自分が聴きたい音を作ったことが強く伝わってくる。自身と自身が接してきたものに対する慈しみのようなものを感じるアルバムである意味とてもナルシスティックなんだろうけど、それが過度に感傷的な色合いを帯びず一定の距離感とそれに伴う緊張感があることで、坂本龍一自身でなくとも聴ける作品になってる感じ。実験音楽の対極に在る音楽のようにも思う。

 

 

7. 石上和也『Canceller X』

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電子音響/アンビエント。昨年の『cleaner 583』と通じる部分はありつつもこちらはより音が点描的に鳴る場面が多い印象で、それらの音が音階(=12音とは限らない)を形成する場面も耳につく。あと点描的に鳴るって書いたけどそれらの音にはかなり深めに空間系(主にリバーブ)がかけられているケースが多く、音と音の隙間を確保するためというよりはそれが鳴っている空間の特徴をより深く印象づけることに意識があるのかなと。全体通して深い洞窟の中のような鳴り。石上和也さんはアカデミックな流れにあるミュージック・コンクレートも制作される方だけど(というかむしろそちらが専門?)、そういった方面での制作と今作のようなアンビエント寄りの制作では空間系の用い方の違いなんかがかなりありそうだなあと思った。

 

 

6. Fabian Almazan『Alcanza』

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 コンテンポラリージャズ。前作『Rhizome』の延長線上といった作風だけど、洗練された美を感じさせた前作に対し今作は冒頭からやけに野性味溢れる演奏/アンサンブルで特に初めて聴いた時の印象は鮮烈だった。トータル1時間の組曲形式ながらストーリー性のある構成で全く飽きずに聴き通せるので、再生する際にある種の負担を感じれるどころかこれからの1時間が楽しみで仕方なくなる。

 

5. Colin Vallon Trio『Danse』

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コンテンポラリージャズ。前作でも顕著だったリズム面の創意工夫が感じられる曲ももちろんいいんだけど(特にThe Necksを思わせるような2曲目と5曲目素晴らしい)、それ以上にメロディーのよさが際立ったアルバム。リプライズのようなかたちで2度演奏される「Reste」や、「Sisyphe」、「Smile」辺りの曲の美しさには(よく聴いていた時期がちょっと精神的にツラかったのもあって)かなり救われた。

 

 

4. 今井和雄『the seasons ill』

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フリージャズの要素もある即興演奏。どれだけ音数が増えようとも、一音一音を聴きとるということがノイジーさで困難になろうとも、それらのサウンドをしっかりコントロールして、“弾いて”出していることが感覚的に薄くならずに伝わってくるのが凄い。音数が増えまくった放流のような場面においてもその中で一音一音が硬い輪郭を残して立っているみたいな感じがあってレンガが雪崩起こして迫ってくるみたいな感覚になるし「ウギャーーーーーー!!!!!!!!!!」ってよくわからない声を発しそうになる。聴いてる間脳内はずっとそんな感じ。好きになるかどうかはともかく聴けば誰もが凄いとは感じるだろうし、本当にこれほど再生してしまえばあとは何も考えず聴くだけでいい音楽ってなかなかないかもしれない。そういう意味では究極にわかりやすい音楽かも。

 

 

3. Matthew Stevens『Preverbal』

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コンテンポラリージャズ。といっても演奏しているのがジャズミュージシャンってだけで方法としてはポストロックと言ってしまったほうがいいのかもしれない。でもアドリブになった時のギターのフレージングなんかはバリバリ現代ジャズだからやっぱりジャズか(まあどっちでもいいか)。あとポストプロダクションなどいくら用いても演奏のリアルタイム性が全然失われないようなところはすごくジャズミュージシャンらしいなって思う。ここは重要な点かも。あとこれ聴いてからRadianだったりTortoiseだったりがやたら面白く聴こえるようになって(いやもちろん今までも十分好きなバンドだったけど)、なんかポストロックを再発見させてもらえた感(そもそもポストロックの旨みをわかってなかった可能性もなくはない)。

 

 

2. Hisato Higuchi『Kietsuzukeru Echo』

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アシッドフォーク。特に書くことがない…。多分10秒も聴けばこれが自分の好きな音楽かどうか判別できるような音だと思う。そして好きな人にとっては生きていくのに必要な音になる可能性すら十分にあると思うからとにかく聴いて。私を信じて。

 

 

