・Colin Vallon Trio『Le Vent』
来日公演が各所で話題になっててその流れで聴いてみたんですがとてもよかったです。
ただこのアルバムももちろんいいんですがyoutubeに上がってたライブ動画のほうがさらにいい。
↓ この動画本当に素晴らしい
・Kendrick Lamar『To Pimp A Butterfly』
なんとなく聴くタイミングを逸してスルーしっぱなしになってたんですが、今更聴いてみたところやっぱり良かったです。6の前半や13でのシリアスなトーンのラップはめちゃくちゃかっこいいし、11はまんまレディヘのPyramid Songだし(ただどうせなら四角錐拍子までパクってその上にラップ乗せたらもっとヤバいことになってたんじゃないかと思わなくもない)、15は先行シングルバージョンにふなっしー↑的なはっちゃけたフロウが上乗せされてて最高だしで聴きどころありすぎます。
・Visionist『Safe』
ジャケも音も結構な衝撃でした。最近フロア寄りな音が多くなってるイメージのPANから、その方向性を決定づけるようなリリース。UKインストグライムシーンの異端であり急先鋒(?)ってな感じなんでしょうか。まぁよくは知らないんですけど。“グライム”っていうと2000年代半ばのラップありきなイメージというか、ヒップホップがあまり根付かなかったイギリスで生まれた独自のラップミュージックみたいなところで止まってたんですが、インストでこんなことになってるとはつゆ知らず…。特集とかも組まれてるみたいでこれからクる(もうキてる?)音なのかもですね。これは嬉しい発見でした。
興味ある方は是非一読!
・Oracles『Divination II』
で、Visionist聴いてからインストグライムをちょこちょこチェックしてみてるわけですがこのNYP(だったんですがいつの間にか1ドルになってる…)のコンピが素晴らしかったです。Visionitからこういう音に入った身としては6曲目なんか特にキターーーーってな感じですが他の曲も相当気に入ってます。私の調べが甘いだけかもしれませんが参加しているのはまだソロ作などリリースしていないトラックメイカーがほとんどのようでこれから楽しみですね。できれば早いとこ何かしらのリリースがあってほしい。
・Floating Points『Elaenia』
Elaenia [帯解説・ボーナストラック1曲収録 / 国内盤] (BRC487)
- アーティスト: FLOATING POINTS,フローティング・ポインツ
- 出版社/メーカー: BEAT RECORDS / PLUTO
- 発売日: 2015/11/04
- メディア: CD
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これはすごい話題になってますね。今作出すまでにもリリースは結構ある人らしいんですが、全く知りませんでした…。音のほうはさりげなくて、でもすごく手が込んでいて、、とか形容詞を並べたてることはできるんですが、例えばジャンルは何なのかと聞かれるとこれが非常に難しくて、いわゆる情報量過多なごった煮感みたいなものはないんですが、それを回避したうえで、しかしどうしようもなくハイブリッド・ミュージックというか。なんか今までにないものを作ろうって肩肘張ってやった結果ではなくて、作ってたら結果的に様々な分類から紙一重のところで絶妙に逃れ続けるようなものができてしまったみたいな(そんな理想的な音楽の生まれ方があっていいのか…)、まぁ要は“スムーズ”なんですよね。何もかもが。自分は音楽におけるスムーズさってどちらかというと退屈に感じてしまうことが多かったんですが(ただ退屈であることが必ずしも音楽的にネガティブな方向に作用しないアンビエント・ミュージックにおいては違います)、最近そういうものにも幾分価値を見出せるようになってきたところがあって(これ見よがしな屈折感みたいなものに正直飽きてきてます)いろいろ考えるところの多い作品でもありました。
↓ 一応試聴貼りますけどこれは是非アルバムトータルで聴いてほしい作品です。Apple Musicなどの各種ストリーミングサービスでも聴くことができるみたいなのでできればそちらで。
・Oneohtrix Point Never『Garden Of Delete』
GARDEN OF DELETE [帯解説・ボーナストラック1曲収録 / 国内盤] アマゾン限定特典マグネット付 (BRC486)
- アーティスト: ONEOHTRIX POINT NEVER,ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー
- 出版社/メーカー: Beat Records / Warp Records
- 発売日: 2015/11/10
- メディア: CD
