やります。今回はパっと思いついたこれ良かったなーってのが15作品だったんで、そのまま削らずに載せます。(2015年なんで丁度いいかなと)
順位は付けました。取り上げた作品は電子音響系(アンビエント、フィールドレコーディングやミュージック・コンクレート、ノイズなど…)と、ジャズ、フリー・インプロヴィゼーションが多いです。
画像をクリックすると試聴、購入、公式HPなどに飛びます。では、
15. Frédéric Nogray, Yannick Dauby『Panotii Auricularis』
Yannick Daubyは今年に入ってから怒涛のリリースラッシュで大変でした(あまり追えてません…)。これは鳥の鳴き声とモジュラーシンセの共演って触れ込みで、本当にそのままのシンプルな作品なんですが、鳴き声にしてもシンセにしてもところどころでエグい響きが出てきたりでなかなか侮れない奇妙なサウンドスケープ(商品説明にもそんなこと書いてありますね)。買ったのは年の初めのほうだったんですがここひと月ほど再度ハマって結構聴いてました。
14. Seijiro Murayama / Jean-Luc Guionnet『Mishima, Day & Night』
最近買ったばかりでまだ数回しか聴けてませんが、とにかく1曲目が素晴らしい。特に17分辺りの音の凄み、呑み込まれそうになります。
13. Vijay Iyer Trio『Break Stuff』
ECMからトリオ作ってアナウンスされた時は期待と不安が半分半分で、実際聴いてみてもやっぱりACTのほうが合ってたんじゃないかなってずっと思ってたんですが、梅雨時になってからでしょうか、気付いたらこれ聴いてる自分がいまして結果的にはおそらくこのトリオの作品では一番聴き込んだんじゃないかと。1曲目の「Starlings」、この曲調のものを最初に持ってきたセンスに脱帽。これが最初じゃなきゃこんなに聴かなかったかも。あと個人的にはモンクの「Work」は雰囲気台無しなので要らないです。
12. John Butcher『Nigemizu』
これについてはこちらで自分に書けることは書いてしまったのでもう言うことないです。フリーインプロ好きだけどデレク・ベイリーやエヴァン・パーカー以外知らないって人にはジョン・ブッチャー聴いてみてほしいし内容的にもタイミング的にもこれを手に取ってみたらいいんじゃないかと思います。
11. goat『Rhythm & Sound』
ライブ行ってから毎日のように聴いてます。1stより地味でどうもなぁと思ってた自分が嘘のよう。
10. Thomas Brinkmann『What You Hear (Is What You Hear)』
この人が関わってた去年のOren Ambarchi『Quixotism』も大変素晴らしかったんですがソロでもヤバいの出してきましたね。終始徹底して反復とドローンの権化たらんその姿勢に圧倒されます。こういう表現はかえって人を遠ざけてしまいそうですが本当に“芸術作品”然としたものを感じますし、これそのまま「シンプルなかたち展」に展示すべきでしょう。Youtubeに全曲アップされてもいますし、(音楽でもファッションでも概念でも何でもいいですが)“ミニマル”好きなひと(つまりミルメさん)これ聴きましょう!
9. France Jobin + Fabio Perletta『Mirror Neurons』
France Jobinの作品は正直毎回そんなに大した違いはないんですが、わかっていても買っちゃうし結局それなりの頻度で聴いてしまうんですよね。単純に好きなんでしょうね、この人の音が。これはFabio Perlettaとのコラボレーション作品ですが、そもその両者の作風が近いためか互いの違った一面が引き出されたようなものではなく、その個性が蒸留を経て結晶化したような高純度ドローン作品。高音域の澄んだ美しさがいつも以上に際立ってます。
8. Yannick Dauby『tsi̍t lâu tsuí 一流水 』
上半期大活躍のYannick Dauby、いくつか聴きましたがこれが最も気に入りました。去年(の特に後半)は加工なしのフィールドレコーディングにはまってたんですが、今年に入ってからはそれらを編集、再構成したコンクレート的な作品がより好みなモードでして、それを象徴するような一枚。最近見つけたこれもそうなんですが、水の音を多く扱ったコンクレート作品ってのは本当に好きですね。
7. Chris Lightcap's Bigmouth『Epicenter』
この半年の自分の傾向として、ジャズ方面の好みがフリーやアヴァンギャルド・ジャズと呼ばれるものから、若干メインストリームとか単にコンテンポラリー・ジャズなどと呼ばれるものにシフトしたかなって気がするんですが、そんな自分にバチッとはまった一枚。リリース元はフリー系の作品が多いClean Feedですが、今作はそういった色合いは濃くないですし、インタールード的な小品を挟むなどアルバム全体の構成への意識も感じられます。手を変え品を変え(本当にこの言葉通り)楽曲を彩るクレイグ・テイボーンの鍵盤が光ります。
6. R. Schwarz『The Scale Of Things』