1. Linda Catlin Smith『Drifter』

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現代音楽。カナダの女性作曲家の作品集。ミニマリズムの影響というか、それ以降の音楽であることはどことなく感じられるんだけど、手法としてそれを前面に出すことはほとんどなく、曲によっては和声の変化なども掴みどころがないほどに複雑。感覚的に美しいものとしてある種聞き流すように聴くには複雑すぎて最初はとても自分の手には負えない音楽に思えたんだけど、フレーズを断片的に反復させながらその用い方を徐々にズラし、そこに美しいメロディーまで絡めてくる「Drifter」の美しさに気付けた時から面白いと思えるようになった。大雑把でいいから各曲の展開を把握できるくらいまで聴き込むと相当化ける音楽だと思う。それぞれの楽曲に共通する方法論などはまだ見いだせずこの人の関心がどこにあるのかはうまく読み取れないんだけど、それはおそらく個別に作曲された作品集って形式によるものかもしれない。以前リリースされているピアノ作品集ではそういったとっ散らかった印象はなかった。正直いくつかの楽曲についてはまだ全然聴き込めていないので、その辺り詰めていくのがこれからの楽しみ。

 

今月のお気に入り(2017年6月)

・Matthew Stevens『Preverbal』

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・DJ Yazi『Pulse』

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・Cassius Select『90 / HERD』

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・Burial『Subtemple』

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・Inventing Masks『2nd』

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・Yan Jun and Ben Owen

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・Yann Leguay『Headcrash』

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・Fabian Almazan『Alcanza』

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・Satomimagae『Kemri』

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・Joshua Bonnetta『Low Islands』

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・Yann Novak『Surroundings』

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DJ Krush『軌跡』

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・Imaginary Forces『Runnin's』

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・Félicia Atkinson『Hand In Hand』

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・John Wall /Mark Sanders /John Edwards『FGBH』

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・Eivind Opsvik『Overseas V』

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・Bellows『Strand』

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Paul Bley『Ballads』

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John Abercrombie『Timeless』

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Terje RypdalWaves

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・Alfredo Costa Monteiro『UMBRALIA』

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・Diggs Duke『Offering For Anxious』

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・Beatriz Ferreyra, Christine Groult『Nahash』

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・Leslie Winer & CM von Hausswolff『①』

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今月のお気に入り(2017年5月)

・Hisato Higuchi『Kietsuzukeru Echo』

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坂本龍一『async』

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・Science Friction & Tim Berne『Science Friction』

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・Giacinto Scelsi『Natura Renovatur』

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・Graham Lambkin『Community』

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・Duo ERB - LORIOT『Sceneries』

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SlowdiveSlowdive

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・石上和也『trash,rubbish,poor works』

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at the drive-in『in•ter a•li•a』

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・Andrew Hill『Solos: The Jazz Sessions』

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Ornette Coleman『Body Meta』

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・湯川静『kanojonodokusinshatatiniyottetoumeikasaretahanayome,saemo』

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・enso56「today」

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・tricot『3』

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・Sub Oslo『Sub Oslo 12" EP』

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・宮本菜津子『なまみ』

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『Ambient Thug Mix 001』

DJ MIX的なものを作ってみました。ノンビートで50分ほどのアンビエントミックスです。寝る前とかにどうぞ。

Track List

1. Giacinto Scelsi - Ave Maria / 00:00~

2. Tigran Hamasyan, Arve Henriksen, Eivind Aarset & Jan Bang - Traces I / 00:40~

3. L'Ensemble Instable - D'Un Verre D'Eau / 03:20~

4. David Grubbs & Nikos Veliotis - The Harmless Dust Part Two / 04:30~

5. Tyshawn Sorey - Reverie / 04:40~

6. Max Eastley - 2 Aeolian Harp Pt.1 / 05:46~

7. Carl Michael Von Hausswolf, Jason Lescalleet, Joachim Nordwall - Enough!!! / 08:08~

8. Billy Gomberg & Anne Guthrie - convention of moss / 09:14~

9. Marc Behrens - A Narrow Angle: Taipei Metro Easycard 500 NT$ / 12:20~

10. Sonic Youth - Little Trouble Girl / 14:38~

11. Joseph Clayton Mills, Deanna Varagona, Carrie Olivia Adams - Oceanus / 15:10~

12. Monica Brooks & Laura Altman - in distinction / 15:46~

13. Ryoko Akama & Bruno Duplant - l'immobilité (n'existe pas) / 16:40~

14. Steve Roden - The Radio / 16:50~

15. Thet Liturgiske Owäsendet - Catalina / 21:55~

16. Merzouga - 52º46' North 13º29' East - Music For Wax-Cylinders / 25:23~

17. Michel Redolfi - Too Much Sky / 26:25~

18. David Virelles - Wind Rose (Antrogofoko mokoirén) / 28:20~

19. Michael Pollard - Spatialisation Study 01 / 29:54~

20. Sachiko M + Ryuichi Sakamoto - snow, silence, partially sunny / 32:45~

21. Catherine Lamb - Three Bodies (Moving) / 35:07~

22. Ryoko Akama, Bruno Duplant, Dominic Lash - grade two extended / 35:46~

23. Jakob Ullmann - Voice, Books And FIRE 3 / 36:29~

24. Laura Altman and Peter Farrar - sleepyheads / 39:00~

25. Ø - Takaisin / 42:40~

26. Grouper - Holdong / 44:52~

27. Shuta Hiraki - Stained Minus / 51:54~

28. Matana Roberts - J.P. / 52:11~

今月のお気に入り(2017年4月)

