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マイ・フェイヴァリット・フィールドレコーディング9選

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先日Polypicalさんがツイートされていたマイ・フェイヴァリット・フィルレコ作品に触発されて(ていうか単なるパクリですが)、私も選んでみました。

簡単な紹介文も書いてます。画像をクリックで試聴などのリンクへ飛べます。

 

・Chris Watson『In St Cuthbert's Time』

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フィーレコといったらこの人クリス・ワトソンによるイギリス、ノーサンバーランド州の小島リンディスファーンの環境録音。数種類の鳥の鳴き声と水と風の音が織りなす原初感すら感じさせる圧倒的なアンビエンス。この人の録音は音の捉え具合や解像度が他のフィーレコ作品とは段違いで響きの説得力がとにかく凄い。

 

・Francisco Lopez『Through The Looking-Glass』

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フィールドレコーディング、ミュージック・コンクレートなどの手法を用いて活動するサウンド・アーティスト、フランシスコ・ロペスのアンソロジー的5枚組。フィールドレコーディング的観点からだとなんといってもDisc 1『La Selva』が圧倒的。コスタリカ熱帯雨林で録られたあらゆる環境音のミックスで猿のうめき声から虫の羽音、土砂振りの雨や雷鳴などに加え最早何の音かわからないような音まで。Disc 3の『Buildings New York』も素晴らしい。

 

・Merzouga『52°46’ North 13°29’ East – Music for Wax-Cylinders』

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エジソンが初めて開発した録音機 ”ワックス・シリンダー” にて記録された世界各地の自然/環境音を用いて制作されたコラージュ作品。 柔らかいノイズにまみれ、いっそう不可思議さを増したサンプルに、本人による素朴な演奏が加わるかたちでストーリー性すら感じられるような非常に音楽的な作品に仕上がっています。メンバーによる楽器の演奏なども加えられているため狭義のフィールドレコーディング作品とはいえないかもしれませんが、本当に大好きな一枚なのでこれだけは外せなかった。

 

・Jérémie Mathes『Efequén』

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フランスのフィールドレコーディング作家、Jérémie Mathesがスペイン領カナリア諸島の火山島ランサローテ島にて一週間かけて集めた音から構成したアルバム。人の声や雑踏なども含む多様な環境音から成り立っていますが、中でも水の音が印象的。おそらく環境音をそのまま用いるスタイルで音色自体の加工などはなされていないと思いますが、音のレイヤーや抜き差しによる展開や起伏の作りが巧みですごい“聴かせる”作品になってます。

 

・stilllife『夜のカタログ』

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 スティルライフは東京在住のフィールドレコーディング作家、演奏家である津田貴司 と 笹島裕樹による2人組。本作は2013年から2014年にかけて(主に夕方以降に)録られた膨大なフィールドレコーディングの中からの抜粋によって成り立っています。故に夜のカタログ。日本人には馴染みのある音も多い環境音とそこに控えめに寄り添うように時折鳴らされる楽器(あるいは物)の音。要素だけ見れば決して奇抜さや特殊性はないのですが、普通にレコーダー回してこんな風になる?っていうくらいに異常に雄弁に感じられる自然音が詰まっています。何十、何百という時間回せば数分は録れるかもってレベルの自然が語っているような瞬間を焼き付けた、語りの記録(=ログ)。日常的に存在している音に目を向けその底知れなさを知るって意味では衝撃的ともいえる作品だと思います。

 

・Heike Vester『Marine Mammals And Fish Of Lofoten And Vesteralen』

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クジラやイルカ、シャチだったり水中生物の録音モノってフィールドレコーディングには多分結構あると思うんですが(Douglas QuinのとかFREMEAUX&ASSOCIESから出てるのとか)、自分が特に愛聴してるのがこれ。自分が他に聴いたことあるものと比べると非常にクリアな録音で空間も広くて、そこにあのキュイーンって感じの最早電子音みたいなイルカの鳴き声とかが響く様がほんといいです(語彙…)。録音者のHeike Vesterって人はドイツ出身の生物学者であり海洋動物のバイオアコースティックを専門とするOcean Soundsのコーディネーター、創始者とのこと。音楽に関わるような活動はそんなにしてなさそうですけど調べてみたらBen Frost『By The Throat』においてシャチの音声で関わってるみたいです。

 

・Lawrence English『Suikinkutsu no katawara ni』

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音響レーベルRoom40の主宰でもあるサウンドアーティストによるタイトル通り水琴窟の録音。隙間が多く涼し気な音が点描的にこだまする、ここで選んでいるものでは最もアンビエントとしての機能性が高いかもしれない一枚です。暑い時期なんかになんとなくかけとくと特にいいと思います。

 

・Jana Winderen『The Wanderer』

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ノルウェー出身のサウンドアーティスト、ヤナ・ヴィンデレンによる作品。彼女はハイドロフォンを用いての海中調査、音の採取を長年続けているアーティストで、それによって得られた種々の音源を用いたサウンドスケープ作品を継続的にリリースしています。各作品で音が採取された場所やその採取のプロセスは異なるのかもしれませんが、聴覚上はその差異にはあまり耳が向かわないというか、どの作品も同じような意味で同じくらいいのでとりあえずどれでもいいから是非聴いてみてほしい作家です。冷たくも瑞々しい響きが多くなかなか不思議な感触の音響作品。(彼女の経歴についてはこちらのページが詳しい)

 

・Haco + Toshiya Tsunoda『TramVibration』

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ヴォーカリスト、作曲家などとしても活動するHacoとコンセプチュアルなフィールドレコーディング作品で知られる角田俊也による共作。

“2006年12月、大阪、阪堺電車恵美須町浜寺駅前を往復乗車し、その間、車内において、角田はピエゾセラミック・センサー・マイクと聴診器を使って振動音を、Haco は彼女が考案した、ふたつの誘導性マイクによるステレオ・バグスコープ・システム (stereo bugscope system) を使って電磁波を、それぞれ録音した34分36分の1トラック。全34分同じ車中にいながら、意外にも多様に変化する音の姿を、驚きとともに堪能できる。 ”(Ftarri商品説明より)

Hacoが捉えた電磁波の存在や角田俊也の捉えた振動音の動きなどから非常に電子音楽やミュージック・コンクレート的仕上がりになっている一作。電車の走行速度や線路の状況などに伴ってか音にダイナミックな起伏が生まれているのも面白いです。