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Best of 2014 再考版

12月に入って各種メディアの2015年間ベストとか続々出てますが、このタイミングで去年2014年の年間ベストを改めて選んでみます。

このブログで去年12月に出したもの(上半期下半期)を見返してみて、その時点からのこの一年間で実際に愛聴したものはちょっと違うなとか、その時点では聴けてなくて2015年に入ってから聴いた2014年作品にもすごくいい作品あったなとか、いろいろ思うことありまして、それらを改めて紹介できればなと。

こういう個人が選ぶものは特にそうですが、“年間ベスト”なんていってもその年に出たもの全て聴くなんて実際不可能なわけだし、個人の好みだって変化するものだと思うので所詮は暫定的なものに過ぎないんですが、一年という期間を置いて改めて選んでみるとなんだか精度の高いものになっている気がして不思議なものです。特に上位6作品はこれからも折に触れて聴き返していくんだろうなぁと。まぁ先のことなんてわかんないんですが。

 

では20作品、順位も付けました。カウントダウン方式で

 

20. Shotahirama : Miclodiet『Clampdown』

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19. Rhodri Davies, John Butcher『Routing Lynn』

www.ftarri.com

 

18. Kyoka『IS (Is Superpowered)』

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17. Tomas Phillips『Two Compositions』

soundcloud.com

 

16. John Tilbury, Philip Thomas Et Al.『Morton Feldman - Two Pianos and other pieces, 1953–1969』

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15. STL『At Disconnected Moments』

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14. Matt Brewer『Mythology』

ミソロジー

ミソロジー

 

 

 

7~13位辺りの順位はかなり迷いました。差はあってないようなものです。

 

13. Oren Ambarchi『Quixotism』

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12. Jürg Frey / Radu Malfatti『II』

www.ftarri.com

www.erstwhilerecords.com

 

11. Ambrose Akinmusire『The Imagined Savior Is Far Easier To Paint』

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10. Joseph Clayton Mills, Deanna Varagona, Carrie Olivia Adams『Huntress』

soundcloud.com

 

9. Apartment House『Laurence Crane; Chamber Works 1992-2009』

youtu.be

 

8. Tyshawn Sorey『Alloy

Alloy

Alloy

 

 

7. Joe Panzner / Greg Stuart『Michael Pisaro's White Metal』

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youtu.be

 

 

ここから上はもう全部1位みたいなものです。

 

6. Grouper『Ruins』

youtu.be

Grouerの作品の中でも一番好き。これ聴いてると自分このまま眠りについて目覚めない(=死ぬ)んじゃないかと思うんだけど、それに全く拒否感を感じないどころかすごく自然なことにすら思えてくる。甘美な眠り(≒死)への誘いとかそういうものとは違うし、枯れた末の自然な絶命みたいなものともまた違う、なんでこんな作品作った(作れた)んだろう。

 

 

5. Lucy『Churches Schools And Guns』

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テクノ/ダンスミュージックとしての機能性を一切失わず、文学的とまで言えそうなひとつの世界観をここまで徹底的に描くことができるのかっていう。機能性とロマンの同居。

 

 

4. Konzert Minimal『Antoine Beuger - Tschirtner Tunings For Twelve』

youtu.be

ヴァンデルヴァイザー楽派の代表的な作曲家アントワーヌ・ボイガーの作品をKozert Minimalという演奏家グループが演じたアルバム。12の楽器がそれぞれに発する持続音と、その間に挟まれる無音のみで構成されている音楽です。音程の移り変わりなどもありますが、執拗な持続音と無音の繰り返しの中にあってもそこに意味や規則性を見出すことは難しく、耳に留まるのは特に発音時に顕著に表れる(管楽器ならば息が管体を通ることで、弦楽器ならば弓と弦の圧力のバランスが不均一なことで起こる)擦れた音と、人が生楽器で持続音を出すと避けようなく表れる音の揺らぎで、それらが無音と持続音という限りなく削がれた構成の中であっても、豊かな音響的コントラストや、目、耳、鼻、口、を塞がれても伝わってきそうな人の気配までも感じさせてしまいます。アントワーヌ・ボイガーの作品は様々なヴァンデルヴァイザー楽派の作品の中でもこういった人の気配を、“浮かび上がらせる”といったかたちではありますが、それ故に(?)最も色濃く感じさせるもので、例えばブラック・ミュージックとは全く違った音楽ですけど、同じくらいセクシーな音楽なのではないか、とか思います。