SlowdiveSonic Youthをやたらよく聴き返していました。

 

 

・Jakob Ullmann『Fremde Zeit Addendum 4』

 

 

 

・Jakob Ullmann『Voice, Books And FIRE 3』

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・Linda Catlin Smith『Drifter』

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・Steven Roden / In Be Tween Noise『The Radio』

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・Michael Pisaro • Radu Malfatti • New Music Co-op『Invisible Landscapes』

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・John Butcher『Resonant Spaces』

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・Johan Lindvall『Solo / Ensemble』

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・今井和雄『the seasons ill』

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・Anthony Pateras『IMM008: Blood Stretched Out』

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・Kassel Jaeger & Jim O'Rourke『Wakes On Cerulean』

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・Leo Okagawa『The Notional Terrain』

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Giuseppe Ielasi『3 Pauses』

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・Akito Tabira『SILENT DANCER ep』

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・Basic Rhythm『The Basics』

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・Felt『Ignite the Seven Cannons / The Strange Idols Pattern and Other Short Stories』

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・石上和也『Canceller X』

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Sonic Youth『NYC Ghosts & Flowers』

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・Mika Vainio『Fe₃O₄ - Magnetite』

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今月のお気に入り(2017年3月)

・Tigran Hamasyan『Luys i Luso

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・Tigran Hamasyan, Arve Henriksen, Eivind Aarset & Jan Bang『Atmosphères』

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・Theo Bleckmann『Elegy』

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・Mette Henriette『Mette Henriette』

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・Joe Maneri / Mat Maneri『Blessed』

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・Tyshawn Sorey『The Inner Spectrum of Variables』

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・Lee Gamble『Chain Kinematics (uiqinv.0001)』

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・ハレルヤズ『肉を喰らひて誓ひをたてよ』

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THE NOVEMBERS『Rhapsody in beauty』

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J Dilla『Welcome to Detroit』

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・Harley Gaber『Indra's Net』

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・Eomac『Monad XVII - EP』

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・Phil Julian『Relay』

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・Nuno Canavarro『Plux Quba』

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・András Schiff『Schubert: The Last Piano Sonatas』

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・毛玉『新しい生活』

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Kevin Drumm『Elapsed Time』

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昨年末に《Sonoris》からリリースされたケヴィン・ドラムの2012~2016年という比較的近年のドローンワークスからセレクトされた6枚組ボックス。初出の音源として紹介されているのも見かけましたがきちんと調べてみるとすべてケヴィン・ドラム自身のbandcampで既に公開/販売されている音源だったので、それらのリンクをディスク毎にまとめておきます。簡単な内容の紹介も書きましたので、トーンの明るいものだけ聴きたいとか、ある程度展開があったり尺が短いものを手始めに聴いてみたいといった方は少しでも参考にしていただければと思います。

購入は《Sonoris》に直接注文するか、国内のショップで取り扱いのある《Meditations》、《Art into Life》、《オメガポイント》、《Ftarri》辺りで。これをアップした時点ではメディテーションズとフタリに在庫があるようです。

 

 

【Disc 1】

kevindrumm.bandcamp.com

オルガン、オーディオジェネレーター、ギター、声、テープディレイを用いた40分超えのドローン作品。ひとつの音色が延々持続するタイプのそれではなくいくつかのパートから成り立っており明確に音が途切れる場面も存在する。音色は澱んだトーンで統一されていて時折メタリックなものが入ってくる。全体的に変なリバーブを多用したような音作りで音の芯というかクッキリとした定位が掴みにくい。音の定位の動きが効果的なパートから人の声(コーラス?)を引き延ばしたような奇妙な音色とホラーチックな和声感のパートへ推移する15~30分辺りが面白い。

 

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サイン波によって作られたオルガンのような音色を中心に描かれる20分間のドローン。和声的にもトーンは明るめ。ちょっと中域が膨れすぎな気もするけどかなりいい。

 

 

 

