John Hegre (gt), Nils Are Dronen (drs), Jon Irabagon (ts)
福岡のジャズクラブNew ComboでのPublic Enema featuring Jon Irabagonのライブに行ってきました。
個人的にこの公演の目当ては完全にジョン・イラバゴンでして、Mostly Other People Do The Killingやリーダー作『Foxy』での諧謔的なアイデアやジャズの“エグみ”を感じさせる音楽性に触れてみたいと思ったワケですが、
Public Enemaの2名に関しては名前すら聴いたことがなく、ユニットとしての演奏の内容については全く予想ができない状態。
なんとなく期待してたのは、「ドラムに煽られながら互いにチェイスし合うサックスとギター」みたいなパワーミュージック的な展開だったのですが(もちろんそういう瞬間も結構あってそれはそれで楽しめたのですが)、意外にも印象に残ったのは、特に第一部の序盤に顕著だった“ジャズ”の枠組みを逸脱したフリー・インプロ的な時間でした。
イラバゴンの、循環呼吸を用いた擦れた息音や、破裂音、キーを触るカタカタとした物音、時にはマウスピースを外しての演奏まで用い、フレーズともいえないような断片的な音を放つ姿には、エヴァン・パーカーやジョン・ブッチャーの影が見え隠れしたりも。
彼をあくまで“ジャズ”の奏者として認識していた私としては、これは大変な驚きだったのですが、よくよく思い返してみると彼のサウンドクラウドにはエヴァン・パーカーの代表作『Six Of One』の名を冠した演奏がアップされたりもしていたので、そういった志向はおぼろげながら示されていたのかなとも思います。
Six Of One by Jon Irabagon - Hear the world’s sounds
“ジャズ”の奏者が部分的にそこを逸脱したからといって、安直に実験的だなどといって持ち上げるのはあまりに短絡的だと思いますが、個人的な好き嫌いを言わせていただくとこの方向性は大いに気に入りました。演奏は本人らによって終始PCMレコーダーで録音もされていたので、どこかからリリースがあればと期待してしまいます。
また、Public Enemaの二人に話を移すと、
ギターのJohn Hegreはボリュームペダルを用いたアタックを削いだ音使いに始まり、ハーモニクスやピッキングノイズなどを交えた金属的な音の連なり、ルーパーを用いたフレーズの積み重ねやフィードバック的な持続音など様々な方法を用い、終始俯いたままサウンドイメージを切り替えるように演奏する姿が印象的でした。
私が聴いたことのあるギタリストだとフレッド・フリスが一番近いかな…会場でお話しさせていただいた方(写真のご提供ありがとうございます!)は時折見せるメロディアスなフレージングにマーク・リボー的なものを嗅ぎ取っておられるようでした。
ドラムのNils Are Dronenはスティックとブラシを頻繁に持ち替えたり、説明しにくいのですがドラムセットとは別に拵えたシンバルを演奏途中で持ち出してみたりするフットワークの軽さ、あと演奏中の表情の豊かさが、俯いたままのギター、目を瞑ったままのサックスとの対比でちょっと面白かったです。
2015年一発目のライブ鑑賞だったこともあり、特に第一部の演奏にはとても新鮮な気持ちで接することができたように思います。