Gruenrekorder » Mekong Morning Glory | Merzouga
Merzouga(メルズーガ)は、Eva PöppleinとJanko Hanushevskyによるユニット。
これまでにGruenrekorderより2枚、Attenuation Circuitより1枚のアルバムをリリースしていて、本作は前者からの1枚目。(次作はこちら20150104 - LLで少し取り上げています。)
本作にはタイトルにある通りメコン川周辺の(純粋な環境音から人が発するものまで)様々な音が用いられているのですが、それらに加え彼ら自身による楽器の演奏なども多く用いられていて、純粋なフィールドレコーディングからは距離をおいた非常に音楽然としたサウンドスケープが形成されています。
彼らは、そのサウンドスケープを構成する際の影響元として、サウンドアートの分野で活躍するビル・フォンタナの名を挙げているようなのですが、
調べてみると確かに、異なる(音を含めた)空間の要素の再配置、その異化作用によって新しい環境や音の在り方、感覚を提示するといった手法はビル・フォンタナがよく用いるもののようです。
このあたりは流石、先鋭的な実験音楽レーベルから作品を発表しているユニットらしい関心の在り方だなと思わされると同時に、
ネット上での情報を当たったりyoutubeなどで作品を視聴する限りなのですが、音のみによる、いわゆる“音楽”作品とは距離をとっているように思えるビル・フォンタナの影響の下で、ここまで“音楽”として豊かな作品を生み出すというところに、彼らの明確な意思や方向性を感じ取れるように思います。
やや堅苦しい印象を持たれがちな分野かもしれませんが、『Mekong Morning Glory』は、ロケーションが生み出したものでしょうか、明るく開放的な音が多いように感じますし、少しでも興味があれば気軽に手に取ってもらって大丈夫な作品だと思います。
個人的にはプログレッシブ・ロック好きな方に聴いてみてほしい起伏や構成の妙を感じたり。
Merzouga "Mekong Morning Glory" [CD] Gruenrekorder - Art into Life
Bill Fontana - River Sounding - YouTube
ビル・フォンタナの作品。サマセットハウスの普段は閉ざされている空き家に、テムズ川で採集した映像や音を再配置。通りから地続きのはずの人気のない一室が、突如として川の底に沈む隠れた空間に接続されたような、足取りが覚束なくなるような齟齬の感覚とともに、建物が望む川や土地の記憶が呼び起されるような。