【Disc 2】

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オルガンのような音色を軸とした30分のドローン。サイン波、ノコギリ波、パルス波が用いられている。音の抜き差しや音色の推移はそれなりにあるんだけど10分辺りまでは和声が変化しないのでどっしりとした印象。そこからは5分おきくらいの間隔で軸となる音色/音程が差し替えられていく。

 

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リンク先のアルバムから4~7曲目を収録。どれも10分程度。

「Gradual Extinction」は曇り空のようなスタティックなドローン。鳴りっぱなしの音がひとつあってそれより下の帯域で音の抜き差しなどの表現が行われている。ラスト2分で急に陽が射すような明るいパートへ転換。

「Return」は壁を一枚隔てたところで鳴っているような存在に距離感を感じる鈍い色合いのドローン。中盤からは何かの音を無理矢理潰したような輪郭の崩れた音色が近い距離感で鳴る。自律神経に悪そう。

「Grace」は前曲の崩れた音色がそのまま鳴るかたちで推移する。全然「Grace」ではない。

「Dimming the Gas Lights」は左右へ行き交う軽く歪んだ音色や物音などが入るややノイズドローン寄りの内容。徐々に音の厚みが増していき濁流のようになる。かと思いきやそこまで極端な盛り上がりはなく割合あっさりと落ち着く。

 

 

 

【Disc 3】

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いくつかのパートから成る30分のダークアンビエント/ノイズドローン的な作品。

CDには短波、パルスジェネレーター、ディストーションのためのComputer Assisted Musicとある。(どう訳せばいいかわからない)

最初の10分は不安定に揺れるいくつかの音色が入れ替わり立ち代わり表れる綴れ織りのようなドローン。音色のフェードイン/アウトの周期はある程度機械的に制御されたものなのか無機質で同じところをグルグル廻っているような印象。かなり暗いし音色もあまり心地いいものではない。

続いて霧の向こうから聴こえてくる生き物の声や風の音のようなパート。2分程で終わる。

続いてホワイトノイズが左右へ動くノイズドローン的なパート。イヤホンやヘッドホンで聴くと面白そう。途中からは波の音のようにも聴こえる。音色はあまり面白いとは思わないけど音の動きやうねりがあって意外と飽きない。13分ほど。

ラスト5分はアタックのある音とそれが削られた持続音が重ねられたパート。どちらの音にも過剰な空間系の処理が行われているようで輪郭が掴み難い。30秒ほどの無音を挟んで始まる。

 

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リンク先のアルバムから1曲目のみを収録。

冒頭からモーターなどの機械音にも虫の声にも聴こえるような歪んだノイズがあちこちで鳴る。Stephen Cornfordのカセットプレイヤーを用いたインスタレーション/音源を連想するような音も。

すべての音が同じ(または2,3種類ほどの)サンプルの回転数を上げ下げすることによって作られているように聴こえないこともない。疑似テープコラージュ・オーケストラ?*1

5つのパートに分かれているけどそれぞれのパートは元となるサンプルや加工の度合が変わる*2だけでやってること自体は変わらない。

 

 

 

【Disc 4】

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トーンジェネレーターとベースペダルを用いたとても重心の低い30分のドローン。特に冒頭の5分はギリギリ聴こえるくらいの低域のみが鳴っているというハードコアさ。それ以降は音のフィルターの開き具合や粒の大きさが変化する*3音と、そのオクターブ下(?)で鳴る動きの少ない音の持続が中心。ラスト5分は小さな音量でポツポツと音が鳴るとても寡黙なパート。

 

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コンピューターによって制御された(?)オーディオジェネレーターを用いた作品*4。冒頭から右側では何かの警報の再生速度を落としたような音が、左側ではピッチのはっきりしたノイズ混じりの音が偏執的に鳴り続ける。7,8分辺りまではそこに何種類かのブーーーとかビーーーといったような持続音が重ねられたり切断されたり。8分辺りで数種のオシレーターを使って出したような強迫的な和声感の音が鳴り始め左右で鳴り続けていた音に溶け合っていくような場面へ。数分後には全体でひとつの響きとして認識されるような*5クラスター的な音響が形成される。以降は全体としてその様相を維持したまま個々の響きが細かに変化しながらラストまで続く。JMT Synthとかから出てるような鍵盤のないノイズシンセを何台も用いたような音でオシレーター・オーケストラみたいな雰囲気。すごく今っぽいとも言えるかも。ミニマリズムというか引き算的な発想で描かれたというより様々な音響の足し算によって構築された巨大な建造物のようなドローン作品。自分は根本的にはミニマリズムが好きな人間なので自分でドローンとか作ろうとするとこういった方向には向かわないんだけど、聴くぶんにはとても好きだし自分にはできないって思いと情報量の多さに圧倒されてすげえ。。。ってなる。

