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Thomas Ankersmit / Jim O'Rourke『Weerzin / Oscillators And Guitars』

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このブログでは何度か取り上げている通り、2014年に知ってからハマりっぱなしの音楽家トーマス・アンカーシュミットと、説明不要なジム・オルークとのスプリット盤。マスタリングは出ましたRashad Becker。2005年、Tochnit Alephから。(よく知らないレーベルでしたが調べてみたらHeckerのライブを収めたカセットやらThe HatersのCDrやらRolf Juliusの再発LPやら出しててなかなかのヤバさ…)

“寡作のトーマス・アンカーシュミットが2005年にどういう音を出していたのか”が本作に手を伸ばした主な理由で、次作に当たる2010年の『Live In Uterecht』とは結構違うんじゃないかなんて推測しながら聴いてみたんですが、蓋を開けてみたらやってることは同じでした(なにやってるかはこちらに書いてるんで参考に)。で、それでがっかりしたかというとそうでもなくて、むしろモジュラーシンセで身体的な演奏行為を行うということをこの時点で、これだけエッジーなかたちでやってたんだって驚かされました。

後の『Live In Utrecht』や『Figueroa Terrace』と比べるとより衝動的な印象で、終盤のサックスのロングトーンの多重録音とシンセのノイズが重層的なドローンを形成する場面なんか相当にエグいものがあります。低域がカットされたような音質というか音作りも相まって結構耳に痛いキツい響きになるところもあるんですけど、それもエッジーでかっこいいって印象に転じてる感あってまったく問題じゃないですね。やっぱこの人最高です。

もう一方のジム・オルークの曲はというとタイトル通りのオシレーターとギターによるドローンなんですがこれがまた凄い。オルークのドローン作品といえば『Disengage』『Remove The Need』『みず の ない うみ』など傑作がいくつもありますが、これはそれらに比べて実験音楽というよりアヴァンロック的な佇まいが強く感じられるもので、オシレーターによるドローンの倍音比率の変化に伴ううねりと延々となり続ける数本の歪んだギター(ニュアンス的にはプリペアドだったりE-BOWだったりによってノイズや持続音を出すタイプの演奏より歪ませた状態でストロークし続けるような演奏に近いように聴こえますが、具体的にどう弾いているのかはわからない…)が重なってスケールの大きいサイケデリックで快楽的な響きが生まれてます。微細な音の変化に耳を澄ますというよりは(もちろんそういう聴き方もできますが)、その圧倒的な鳴りにただただ飲み込まれるような感覚。もしかしたらオルークの作品でこれが一番好きかも。歪んだギターの響きがそう思わせるんでしょうけどなによりロックでかっこいい。

ってことで両面ともにとにかくかっこいい音の入ったレコード。傑作です。なかなか普通に売ってるところはないと思いますがDiscogsのマーケットプレイスにはいくつも出品されてて結構安く買えます。

それとちょっとした余談ですが、私がThomas Ankersmitの存在を知った2014年の『Figueroa Terrace』発売時、この人の名前を検索しても日本語では僅かな情報しかない状況だったんですが、そんな中でShotahiramaさんの『物質的恍惚』では2013年の8月にこの盤が取り上げられてるんですよね。リスナーとしての感度も凄いなあこの人。ちなみにそのShotahiramaさんがThomas Ankersmitを知ったのはFtarriの鈴木美幸さん編集の『Improvised Music From Japan』の06年のベルリン・インタビューズ特集の号だそうで、なんだかいろいろ繋がるなぁ。あーまたFtarri行きたくなってきた。

 

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