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なんか発売されたタイミングといい音の内容といいジャケといい、どうしてもFloating Points『Elaenia』と対になった作品みたいに思ってしまうんですが、まぁそんなところを加味せずとも十分すぎるくらい話題になってますね(渋谷タワレコの店頭ポップに踊る“神”の文字にはもはや苦笑いでしたが)。一言で言うと随分忙しなくなった印象。Replica辺りから顕著になったコラージュ感に加えて、強いビートやよりラウドに歪んだ(EDM的な?)シンセなどなどのおかげでいつになくうるさいです。これは知り合いの方が指摘していたことなんですが、Aphex Twin「Come To Daddy」みたいに聴こえるところ(Warpだし確信犯的にやってそうですね)ありますし、ブレイクコアの再解釈と言われればなるほどなって納得できる部分も多いですね。そういった指摘を受けると「Come To Daddy」にしてもブレイクコアにしてもあまり好きでない私がこのアルバムに素直に入っていけないところがあったのも頷けますし。ただこのアルバム、先日東京に旅行行った際の散策時によく聴いていたのですが、特に人混みの中で聴くとめちゃくちゃいいんですよね…(「MUTANT STANDARD」とか本当に最高すぎます)。特に渋谷のあらゆる意味で情報量過多な光景、空気とは“合う”っていうよりは、そういったある意味ストレスフルな視界を音で塗りつぶすというかなぎ倒すようなイメージなんですが、脳内で想起されて素晴らしく快楽的でありました。と同時に、あまり音楽聴くうえでこういうことは考えたくないんですが、このアルバムは田舎に暮らすもの(私もそうです)が聴くものではないんじゃないかって疎外感を感じる瞬間でもありました。正直自分の身近なところであの感覚は再現不可能ですもん。人混みとか、目にも耳にもうるさい街とか、基本的には苦手ですし、例えば恒常的にそういった環境に居ることは自分には耐えられないと思いますが、あの感覚はちょっと羨ましいなぁとは思いますね…。
・Rema Hasumi『UTAZATA』
福岡県出身、ニューヨーク在住のピアニスト、ボーカリスト、即興演奏家による初めてのアルバム作品。よくチェックしているJOEさんのブログで知って聴いてみた一枚で、そちらのレビューが素晴らしいのでここで私が書くことってあまりないのですが…。
ご本人のHPにはこの作品について、
“雅楽、今様、子守唄など、日本の伝統的音楽を、フリー・インプロビゼーションを基盤に演奏している。 ヨーロッパ主義的な平均律の12音階のシステムという視点ではなく、その外側にある音楽的視点から、日本の音楽をとらえ、ラディカルな再構築をすることを目標とした。”
とありまして、“後半の平均律12音階の外側にある音楽的視点”についてはもう少し具体的な言及がほしいと思ったりもするんですが(何か具体的な方法論を用いているのか、それとも演奏に臨む意識レベルでの話なのか、とか…)、あまりそういったところを意識せず私が聴いた印象としてはTyshawn Sorey『That / Not』っぽいなってのが第一印象でした。Tyshawn Soreyが『That / Not』や『Alloy』などの作品で何を目指して演奏していたかは不勉強で知らないんですが、蓮見さんはTwitterなどでもTyshawn Soreyの演奏に何度か言及されていたような記憶がありますし、音楽が目指す方向性として近いものがあるのかもしれませんね。もちろん今作にはそういったTyshawn Soreyの諸作と差別化される要素もあって、中でもやはり大きいのが声の存在ですね。今作の即興部分は非常に点描的なのですが、そこに入る声のパートは常に“線”として存在している印象で、それが入るだけで演奏自体のトーンは変わらぬままで安定感を感じられる、ちょっと他の楽器では代用できないような効果がありますし、これは音楽的に安易だと捉えられそうな気もするのであまり言いたくないんですが、なんか安心するんですよね。これはTyshawn Soreyの作品にはない部分で、この感覚がある故に『UTAZATA』はアヴァンギャルドなジャズなどに馴染みのない方でも結構聴ける作品になってるんじゃないかなとか思います。大衆性やポップさとはまた違うんですが、根源的に落ち着くものを表現できているというか。
また、完全に聴いただけの印象ですが、今作の雅楽(東遊)、御詠歌、筑前今様、竹田の子守唄といった日本の伝統的音楽をテーマとした4つの演奏はそれぞれ別の方法(?)、視点で演奏されているようにも感じます。
各楽器の点描的な発音の中に旋律が姿を隠しているようにも思えて、その気配を探しているうちにトランペットに導かれるような形でそれが姿を現す構成が巧みな1曲目、
演奏に参加する楽器すべてが旋律をユニゾンすることや、その提示を終えた後のソロパートでも旋律的な音運びを多用することでハーモニーが前景化することを避けているように感じられる2曲目、
歌に対する音の足し方はコード伴奏というより対旋律的?で合いの手のように聴こえるところもあったり、ギターのソロが入ってきてからはジャズ的な演奏にも思える4曲目、
言葉や音楽の持つ機能(この曲の場合は子守歌)に忠実な演奏の7曲目、
といった具合に。
・Kendrick Scott Oracle『Conviction』
今年出た『We Are The Drum』は未だによくわかんないんですが、遅ればせながら前作のこちらを聴いてみたところハマりました。各曲の出来、全体の流れまで気の配られた素晴らしいアルバムだと思います。ジョン・エリスやマイク・モレノなど気になってはいたけどあまり耳にする機会のなかった奏者の演奏にしっかり触れることができたのも個人的に大きな収穫でしたし、特にポスト・ローゼンウィンケル(?)的にも聴こえるマイク・モレノのギターが炸裂する10曲目なんか最高ですね。
