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Ropes『dialogue』

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on button downKARENなどのバンドでも活動する女性シンガーachicoとART-SCHOOLのギタリスト戸高賢史によるデュオ、Ropesのファースト・フル・アルバム。ボーカルとギターという最小限な編成での歌ものアルバムですが、女性的な柔らかさを感じさせる優しい歌唱からも常に伸びやかさや芯の強さを感じさせてくれるachicoの声と、エレクトリックとアコースティックのオーバーダビング、空間系のエフェクトの効果的な使用で楽曲を色付けしていく戸高のギターの相性は本当に素晴らしく、足りないものを全く感じさせないほどの充足感のあるサウンドを生み出しています。空間系を多く用いた湿度の高いギターサウンドによるものでしょうか、どこか日本の夏の夕暮れ時を思わせるような、“既に何度も触れたことのあるような親しみを覚える淋しさ”を全編において感じさせるアルバムでもあり、その微妙な、現実には一時的にしか現れないニュアンスを確かなものとして表現できている点にとても惹かれるものを感じました。時折打ち込みによるものと思われるドラム・サウンドも顔を出すアルバムですが、やはりアルバムのハイライトは終始声とギターのみで綴られる4曲目「見えない窓」、5曲目「Last Day (album ver.)」辺りでしょう。またこの2曲がドラム・サウンドが表れないという特徴を持ちながらもそれによって可能になるテンポの伸び縮みを前面に出したようなスタイルではなく、前者ではストロークの強弱によって、後者ではフィンガーピッキングで小気味よく刻まれる低音弦の音の存在によってむしろ他の曲よりリズムが強く出ているように感じられるのも興味深いポイントです。この辺りはバンド・サウンドに対する造詣の深さがこの編成において最も効果的に反映された結果に思えますし、二人の認識においてはRopesはその編成からすぐにイメージされるような弾き語りユニット的なものよりもバンドのほうに近いものなのかもしれませんね。