LL

LL

Carlo Domenico Valyum『Cronovisione Italiana』

f:id:yorosz:20180831171805p:plain

Carlo Domenico Valyumは19世紀の終わりに生まれた研究者、発明家。機械の研究、開発に携わる仕事を長年務めた後、1937年2月にオーディオ/ビデオの異常な電磁波を傍受する発見をしたとの記録が日記に記されていたものの、確たる資料は見つからず、また1939年以来様々な文書が同時に異なる場所での彼の存在を示し、身体や時間の概念が混乱するような不可解な状況となるなど情報が錯綜し、その詳細は長年謎に包まれていました。しかし2014年8月の終わりにベルリンで、70年代に記録されたVHSからこの件に関する資料を含んだブリーフケースの存在が発見され、彼が1937年2月に未来(1976年から彼の死の前日に当たる1989年12月9日までの一定期間)のイタリアのテレビ放送の電磁波を傍受し記録していたことが明らかになったとのことで、それに関するすべての文章は現在までにアナログコピーとともにDossier Carlo Domenico Valyumというタイトルでまとめられているようです。

本作はテレビの電磁波を通して時空間を旅するようなCarlo Domenico Valyumの存在にインスピレーションを受けた電子音楽家のMirco Magnaniと主にぺインターとして活動するValentina Bardazziがイタリアのテレビのサウンドとビデオを再解析し、彼と共に過ごす時間の旅を描いたプロジェクトCronovisione Italianaの作品。

(*アーティストクレジットはCarlo Domenico Valyumとなっていますが、本作ではおそらく彼が残した記録などが直接用いられているわけではなく、その存在はあくまでコンセプトやインスピレーション源としてのみ関わっていると思われるため注意が必要です)

サウンド自体はロマンチックであったりホラーな感触を持ったサウンドスケープと粗い電磁ノイズやぼそぼそと聞こえてくる台詞などが掛け合わされた、どこか初期電子音楽のような質感もあるシネマティックなアンビエントですが、オーディオだけでなくビデオの再解析による映像作品を収録したVHSを含むエディションでも発売されているなどかなり気合の入ったアート物件といった感じです。

音のほうはSpotifyApple Musicでも聴けます。

 

Mirco Magnaniによるベルリンでのライブパフォーマンスの様子。

 

Vimeoでは2曲が映像付きで公開されています。