・Chevel『Blurse』
Stroboscopic Artefactsからアルバム作品が出てるの不覚にも見逃してました。この人は名前も聞いたことなかったんですが、イタリア出身で現在はベルリンを拠点に活動を続けるテクノ/ハウスプロデューサー、なんだそうです。音のほうは結構曲毎にテクノだったり、エレクトロニカっぽかったり、グライム風なのもあったりで多彩ですし、音の質感やその隙間のとり方、ビートの配置にいたるまで、これまでのStroboscopic Artefactsのイメージにはないものになってると感じます。正直初聴時は何かの間違いかとすら思いました。特にマットな質感のビートにリバーブやディレイの強くかかった空間的なウワモノが乗る、みたいな各パートがわかりやすく分離した音作りってこのレーベルのイメージになくて、例えばLucy『Churchs Schools And Guns』やDadub『You Are Eternity』のようなすべての音がひとつの世界観を表現するために混然一体となっているような濃厚さは今作にはありません。例に挙げた二作が大好きな私としてはいささか残念に思うところもなくはないんですが、しかし個人的な興味の向くところであるインストグライム、UKシーンの影響が如実に感じられるような4曲目などすごく好きですし、7曲目の「Flippant Remark」はLucy「The Self As Another」をスカスカにして再構築したようにも聴こえますし(というかそうとしか聴こえない)、ある意味レーベルのこれまでのカタログを対象化するような一作にも感じられます。最初は面食らったんですけど、勢いを増すUKシーンの動向などにも目を向けたうえで、レーベルカラーとの絶妙なせめぎ合いを経た、考え抜かれたリリースに思えますし、なにより聴く度にどんどんしっくり来てるんですよねこの音が。やっぱり外さないな~Stroboscopic Artefacts!
・Ingrid Laubrock『Ubatuba』
今年はこの人がリリースラッシュでしかもどれもいいので追うほうとしては楽しいんですが大変でもあります。これはテナーサックス、アルトサックス、トロンボーン、チューバ、ドラムっていうよくわからん編成なんですが、その聴きなれないバランスのアンサンブルが妙に心地いいわ(自分こういうちょっと変な編成すきみたいです)ティム・バーンはかっこええわで大満足。この人は個人的に今一番チェックするのが楽しい演奏家かもなぁ。メアリー・ハルヴァーソンはいろんなところで言及される機会も増えたように思うけど、ハルヴァーソンともよく絡んでるこの人はあまり取り上げられてない気がするんですがどうでしょう。そこのところ正直ちょい不満です。
・Spangle call Lilli line『ghost is dead』
ライブ活動再開の知らせは聞いていたんですが、新作が出るとは思ってなくてこれが出るの知ったのも発売日の前日(!)でした。発売日になったその日からApple Musicで聴けたのでありがたくチェックさせてもらったわけなんですが、参りましたね素晴らしいです。SCLLは『Nanae』『or』『FOR INSTALLATION』辺りが好きなんですが、『FOR~』以降は作を重ねるごとに興味が薄れていって2010年代の活動はほとんど追ってないくらいでしたし、ここ数年はあまり聴き返すこともなかったんですが、そういった個人的な経緯も重なってなのかすごく新鮮に響くんですよね。何か特別新しいことにチャレンジしているようにも聴こえないんですが、なぜなんでしょう。音の質感はパキっとしていて過去作だと『Trace』に近いと思うんですが、自分は『Trace』あまり好きではなかったにも関わらずこれはすごく好きだと思えますし、なんだか自分でもよくわからないことだらけですね。でも、いいんですよ、本当に。淡々としてるようでさりげなく捻くれてる、みたいな後半の楽曲群とか特に不思議な魅力を放っています。
↓ PVも多く制作されているようですね。
・Carl Michael Von Hausswolff『Squared』
スウェーデンの実験音楽家CMなんたらことカール・マイケル・フォン・ハウスヴォルフ(でいいんでしょうか?)の新作。1曲目が32分、2曲目が16分の2曲入り。これはとにかくハードコアなドローンの1曲目に尽きます。32分の長尺を全くものともしない緊張感、集中力、持続しているのは音だけではないですよ。ひとつの音に聴き入ること、音の中に潜り込んでいくことの素晴らしさが、目にも見えず触れることもできない音という表現形態の内の、最小限に絞られた移り変わりの中で、本当に確かなものとして手に残る、大傑作だと思います。ドローンって年に数枚自分の好みにバシッとハマるものがあるんですが、今年出た作品ではこれ断トツなんじゃないでしょうか。というか今年のものに限らずともこのレベルの作品はそうあるものじゃないと思います。聴き終わった時の手応え、充実感とかたまらんものがあります。どこも品切れで今から買うのはなかなか難しそうではありますが、リンク先のArt into Lifeの試聴が尺長めでそれだけでも結構楽しめると思うので是非。
一応レーベルの方でメールオーダーはできるみたいです。
http://www.aufabwegen.de/catalog/