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timanyamaaa'sベストを聴いてみる

 本ブログでもいくつかの投稿で訳文で関わっていただいていて、上半期怒涛のごとくアンビエントを聴きまくったtimanyamaaaさんがツイッターで発表されてた上半期ベストがとても面白そうなセレクトだったので、そのまま流れてしまうのは勿体ないと思いご本人に許可をいただいてここにまとめておきます。&それだけだとちょっと味気ない気がしたので、私の方で全作品聴いてみたうえでコメントも付けました(ほとんどが1回通して聴いただけの雑感なので積極的に読み飛ばしてください)。

掲載はアルファベット順。全15作品。ご本人曰くすべて1位だそうです。

画像をクリックすると試聴リンクに飛びます。(ほとんどがbandcampで全曲聴けます)

 

 

 

・Altars Altars『1864』 

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 コーラスやディレイのかかったギターと空間を埋めるような増幅されたヒスノイズ(?)の重なり。アンビエントと言うよりもチルアウトと呼びたくなる音。ところどころでたわんだように揺れる(テープ加工?)音像がなおさら心地いい。夏の夕暮れ時にこれ聴きながらただただボーっとしたい。きっといい日だ。

 

 

 

・Christian Wallumrød『Pianokammer』

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 HUBRO(ヒューブロー)はノルウェーのジャズレーベルで、このChristian WallumrødもECMからリリースがあったりなので基本的にはジャズのフィールドで活動するピアニストだと思うのですが、今作は冒頭がこの15作品の中で異質なほど不穏なパッド系の音(アルバムタイトルや、他の楽曲でもピアノ以外ではこのパッド音のみしか使用されていないことから、ピアノの音を加工して作られたもののような気がしますが確証はありません)のみによるかなり渋めなダークアンビエント的なトラックでなかなか面食らいます。アルバム全体としては1,3,5曲目がそういったダーク・アンビエントだったり現代音楽的な曲で、2,4,6が親しみやすいメロディーを基調としたピアノ曲(6曲目のラストでは例のパッド音が姿を現しますが)となっています。つまり交互に配置されてるってことですね。これは今回このような機会を設ける以前に既に自分で買ってそれなりに聴いていたんですけど、改めて聴き返すととてもいい作品ですね。例えばアルバム全体が2,4,6曲目のような親しみやすい曲で埋められていたら、ジャズピアニストが作った小品集以上のものには聴こえない、悪くはないけどあまり印象にも残らない作品になっていたかもって気がするんですが、1,3,5のような曲があることによってこれらが思索のうえで生み出されたことがしっかり感じられるといいますか…。あと2,4,6のメロディーセンスにはなぜかブラッド・メルドーと近いものを感じます。

 

 

 

・Delphine Dora & Bruno Duplant『Inner Fields』

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 全曲Delphine Doraがピアノで即興的に音楽を形づくり、Bruno Duplantがフィールドレコーディングやエレクトロニクスで彩を添えるという構成。Doraはおそらく即興で弾いてると思いますが、どうやっても滲み出る作曲者としての性格というか好みのパターンみたいなものが終始つきまとっていて、正直ずっと同じことやってると言ってもいいんですが、それが全くマイナスに作用しないのがアンビエントの面白いところ。Duplantの音使いは最初の3曲ほどはつまらなく感じたんですが4曲目辺りから徐々にDoraのピアノの雰囲気を阻害するような音も混ぜてきたりで存在感を増してきて面白いです。Duplant大活躍の4や6、Doraのピアノがそれまでと違ったアプローチでDuplantのフィールドレコーディングの日常的な雰囲気に影を落とし、不穏さの内に幕を閉じる7曲目が気に入りました。

 

 

 

・Gurun Gurun『Kon B』

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 チェコのエクスペリメンタル・アンビエント・ユニットの2nd。話題になってるのは知ってたんですがなんとなくスルーしてました。浮遊感のあるウィスパーボイスの女性ボーカルに対してトラックはコラージュ感が強く図太く雑多なイメージ。その齟齬のニュアンスがすげぇってことなんでしょうけど、個人的にはちょっとあざとく感じてしまった。コラージュ的なトラックは自分の好みには合ってるはずなんだけど……なんか年々こういうタイプのボーカルが苦手になってきてる気がする…不思議な世界観みたいなのがダメなのかも…日本語なので余計にその辺強く感じてしまうところもあるのかな。ボーカルなかったら大分印象違っただろうけど、それだと風変わりなエレクトロニカで、そういうのもあまり得意ではないしなぁ…。一聴してなんか合わないって感覚を言語化するのって難しい。

 

 

 

・Hybrid Leisureland『The Beginning Of The End, The End Of The Beginning』

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 Hybrid LeisurelandはHidetoshi Koizumiによるソロプロジェクト。濃い霧とその隙間から時折覗く景色のようなサウンドスケープ。最後の曲だけやけにエッジー。

 

 

 

・Konntinent『The Empire Line』

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 淡く甘いポストクラシカル風味のアンビエントを軸にヴォーカルをフィーチャーしたものや耳に痛くないようトリートメントされたノイズが全体を覆うエクスペリメンタルなトラックまで幅広い。時計の秒針のような音やプチプチといったクリック音をはじめ様々な周期を持った音が重なる4曲目はせわしないようでいてアンビエント的な趣を失わない不思議な感じ。

