2月7日、今泉Black Outでの「広瀬淳二 presented by capture at Black Out」に行ってきました。
東京から即興演奏家の広瀬淳二さんを招き、クラブという空間でDJとエレクトリックなノイズと生楽器による即興演奏が交互に行われるという異色な(?)イベントでした。
今回は中でも最も印象に残ったcapture featuring 広瀬淳二さんの演奏について。
capture; 中村勇治(バスクラリネット), 藤井マサカズ(ソプラノサックス), 吉田主税(アルトサックス)
広瀬淳二(テナーサックス)
演奏はそれほど長くはなく、おそらく30分程度だったと思うのですが、その中で4つの音がうねるように互いのバランスや様相を変えていく様が有機的で、聴いた後に充実感や手応えが感じられる演奏でした。
ブラッシュアップされた濃密な時間とでもいうような。
演奏のごく序盤においては、破裂音といってもいいような短い単音や、変化のきっかけを探るようなロングトーンが目立ちましたが、その数分後でしょうか、4者がまるで同期したかのようにグンと音量を上げてからは各々が臆せず演奏に変化を加え続け、特にバスクラの中村さんがその役割を積極的に果たしていたように感じました。
具体的には演奏中の移動にはじまり、短い時間ではありましたが4人の中で唯一リフを演奏してみたり、また演奏自体を止めてみたり(バスクラの音がなくなると他の三者の楽器がサックス類であることを瞬間的に実感させられるかのごとく、音が溶け合ったように平面的に感じられました。)、
延々と細かいフレーズを紡ぎ続けるソプラノや、交互に演奏のイニシアティブを握るような激しいブローイングを見せるアルトとテナーに対して、影から刺激を与え続けるようなその役割が演奏全体の起伏のコントロールという意味でよく利いていました。
特に最初に挙げた演奏中の移動は聴衆のスペースに演者が食い込むという見た目の奇抜さ以上に聴覚的に面白く、それによって提示された音の位相の変化は、聴衆個人が少し体の向きを変えるだけで演奏の別の視点からの風景を実感できるほどに効果的でした。
私個人としては、この試みは聴衆ひとりひとりに演者をどの視点から切り取るか、さながら俳優に対するカメラマン(さらに言うなら監督)のような権利を与えられたように感じ、最も納得のいく音の配置を探したりして楽しませてもらいました。
この方法に関しては奏者が自由に音源と共に移動できることが条件ですが、立体音響のための特殊なシステムなどを用意せずに実現できるという点では格段に手軽ですし、原始的ゆえに如実にその効果を体感できるのが興味深かったです。
同イベントの最後に行われた広瀬淳二さんの自作音響装置SSI-4の演奏も、複雑な倍音を含んだ音の持続は会場内を歩き回りたくなるほど聴取の位置ひとつで聴こえ方が大きく変わるだろうなと思わされるものでしたし、そういった音の音響情報の変化や、音楽の空間的、インスタレーション的な楽しみ方などについて大いに考えさせられるイベントだったなと思います。
↓ SSI-4(演奏後)