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Paul Bley『Ballads』

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カナダ出身のジャズピアニスト、ポール・ブレイがアネット・ピーコックの曲をトリオで演奏した作品。共演はドラムにバリー・アルトシュル、ベースはゲイリー・ピーコック(1曲目)とマーク・レヴィンソン(2,3曲目)。1967年録音。

トリオでの演奏ですが、ブレイのピアノ演奏は終始ドラムやベースの音に反応しているようなところがほとんどない、そこだけに焦点を合わせればソロピアノ作品として聴けてしまえそうなもので、ドラムやベースにしてもあまり他者の音に反応している感じはなく、そのどこかそっけない距離感を感じさせる関係性はたまたま向かう方向が一緒だったために居合わせただけでそれ以上関わり合わない3人といった風情です。故にフレーズの絡み合いによるインタープレイ的な(=ジャズ的な)快楽や盛り上がりはあまり感じられず、各演奏者の関係性の在り方はフリー・インプロヴィゼーションに近いといえそうですが、出てくる音の総体はアネット・ピーコックの楽曲の存在感によってまとまりを持っているように聴こえるという、とても不思議で絶妙なバランスの基に成り立った音楽になっています。

1967年という(まだフリージャズやフリー・インプロの明確な分離や、そういった音楽の“型”のようなものが確立されていなかった)時代の中での試行錯誤から生まれた独創的な一枚といえるかもしれません。