今回選んだ20枚中に3枚入ってることからも分かる通り、Another Timbreの作品はやっぱり好きだし本当によく聴きますね。

 

 

3. Steve Lehman Octet『Mise en Abîme』

youtu.be

昨年末の時点でも下半期の2位に選んでいた作品。一曲一曲の短さ、アルバム全体でも40分を切るタイトさもあって今年に入ってからもガンガン聴いてました。大き目の編成ですし管のアンサンブルや絡みも結構複雑なので、リズム隊はしっかり土台を支えることに徹する、なんてことになっても良さそうなものですが、そんなことお構いなしに全編細かにそしてダイナミックに叩きまくるタイショーン・ソーレイのドラムが最高すぎます。スティーヴ・リーマンってその顔初めて見た時からこの人絶対むちゃくちゃ頭いいんだろうな…って思ってたんですが、そんな知性を感じさせる部分に、前述したタイショーン・ソーレイをはじめとした面々がもたらす演奏のフィジカル性(もちろんリーマン自身の演奏も素晴らしいです。2曲目の延々ソロ吹いてる時の音の切り方、間のとり方とかほんとゾクゾクします。)も上乗せされてとんでもないクオリティになってしまった今作のリリースの後では、もうその目つきだけで恐ろしさを感じるようになってしまいました。

 

 

2. Haptic『Excess of Vision: Unreleased Recordings, 2005-2014』

noticerecordings.bandcamp.com

これは2015年に入って聴いたんですが死ぬほどハマりました。ドローン、インダストリアル、ミュージックコンクレートが溶け合ったような作風なんですが、無機的な持続音でズブズブ惹き込んだかと思いきやガシャガシャした環境音(?)放り込んでくるところとか展開の感じとかも絶妙に自分の波長と合うようなところがあって、なんかうまく言葉にはできないんですけどとにかくずっとこの音の中に居たいって思わせられる2曲、どちらも23分。Hapticのアルバムはどれも好きですけど、これと『Abeyance』は一際ディープなものを表現できてるように思います。

 

 

1. Thomas Ankersmit『Figueroa Terrace』

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サージ・モジュラー・シンセを用いた即興とのことなんですが、場当たり的なものではなく確かな構成美を感じさせる作品で、特に中盤の静かなパートの音の抜き差しひとつひとつにはこの人の音響的な感覚の鋭敏さが表れているようでとにかくクール。でありながら、これ、聴けば聴くほどなんですが、感情や思念といったものとは全く別の、音響的な快楽性のみで駆動される衝動性みたいなものを感じさせる作品でもあるんですよね。語弊を恐れず言えばパンク的な感性を感じるというか。まぁつまりはとにかく滅茶苦茶なかっこよさなんですよ(これで十分ですね笑)。

去年の時点で選んだものでも(上半期のほうで)1位に選んだ作品ですが、今年に入ってからもやっぱりよく聴きましたし個人的な2014年はやっぱこれに尽きるのかなって思います(とか言ってHapticとどちらを1位にするか相当迷ったんですけどね笑)

「かっこいい電子音楽」って聞かれたら真っ先にこれが思い浮かぶ状況は当分続くんじゃないかな…。

 

面倒なのでいちいちリンクは貼りませんでしたが、半分くらいはApple Musicで聴けるみたいなので気になったものがあったら是非チェックしてみてください。