最近よく聴いているアンビエント/ドローンな作品をセレクト。
・Stephan Mathieu 『Radioland』
http://www.ftarri.com/cdshop/goods/dieschachtel/dsart-06r.html
アンビエント/ドローンの現人神ステファン・マシューの2008年作。
随分前にYoutubeにアップされている収録曲を聴いて以来ずっと欲しいと思っていた一枚で最近になってようやく入手。
12kやLineからの諸作も素晴らしい彼ですが、その辺りの作品が気に入った方は是非これと『The Sad Mac』もチェックしてみてほしい。そんな傑作。
・NAKAO Sho 『The Lost View』
http://popmuzikrecords.com/rec/001/
長崎出身の音楽家NAKAO Shoのファースト・アルバム、にして福岡のpopmuzik recordsの初リリース作品。
ハーモニックなドローンと加工されたフィールドレコーディングの断片や細かなノイズが層となって生まれる有機的なアンビエンスが時間を忘れさせてくれます。
2曲目にはBeat Noirとして活動するKenta Inamasuがボーカルで参加。不明瞭な言語(?)によって綴られる歌、自室で録られたデモテイクをそのまま採用したというその質感が、印象が平坦になりがちなアンビエントのアルバム作品という枠の中で絶妙なアクセントとして機能しています。
・BEAT NOIR 『THE SEA』
上記作にも参加しているKenta InamasuとKoji IwahashiによるユニットBEAT NOIRの音源。bandcampにいくつかアップされていますがどれもNYPで聴くことができます。
・France Jobin 『sans repères』
http://popmuzikrecords.com/rec/002/
NAKAO Sho『The Lost View』に続くpopmuzik recordsのリリース第二弾となる作品(といってもリリースは同時のようですが)。
ライブツアーで福岡を訪れた際に柳川で行ったフィールドレコーディングの素材を用いて制作されています。
この人の作品は開放的で澄んだ音色(ドローン)の美しさと、ロウワーケース・サウンドの影響を感じさせるような高/低周波の使用や小さな音量での表現が特徴ですが、本作では後者の側面はやや抑えられ、時にこれまでにないほど積極的に音楽的なうねりを感じさせる仕上がりになっています。
彼女の音を硬派なドローンとしてよりも音楽的なアンビエントとして楽しみたい方、そして彼女の音に初めてふれる方にも強くオススメできる作品です。
(そういった向きにはFrance Jobin自身のサイトにて公開されているこちらのライブ映像もおすすめです。通常の音源よりダイナミックな表現がなされているように聴こえます→http://www.francejobin.com/?p=4547)
・France Jobin + Fabio Perletta 『Mirror Neurons』
dragonseyerecordings.bandcamp.com
こちらもフランス・ジョバン、とイタリアのマルチメディア・アーティストであるファビオ・ペルレッタの共作。2015年4月にリリースされたばかりのもの。
こちらは前掲の『sans repères』と比べると対照的に、(その文中で挙げた)彼女の音楽的な特徴がより研ぎ澄まされた形で顕在化したような作風。
タイトルになっている“ミラー・ニューロン”とは、“自分以外の個体(他者)がある行動を行っているのを見た時に、自身がそれと同じ行動を行っている状態と同じような反応を示す神経細胞”のことで、個体の“共感”能力を司っていると考えられているのだそう。(ミラーニューロン - Wikipedia)
確かにこの両者、インスタレーションを多く手掛けるマルチメディア・アーティストとしての活動領域や、音を用いた繊細な表現といったところで非常に近しいものは感じられます。その辺りの認識を踏まえての共演、そしてコンセプトということでしょうか。
調べてみるとこの作品は映像も制作されている(そちらを担当しているのはローマのビジュアルアーティストXX + XY)ようなのですが、主導はあくまでサウンドを受け持つ二人で、「共感と物理的な距離の概念を調査するメディアプロジェクト」として開始されたもののようです。(こちら→http://www.axsfestival.org/2014/program/synergetica-lab-screening/により詳しい文章があります。Google翻訳でも大まかな内容はつかめるので是非一読を)
両者の拠点であるモントリオール(カナダ)とロゼートデッリアブルッツィ(イタリア)の距離を隔てたサウンドファイルの交換、それに対する反応としての模倣を経た音からは二人の共事項を高度に結晶化させたような洗練を感じとることができます。
少なくともこの二人どちらかの名前に覚えのある方は必聴の内容。傑作です。