 

 

 

Loren Connors『Airs』

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 これは私も買いましたし(再発モノなので自分の上半期ベストには入れなかったですが)かなり愛聴してます。郷愁でも追憶でもいいですが、今ここにはないものに思いを馳せた時に生まれ得る感情を一枚だけで表現しきっているようなアルバム。優しい響きですが、どんなリスナーの情念や業をも受け止め得るような半端じゃない深みを感じます。大傑作。

 

 

 

・Masaya Ozaki『Fluid And Dreaming Of Stripes』

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 生楽器(特にピアノ)をメインに据えたようなタイプのアンビエントって簡単に情緒過多に陥ってしまうところがあって(それが好きな人もいるでしょうけど)、個人的にはそれは“アンビエント”として接する際にはエゴの強さ、うるささとして邪魔に感じてしまうケースが多いんだけど、これは音の足取りの遅さでその辺りをうまく中和してて好き。(お涙頂戴な映画のサントラみたいな甘ったるいピアノアンビエントみたいなものはあまり好きではないので…っていつになく口が悪いな…)

 

 

 

・Rima Kato『Faintly Lit』

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 うわーこれは素晴らしい。サウンドクラウドに上がってる2曲とyoutubeの1曲しか聴けてないけどAspidistraflyをトーン明るめにして風通しよくした感じというか。非常に良さそう買ってしまいそう。

 

 

 

・Satomimagae『Koko』

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 女性SSWサトミマガエの2nd。ハスキーで中性的な声が魅力的なアシッドフォーク。こういった傾向の作品としてはリバーブの質感などに人工的な冷たさをを感じる気がして新鮮。現代的とも言えるかもしれない。これもbandcampで試聴できる3曲しか聴けてないけどとてもいい。加藤りまとどっちが好きかと聞かれると大変迷う…

 

 

 

・The Sly And Unseen『All Similarities And Technical Difficulties End Here』

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  Sly and Unseenって(まさかあのスライじゃあるまいし)どこの誰ぞと思ったんですが、Isnaj Dui(随分久しぶりに聴いた名前だ)とリリース元のHibernateのオーナーJonathan Leesのユニットだそうで。これが1stアルバムになるみたいで、しかも2枚組。1枚目(bandcampでは1~10曲目)がオリジナル・アルバムで、2枚目がリミックス集。内容はジャケに現れているような素朴なフォーキーさが優しく沁みる器楽作品集&エレクトロニカ寄りのエディット版。シュルティボックス大活躍の生音ドローン+αな構成で土着アンビエントとでも言えそうな1枚目が特に素晴らしい。

 

 

 

・Sokkyō『Long Forgotten Memories』

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 近年の12k、とりわけTaylor Deupreeやilluha絡みのコラボワークとか好きな人なら間違いなく満足できるであろう良質アンビエント。各曲が短くまとめられてるのがいい(デュプリーやイルハ関連は短くても10分くらいのが多いので)。4ユーロで買える、幸せ。

リリース元のdauwって他はこれくらいしか聴いたことないですけど(めっちゃ良かった)、統一感のあるアートワークだったり、カセットの音質に上手く馴染みそうな音の質感であったり、細かいとこまでこだわりを感じる優良レーベルっぽいですね。こまめにチェックしよう。

 

 

 

・Sonmi451『The Limbic System』

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淡いドローンに柔らかい器楽的な音色が重なり形成されたメランコリックなループにディレイのかかったウィスパーボイスでの朗読(日本語)が加わる。Sonmi451はベルギーのBernard Zwijzenのソロプロジェクトみたいですけどどういう経緯で日本語を採用したんでしょうかね。朗読と書いてますけど続けて読まれるのではなく短いセンテンスが浮かんでは消える感じで、なんか睡眠中の記憶の整理の中で断片的に言葉が浮かび上がってくるみたいなイメージ。聴いてる間は耳なじみの良さが面にでて新鮮味は感じなかったんだけど、よくよく考えてみるとありそうで意外とないタイプの作品。ミルメさんが朗読入りの音楽作品を探してたのを思い出したり。最後の曲だけ趣が違ってミニマル・ミュージックみたいで面白かった。

 

 

 

・Steinbrüchel『Parallel Landscapes』

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 これは今年の12kでも目玉の作品じゃないでしょうか。私も年の初めのほうに随分繰り返し聴いてこのブログでも書いたりしたんですが、なぜかそれ以降あまり聴かなくなってしまったんですよね。理由はわかりませんが…。

 

 

 

・Twigs & Yarn『Still Forms Drift』

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 まず涼しげなジャケが最高に素敵だけど、音のほうは冒頭のシンセのレイヤーをはじめ結構ウォーミー。曲調というか音楽を形づくる際の方法論が多彩で(シンセのレイヤーの変化で引っ張るもの、バウンシーな音のループを基調としたもの、ヴォーカルをフィーチャーしたもの、そこにフィールドレコーディングを混ぜ込んだものなど…)、さりげないようだけど飽きさせないつくりになってます。bandcampのタグにAmbientを入れてないところが、そういうものは指向してないって表れにもとれるかも(考えすぎか)。でも全然違った音楽も作れそうなセンスは感じる。ギリギリのところで情緒に頼りすぎないところも好感持てるし、とてもいいアルバムです。