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LL

Aram Shelton 『Tonal Masher』について

 

aramshelton.bandcamp.com

 

先の文章でも少し触れていますが、アラム・シェルトンが近年取り組んでいるプロジェクト『Tonal Masher』について、彼のHPに記載されている文章をtimanyamaaaさんにお願いして訳していただきました。

Grey Ghost以前に端を発するその意識や焦点の行方、『Tonal Masher』のコンセプトに関する具体的な記述など興味深い内容になっていると思いますので、是非御一読ください。

 

 

以下、訳文(訳: timanyamaaa / 原文: http://www.aramshelton.com/music/tonal-masher/

 

 

“Tonal Masher: サクソフォンの共振的なフィードバック”

 

サクソフォンとエレクトロニクスを全面的にフィーチャーしたソロプロジェクト「Tonal Masher」で、アラム・シェルトンはコーン社の1937年製アルトサックスのサウンドを再編成し、そして拡張させている。

共振的なフィードバックや複雑なハーモニクス、マルチフォニックス (複数の音を同時に鳴らすテクニック)を含め、豊かなサウンドを生み出す源泉であるそのサクソフォン

この管楽器こそ、彼自身による探究にもとづいたサンプルを活かし多層的なレイヤーから成るトーンをつくりだすのに使用されているものである。

シェルトンはサクソフォンの持つ共振的な特性を一風変わったやり方で応用すべく、伝統的なサクソフォンのパフォーマンスにとっては必須ともいえる要素を除去している―マウスピースとリードだ。

サクソフォンにとって重要な音響的特性は、マイクの位置や伝統的なサクソフォンのキーフィンガリングによって生成される共振的なフィードバックを用いることで、動力化されるのだ。

その結果として生成される音楽は、いわば「ユニークな倍音のパレット」で彩られることとなり、本来は単独の音を鳴らす楽器でポリフォニーを表現することに成功している。

また、いたるところにリズム的な要素が散りばめられているが、それらの要素は「暗がり」や「黄昏れ」といったような心象風景を私たちの脳内に喚起させるべく、緻密に計算された再生速度ゆえの産物でもある。

2001年以来、さまざまな演奏環境でアコースティックな楽器を加工して拡張させるべく、シェルトンはMax/MSPを用いてコンピューターをベースにしたライブサンプリングを使用し続けてきた。

2002年にシェルトンはジョナサン・クロフォードとGrey Ghostというユニットを結成する。イギリスの音楽メディアであるThe Wireのレビューによると、そのデュオによる音楽は「呼吸と電気回路網の共生に焦点を当てたものである」とのこと。

2007年にはElectronic Music from Mills CollegeでMFAを授与される。シェルトンは同教育機関でJohn Bischoff、Maggie Payne、Chris Brownらとともに研究をした。

彼の提出した卒業論文では、ライブパフォーマンスという環境において、アコースティックな楽器を再編成・拡張するためのライブサンプリングの使用方法に焦点が当てられている。

卒業後はOakland School for the Artsで教鞭をとり、さまざまな機関でインプロビゼーションやエレクトロアコースティックミュージックのワークショップを開いている。

また、2010年から2012年まで、シェルトンはMichael ColemanとAlex Vittumらとともに、Straticなるトリオで音楽活動をしていた。アメリカの音楽メディアであるAll About Jazzは、そのトリオによって紡がれる音楽を「音楽という白昼夢の記憶」になぞらえている。

ここ1年ほどのシェルトンの活動に関していえば、ソロのエレクトロアコースティックミュージックにフォーカスされている。サクソフォンに特有の共振的なフィードバックの周波数の探究にもとづいたソロプロジェクトだ。

音響の再編成という現在進行中のコンセプトゆえ、シェルトンはそのコンセプトにぴったりのニックネームとして「Tonal Masher* 」というアナグラムを選んでいる。

 

* tonalはtone(音)の形容詞。masherはジャガイモなどのつぶし器を指す名詞