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LL

Common Objects 『Whitewashed With Lines』

 

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http://www.art-into-life.com/product/5750

 

ジョン・ブッチャーの近作を紹介。

 

ジョン・ブッチャーをはじめ主に即興演奏の分野で活動する面々からなるユニットのセカンド・アルバム(二枚組)。しかし前作に当たる『Live in Modern Tower』はAngharad Daviesが不参加だったため、フルメンバーとしては初のリリースになります。

二枚組の本作では、それぞれのディスクに長尺の1曲のみが収録されていて(一枚目が57分、二枚目が44分)、一枚目がロードリ・デイヴィス作の図形楽譜による楽曲「cup and ring」の演奏、二枚目がその一年前の集団即興とのこと。

 

前作はそのメンバー構成から想像される以上にノイジーな演奏でしたが(こちらで少し書いています)、今作ではそういった面はやや抑えられ、各場面でのそれぞれの音というよりそれらのなだらかな遷移の様が印象に残ります(特に一枚目)。

一枚目で用いられている図形楽譜はロードリ・デイヴィスがスコットランドやノース・イースト・イングランドで接した杯状穴を素材として書いたものらしく、演奏が持つダイナミックでありながらもなだらかさを失わないそのデザイン性は、杯状穴の不可思議さと親しみやすさが同居したようなその形状がもたらしたものなのかもしれませんね。

今作を聴いて強く感じたのですが、このユニットの演奏は各奏者の発する音に対する瞬発的な反応の連鎖というより、眼前を流れていく音の風景に持続的な音を重ねることで自らもその一部となっていくような、合流と枝分かれを繰り返しながら続いていく水脈を連想させるようなもので、

その辺りが即興演奏の分野で通常よく用いられる演奏者の名前を羅列したかたちでなく、グループ名を冠して活動している理由なのかなと推測したりもします。

 

“点”ではなく“線”的というか、瞬間の堆積としてでなく持続によって層を形成した音の折り重なりとして存在する時間、演奏だと感じます。(ジョン・ブッチャー個人に関して言えば、ソロ作『The Geometry Of Sentiment』に「First Zizoku」、「Second Zizoku」という曲もありますしこういった方向性への関心は今に始まったことではないとも思います。)

“線”が“円”を形づくり、それが重なった杯状穴の形状はこのユニットの音のイメージにそぐうものだと思いますし、図形楽譜といったかたちで外的に示されなくとも彼らの演奏に内在的に存在していたものではないかとすら思わせられます。

 

 

youtu.be

 

 

※本投稿の執筆に際して、そのコンセプトを探る資料としてリリース元のAnother TimbreのHP上に掲載されている文章をtimanyamaaaさんに訳していただきましたので、別稿でその全文も掲載しておきます。

主にロードリ・デイヴィスの視点から今作に至る経緯やここで表現されているものに関して、聴き手の感性を制限しない程度に言及がなされていますので是非。