フィールドレコーディングやそれを利用した電子音楽作品をリリースしているドイツのレーベルGruenrekorderが最近LPでのリリースに力を入れ始めたとかで、気になって聴いてみた作品。フィールドレコーディング素材をモジュラーシンセで変調したものらしく、動物の鳴き声などその原型が想像できるものからなんだかよくわからないエグい音まで次々に出てきます。出たの最近ですがあまりに好みだったんでこの位置に。
5. Fraufraulein: Billy Gomberg | Anne Guthrie『Extinguishment』
Another Timbreは知ってからできるだけチェックするようにしてるんですが、今年出たものでは特にこれが当たりでした。楽器(ベースギターとフレンチホルン)の音やラップトップやエフェクターなど種々のエレクトロニクスを用いた音の移り変わりは水槽越しに見た人影や風景のようなおぼろげさを保ちながら、風景描写的であったり突き放すような物質的な無機質さであったり追憶へ誘うような表情であったりと多様にその印象を変え続け、音楽的な(ジャンルなどの)分類においてもそこから生まれる心象においても、固定的な分類や形容から逃れるようでありながら穏やかに自然に紡がれていきます。アンビエント的に聞き流すこともできますし(そのような作品と捉えても相当質の高いもののように感じます)、細かな音の重なりに耳を澄ませば実に多様な風景が見えてくるという絶妙なバランスで成り立っている傑作。
4. Joe Panzner『Tedium』
この人はGreg Stuartとのコラボワークがすごく好みで密かに注目してたんですがソロもバッチリでした。左右に揺れる周期的な音やメタリックなドローンをハードエッジなノイズがズタズタに引き裂く冒頭10分、急激にラウドさを増したノイズでドローンを塗りつぶしひたすら攻めまくるそこからの15分、それが切断されて開けた視界に再びメタリックなドローンが強迫的に追い打ちをかけるラスト10分からなる1曲36分。そのコントラストの強い構成もさることながら、壊れたコンピューターを用いたという音の凶暴さがとにかく最高にクールで魅せられます。かっこいいの一言!
3. 徳永将豪『Alto Saxophone 2』
東京で活動するアルトサックス奏者のタイトル通り二作目のソロアルバム。その音を初めて耳にした徳永将豪/高岡大祐『Duo/Solo』でも一音目から耳を疑う音が出てたんですが、今作ではそこから同じベクトルの表現を突き詰めつつ明らかに別の様相を持った音も新たに見せていて、前作からの上積みがすごいことになってます。ちょっとこれに関しては言葉で説明してどうこうできるものでないのは明らかなので、とにかく聴いて確かめてもらうしかありません。1曲目の2分50秒辺りとかかなり怖い音出てます(でも音量上げたくなる)。というかこの1曲目通して上半期で一番ヤバい音出てます。
(一応順位付けてますがここから上の3つはもうほとんど意味なくてどれも1位みたいなものです。これ書いてる瞬間もやっぱこれが1位じゃないかって何度も思ってます。)
2. Koenraad Ecker『Sleepwalkers In A Cold Circus』
今作で初めて知った人だったんですが去年Digitalisから1st出してたんですね。そちらも後追いで聴いてみてなんですが、この2ndはLINEのレーベルカラーもあってかベース・ミュージックな側面はドローンとなって溶け出し、より実験音楽的な仕上がりに。地に足の着かないようなまさしく“夢遊病”的なシンセ音に切れ目が入るように挿入される金属的な物音、軋みをあげるようでありながらどこか扁平なテクスチャーでただ鳴っているような様が余計に不気味な弦楽(と思ったら急に距離感を変えて纏わりついて来たり)、ところどころで顔を覗かせるベース・ミュージック由来の厚い低音などが影のある世界観を描き出す様に巧みに配置された彫刻の如き音響作品。めちゃくちゃ素晴らしいです。ジャケもいい。
1. Ingrid Laubrock Anti-House『Roulette Of The Cradle』
それぞれのリーダー作などで多く共演しているIngrid Laubrock, Mary Halvorson, Kris Davisですが、それが一堂に会するこのAnti-Houseは彼女たちの関わる種々のユニットの中でも最も好きなものかもしれません。噛み合っているようないないようなアンサンブルへの導入から急速なフリージャズに展開、幕が変わりソロをとるような忙しない弾きっぷりを見せたかと思えばその後も二転三転する曲調を仕切るようなKris Davisのピアノの存在感が大きい2曲目。静謐な室内楽然とした導入からその個性をありありと感じさせるIngrid Laubrockのソロ、そしてそこに徐々に絡みつくように存在感を増してくるMary Halvorsonのギターが耳を惹きつける3曲目。その流れを継いだままHalvorson以外が短い音のみで点描的な背景を形づくり、ソロをとり始めたギターをサポートするように全体がHalvorsonのリーダー作的な演奏へ以降していく4曲目など、どの曲にもしっかり聴きどころがあって全く退屈しない素晴らしい出来。このユニットではこれが三作目になるんですがここに来て完成度が数段上がったんじゃないかと。去年のSteve Lehman Octet『Mise en Abîme』も同様ですがこういう大き目の編成でしっかり作り込まれたアヴァンギャルド寄りのコンテンポラリージャズ(?)みたいなのは最近本当に好きですね。情報量の多さを処理するように繰り返し聴くのが楽しすぎます。