今年もやります年間ベスト。
今年は2014上半期ベスト - Listening Logですでに10作品選んでるので、そこで取り上げたものをもう一度掲載するのも不細工かなと思いまして、下半期に聴いたものから新たに10作品を選び、併せて20枚を今年のベストとしたいと思います。上半期と同様に一応順位もつけました。
ではどうぞ。
【10】Fred Frith & John Butcher 『The Natural Order』
- アーティスト: Fred Frith and John Butcher
- 出版社/メーカー: Northern Spy
- 発売日: 2014/11/18
- メディア: CD
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想像するだけで身震いするような強者演奏家2者の共演。しかし演奏の内容はというと力みや気負いのない、タイトルにもあるようにナチュラルなものでした。自然に気ままに、故にこの二人の音の語彙の豊富さ、演奏者としての「個」の足元の確かさに驚かされます。
動画は参考です。
Fred Frith Residency 4 - YouTube
【9】Michael Pisaro 『Continuum Unbound』
アメリカの作曲家マイケル・ピサロのCD三枚組。
作品の成り立ちや試聴はこちらを→
http://www.ftarri.com/cdshop/goods/gravitywave/gw-011-013.html
Congraree Nomadsにおける楽器の弓弾きによる音楽的な持続音の響きの美しさ。
そしてAnabasisのダイナミックな構成の妙に圧倒されます。
【8】Apartment House 『Chamber Works 1992 - 2009』
イギリスの現代音楽作曲家Laurence Craneの作品集。リリースはAnother Timbre。
このレーベルの作品に顕著な、時にエキセントリックなまでのミニマルさは本作にはなく、簡素な構成と調性はさながらフォークのようにも聴こえます。凛と透き通った感覚とほのぼのとした響きは冬の空気にもとても馴染みますよ。
Laurence Crane 'Sparling' - YouTube
【7】Rhodri Davies, John Butcher 『Routing Lynn』
作品の成り立ちが少々複雑なので、まずはこちらを→
http://www.ftarri.com/cdshop/goods/ftarri/ftarri-217.html
相互に溶け合い、時に異化するように浮かび上がる、別の空間、時間における、音、即興。演奏が止み、環境音のみになる時間では録音に関わったクリス・ワトソンの意匠がありありと。これほど演奏者の「個」に焦点を合わすことが困難な即興演奏もなかなかないのでは。
【6】Grouper 『Ruins』
ピアノ、弾き語りがメインのパーソナルな作品。これまでがインナートリップなら、今作は森の奥に入り込むような、身近に実在する辺境を思わせる。
【5】Oren Ambarchi 『Quixotism』
オーレン・アンバーチのEditions Megoからの新作はトーマス・ブリンクマン(本作にも参加)との共作と地続きにあるようなディープ・ミニマルな作風。一聴、ひどく寡黙なようでいて、多く招いたゲスト陣を加えたパートごとの音の抜き差しが本当に見事。終始ミニマルな反復がベースにありながら、テクノ的な感触はあまりなく、オーガニックさすら漂う音の質感が印象的です。
youtubeに全曲アップされているようですが、できればCDなどで全編続けて聴いてほしいタイプの作品ですね。
01 Oren Ambarchi - Quixotism Part 1 [Editions Mego] - YouTube
【4】Francisco López 『Yanayacu』
フランシスコ・ロペスは今年に入って上半期ベストにも入れた『Untitled #290』で初めて聴いて以来、すっかり入れ込んでしまいました。『Hyper-Rainforest』や『Untitled (2011)』ももちろん素晴らしかったですが、本作や『Obatala - Ibofanga』などの自然な音場のフィールドレコーディングを楽しめるようになったのが今年のリスニングにおける大きな収穫であるという意味でも、ここに挙げるならこれかなと。
試聴はこちらから
http://www.art-into-life.com/product/4705
リンク先で検索すれば『Hyper-Rainforest』『Untitled (2011)』『Obatala - Ibofanga』も試聴できます。
【3】Artificial Memory Trace 『Garig Gunak Barlu』
80年代より環境音を素材としたコンクレート作品を制作している作家Artificial Memory Traceの作品。ベルギーのUnfathomlessより。この作家の作風と同様にUnfathomlessというレーベルも環境音を用いたコンクレートを中心にリリースしているのですが、本作は音場が切り替わる瞬間を除けば加工や編集の度合は低く、自然が発するシュールな音を捉えたフィールドレコーディングとしての色合いが強いです。
今年は年間通してこのレーベルの作品をよく聴きました。
http://www.art-into-life.com/product/45
【2】Steve Lehman Octet 『Mise en Abîme』
スティーブ・リーマンのオクテットとしては2枚目のアルバム。ヘンリー・スレッギルやスティーブ・コールマンなどの影響をうかがわせる編成やポリリズミックな楽曲など、前作から大きな変更はなくとも、アンサンブルの噛み合いや曲の展開など細部にわたってしっかりとブラッシュアップされている印象。全編にわたってドライヴしまくるタイショーン・ソーリーのドラミングがもたらすスピード感、40分弱というアルバム構成も手伝って、退屈な瞬間が微塵もない超タイトな傑作。
Steve Lehman Octet, Segregated And Sequential, from Mise En Abîme - YouTube
【1】Tomas Phillips 『Two Compositions』
東京のレーベルSADから、トーマス・フィリップスのソロ。いつになく器楽的な音色の多い本作、本人がケージやフェルドマンの影響が表れているのかもしれない、と発言していたそうですが、そういった現代音楽にも、はたまたポストクラシカルにも聴こえない響き。コンポジションの名の通り非常に練られた構成、音の配置は単純にドローン作品と形容することもできず…。どうにも分類に困る、故に底知れぬ深みを持った音響作品だと思います。1曲目など24分という長尺にも関わらず何度聴いたことか。
販売元のSADさんのページでフル試聴ができます。
以上10作品。どれも素晴らしかったです。