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LL

2013の13 part.2

2013年の年間ベスト13枚を選出。part.2は4作品の掲載です。

 

 

・徳永将豪 / 高岡大祐『Duo/Solo』

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即興による、アルトサックスとチューバのデュオ、それぞれのソロを収録。

冒頭、第一音、ゆっくりと立ち上がるその音色に驚愕。

二つの管楽器から生まれた、サイントーンと聴きまごうごとき、ともすれば平板にすら聴こえかねない、表情を極度にコントロールされたその音は、

徹底的に素朴な演奏内容とは裏腹に、聴き手にひどく危うい緊張感をもたらします。

静寂をはさみながら、時折どうしようもなく不安定に揺れたり、不意に一瞬だけ顔を出すサックスのリアルな(ミス?)トーン、生々しいブレス。

そして1曲目中盤以降で少しだけ奏でられる、チューバの慎ましい演奏ラインの美しさ。

ギリギリの歩み。ハードコア。

電子音楽が好きな方などにも、ぜひ。

 

 

 

・Bright Moments『Introducing Bright Moments』

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 即興演奏を中心に東西で活動するテューバの高岡大祐と、トランペットとバスクラリネットの持ち替え奏者有本羅人、地元では独自の改造モバイルドラムキットで演奏する橋本達哉の三人で関西で活動するアコースティックバンド。通常の五線譜を使用しない文章や図形による作曲を中心に「演奏空間での音の響き」「即時性と楽器の可能性」に留意した作曲と即興を横断するような演奏スタイルを持つ。(高岡大祐さんのHPより)

 

発売は今年の比較的初めのほうだったと記憶していますが、買いそびれた私は最近になってようやく入手。

結果的に前掲の『Duo/Solo』を先に聴くかたちとなりました。

 

『Duo/Solo』では冒頭から繊細な音色のコントロールに耳を奪われましたが、こちらも初っ端から魅せてくれます。

何より素晴らしいのが橋本達哉のドラム。1曲目のシンバルに触れるスティックの細やかな動きや、残響の美しさ。3曲目や8曲目のバスドラやタムの音の密度。など聴きどころ満載で…。

また本作は、『Around Omni Mic』『Horns Behind Drums』などの曲名にも表れていますが、1曲ずつマイクのセッティングや楽器の並びなどを変更して録音されているようで、曲ごとに距離や明度を変えて迫る「演奏空間での音の響き」を味わえます。

 

「録音を作曲する」というコンセプトだそうで、見事にそれを耳で体感できる傑作だと思います。

 

 

 

・Antoine Beuger /  Michael Pisaro『This Place / Is Love』

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 現代音楽レーベルEdition Wandelweiserなどから多くの作品をリリースしている作曲家、 アントワン・ボイガーとマイケル・ピサロによる共作。2012年8月から2013年3月にかけて録音された76分の全1曲。

アメリカの実験音楽レーベルErstwhileから。

ギターなどの弦楽器、フィールドレコーディング、サイントーンやホワイトノイズ、テキストリーディング、無音などを駆使し長尺の1曲にまとめる作風は、マイケル・ピサロのの自主レーベルGravity Waveからの作品に近いですが、

そちらの諸作品が要素の総合性と無音の活用によって(ヴァンデルヴァイザー派の作品としては)、「静⇔動」的なダイナミクスを持っていたのに対し、

こちらは前述の要素たちがあまり重ねられず、独立して現れる時間が多いためか、音の入れ替わりの多さの割には、動的な起伏を感じさせず、淡く描かれたジャケの絵のように仄かな陰影を映す程度に留められ、非常に落ち着いた内省的な内容。

 

今作で最も印象的なのは、前述の要素に加え用いられている虚ろな響きを持った歌声で、

中盤差し掛かる辺りの、歌声に弦が重なるパートは、ジャケの絵の窓枠部分のように薄く染み出すような色彩を感じさせ、一貫したトーンに差す個人的ハイライト。昨年のSteve Peters & Steve Roden『Not a Leaf Remains As It Was』を思い起こさせたりも。

 

終盤では、時間が進むにつれ無音が多くなり、ヴァンデルヴァイザーらしい単一な演奏に収束していきます。

 

ヴァンデルヴァイザー周辺の作品では、無音が常に演奏の延長線上に存在していて、それらをシームレスに行き来するため、両者に対する感覚的な差異や違和感が希薄ですが、

無音に関しては、先日のpart.1で掲げた、渋谷慶一郎『ATAK019』の2曲目と3曲目での用いられ方が非常に対照的で、その2曲においては、断絶しているかのような音楽(ピアノ)とノイズと無音が、エディットによって瞬時に切り替わり、ものすごい距離を瞬間的に移動しているような速度を感じさせました(ジョン・ケージ・ショック!)。

扱いによって演奏に自然に同化してみたり、異質なものとして聴き手にショックを与えてみたり、無音というのも雄弁なものですね。

 

 

 

・『Dedalus・Antoine Beuger・Jürg Frey』

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 現代音楽の分野で活動する室内楽アンサンブルDedalusによる、ヴァンデルヴァイザー作品のライブ録音。演奏には作曲者の二人も参加。リリースはフランスのPotlatch。

 

『This Place / Is Love』でも用いられていた空虚な声、各楽器の素直な音色で推移する単音、聴衆のたてる音や車のエンジン音、クラクション、全ての音が、その出地を明らかにしないような、非現実的な不明瞭さを持ち、どこかから現れては、ゆらゆらと空間に溶けていく。

 

「音が空間を満たす」とはこういうことかと。

 

抑制された表現から浮き上がるように、幻想的な空間が表出する傑作。