 

 

 

【Disc 5】

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リンク先のアルバムから3曲すべてを収録。インスタレーションとして制作されたものらしくスピーカーでの再生を推奨している。

「Wider Distance」は11分のドローン。冒頭から6分ほどは少ない音数で音をあまり足さず音量やパンの変化のみで推移していく。和声的に明るくないが、かといってダークという感じでもない、色合いを感じさせないような無機質なトーンがとても好み。6分過ぎた辺りでわかりやすく音が足され和声的にダークな色合いを帯びてくる。9分辺りからは音の足し引きのペースが急に速くなるが全体のトーンは保ったままであまり忙しい印象にならないところが巧い。それぞれのパートの長さを倍にして20分くらいの尺で聴きたかった。かなり好き。

「Waterbed Music Part 1」は15分のドローン。冒頭からクラスター的な強迫感のある持続音が鳴る。そこから複数の音色が次々に表れては消えるが冒頭からのクラスター的な和声のトーンは維持される。和声的には緊張感が高いが音色の質感はどれも柔らか。個別の音色がしっかり左右に振られていたり、その間を行き来したりするので時に全体でひとつの音に聴こえたりそれぞれの音が分かれて耳に入ってきたりする様が面白い。9分辺りで中央に定位した複数の音色をメインにしたパートへ展開。さらに11~12分辺りで左右へ広がりのある音がメインに。

「Waterbed Music Part 2」*6は8分ほどのドローン。和声的な色合いは乏しく新たな音色が入ってくるといった意味での展開もないが、複数の周波数の音が鳴り続ける中でのそれらの音量のバランスの変化、それに伴う干渉の度合を聴き取ると常に音が変化し続けていることがわかる。こういったドローンはとても好き。

 

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リンク先のアルバムから1曲目のみを収録。

30分のドローン。かなりぼーっとする音。22分辺りで一旦音が途切れ、それまでよりかなり重苦しい音色のパートが始まる。

語彙が尽きてきた。

 

 

 

【Disc 6】

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リンク先のアルバムから2曲とも収録。Editions Megoからリリースされた『Shut-In』というカセット作品の初回20部に特典CDRとして付属していた音源らしい。

「Shut-In Extra 1」は18分ほどのドローン。冒頭からの5度の和音を中心とした力強い和声感の持続が新鮮。

「Shut-In Extra 2」は16分ほどのドローン。こちらも前半に引き続き和声的な安定感は強め。8分辺りでオルガンっぽい音色が入ってくるのでそのまま大団円に向かうかと思いきや、それを期待させた程度でしぼんでいく。

 

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リンク先のアルバムから2曲とも収録。

「The Whole House 1」は20分のノイズドローン/アンビエント。ギシギシといった物音、モーターの稼働音のような音、遠くの水の流れのような淡いホワイトノイズが鳴り続ける。中盤からは音量やノイズの迫力が増し濁流のような響きになる。音の足し引きや音色の変化などもあるが、音響的な快楽性を念頭に置いたという感じではなく音がただ鳴っているような、そういう意味では自然音/環境音に近い印象*7。ノイズ的な音色がメインなので和声的な色合いやそれによって発生する情緒などもない。“アンビエント”というものの解釈にもよるだろうけど、空間に音が放たれ、何らかの場が発生すること、それ以外の機能を持たないことなどからかなりハードコアなアンビエント作品のように聴こえる。音が減衰することなく次の曲へ切り替わる。

「The Whole House 2」は13分のノイズ。前曲の空間を埋めるようなノイズを切断するようなかたちで始まる。このボックスの収録曲の中では音色自体のエグさやその変化の具合、展開の作り方などが最も忙しなく、いわゆるノイズミュージック寄りの演奏。これだけ色合いは違えどドローンばっかり入ってる中で最後にこれやられるとそれは当然かっこよく聴こえる。あーかっこいい。最高。前曲とのコントラストある構成も効果的だしこれはとてもいいアルバムだと思う。

 

 

 

*1:CDを確認したところCasette Tape Musicとあるのでやはりカセットテープを用いたものらしい

*2:第二、第三のパートでは声のサンプルの使用が目立つ

*3:サンプラーのサンプルの再生範囲を伸ばしたり縮めたりするような感じ。機械的に制御というよりはツマミを回して操作してそう。

*4:Audio Generators, Spectral Computer Assistanceとある

*5:音数自体はかなり多いが

*6:リンク先のアルバムには「Slanted Floors」という曲名で収録

*7:ただ結果的に音響的快楽性は発声している