2012年作の『Casting For Gravity』以降のエレクトロニカ/IDMに影響を受けたアプローチが話題のサックス奏者の2006年作。
私はこの人の作品は先述の『Casting For Gravity』から入り、そこから『Recommended Tools』→『Soar』→『Declaration』という順番で聴いたのですが、この『Soar』は個人的にターニングポイントというか、最初の二枚を聴いた時点でどうもしっくり来なかった部分をこの一枚を聴くことで補完できたというか、まぁ具体的にいうとこの作品から感じとれる彼の頭の中に広がる和声感を非常に魅力的に感じることができたことで、いわゆるコードレストリオ編成の『Recommended Tools』をその背景に流れるものを想像しながら聴くことができるようになったりして、今のところ彼の作品でダントツで好きな一枚です。
『Casting~』『Recommended~』と聴いた時点で自分はMaCaslinあまり好きでないかもと思ってたんですが、Mikikiで北澤敏さんが書かれたMcCaslinについての記事が素晴らしくてそれがきっかけで聴いてみた一枚でして、まぁ私はこの記事のおかげでMcCaslin好きになれたようなものです、ハイ。
正直その記事があまりに良いのでここで私がその音楽性について付け加えられることってのはなくて、まぁ気になる人はとにかく北澤さんの記事読んでくださいってことに尽きるんですが、じゃあなんでわざわざこれを取り上げてるかっていうとこの作品、音楽の中身以外の部分でちょっと気になる点がありまして、それは何かって言うとエラー音がいっぱい入っちゃってるんですよねこの作品…。
一番わかりやすいのは6曲目「Grafton」の冒頭かなと思うんですが、音が途切れるような“プツッ”っていう音やそれに伴って音が左右にブレるような瞬間がありまして、それがここだけならいいんですがアルバムの4曲目から8曲目にかけて許容できない頻度で入ってしまってるんですよ。
私はこの音源はbandcampで購入して最初は私だけの問題かなとも思ったんですが、ツイッター上で北澤さんにも事情をお伝えしてお持ちの音源(おそらくCDだと思います)での確認をお願いしたところ同じような状態だということでしたし、Apple Musicの音源も全く同じ状態だったのでそうではないだろうと。
ウェブ上でこの作品のレビューはいくつか見つかるんですが、このエラー音の有無に触れているものは皆無だったのでちょっとそこに触れている文章があったほうがいいんじゃないかなと思いまして(しかしこのレベルでエラー音入っていてそこに一切触れないというか気にならないというのは個人的には信じられないんですよね…一体なに聴いてんだよとすら思ってしまう頻度ですよ…なので結構な期間自分だけの問題だろうと思いこんでました)。
これから先この音源を初めて聴く人でこの点に引っかかった方に、それはあなたの環境の問題ではないですよってことで。
とても素晴らしいアルバムなので本当にこれは惜しいですしSunnyside Recordsにはできたらどうにかして改善を期待したいのですが、発表から9年経った現在で何も行われていないということはそれが難しいということなのでしょうね…。まさか気付いてないってことはないと思いますが。