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『Against 2018: John Wiese』at art space tetra

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福岡art space tetraでの『Against 2018: John Wiese』観てきました。

John Wiese以外の出演者もそれぞれに聴きどころあって大変充実したイベントだったんですが(特に久しぶりに見たShayne bowdenの演奏のドゥームとインダストリアルとフィーレコが混ざったような展開猛烈にかっこよかった!)、やっぱJohn Wieseの演奏が感銘を受けるほどに素晴らしすぎたのでそれについてだけ書き殴ります。

使用機材はラップトップからインタフェースを通してミキサーへ、というシンプルなもの。ただMACKIEのミキサーのモノラル6、ステレオ4というチャンネルを全部使ってたのでチャンネル数は多めですかね。

演奏のスタイルもラップトップから出した音をミキサーで音量調整してミックスしていくっていう、シンプルなライブミックス以上でも以下でもないってスタイルで、これは2015年に秩父4Dで観た時と一緒。

サウンドのほうも基本的にはインダストリアルな物音、ノイズ、その中間のようなマテリアルが左右に蠢き、重心低い持続音が中央で鳴るっていうこれまた別段風変わりではないもの。ただ仏教で使われる鳴り物みたいな音の多様だったり、エレクトリカルパレード的な陽気さのあるオーケストラの音源を終盤に投げ込む構成は今回のために用意した感がありました。

音楽の成り立ちを書き起こしてみると、こんな風にシンプルとかって単語が出てきちゃうんですけど、実際演奏観てるとその音のミックスの手つきと、音源がステレオ2chとは思えないほど立体的に行き交う様子があまりにも素晴らしくて、「音をこれほどまでに触覚的に扱えるものなのか……」と終始感動しっぱなしでしたね…。

秩父4Dの時もそういう感触はあったんですが、そこからの数年でその表現は確実に数段研ぎ澄まされてるという印象を持ちました。

いやほんと、見てる分にはミキサーのフェーダー上げ下げしてるだけなんですよほぼ。ラップトップもちょこちょこ触ってはいましたけど、多分それは再生するクリップを切り替えてるくらいなものでおそらくラップトップの中でそこまで複雑に生成的なことはやってなさそうな感じでしたし、見ようによってはつまんなく感じる人もいるかもしれないようなスタイルです。

でもきちんと耳を澄ませば、音の動き、うねり、展開の作り方、などなどからたしかに “演奏” している感覚が十分過ぎるほどに伝わってくるパフォーマンスでしたし、出てくる音の強度で全てを語り切れてる、全く物足りなさのない一種の理想形とも言えそうな電子音楽のライブでした。

現在自分がライブやる場合も方法としては同じようにPCで再生したオーディオデータをMIDIコンのフェーダー操作でミックスしていくようなスタイルがメインだったりして、このやり方についてはもうちょっとその場で音自体を生成していくような部分を増やしたほうがいいんじゃないかとか、他にフィジカル機材を組み合わせて手元と音の動きや変化がより直感的に観ている人に伝わるようにしたほうがいいんじゃないかとか、いろいろ考える部分があったんですが、今回のJohn Wieseのパフォーマンスはライブミックスなスタイルでも突き詰めればここまで充足感のある“演奏”として成立させることができるのかと、なんかもの凄く勇気をもらった気がしました。まあ自分は本当にライブパフォーマンスに関しては現状あまりにも下手くそなんでこういう風なこと言っちゃうことすらおこがましいくらいなんですが…。

あと自分は今までアクースモニウムの演奏を聴いたこともないですし、思いっきりミュージックコンクレートって感じの音楽のライブ演奏もほぼ聴いたことないので*1もしかしたら的外れな可能性もあるんですが、今回のJohn Wieseの演奏は今まで自分が観てきた中では最も堂々とミュージックコンクレートだったというか、ミュージックコンクレートっていう音楽の聴きどころ、要所はこういう部分なんだろうと音でしっかりと実感させてくれるものでした。GRM主催のPrésences Électroniqueでも演奏してたりそれが音源化されてることからもこの辺りはまあ当然といえば当然って感じもしますが。

今回の演奏の内容としてもそのPrésences Électroniqueでの演奏を収めた『Escaped Language』に感触は近かったかなと思います。もちろん用いられてる音源は違いますし、その質感も結構変わってたように思いますが。

 

 

 

 あと最後に、もし本投稿を見てからJohn Wieseのライブ行かれる方いらっしゃったら、演奏聴く際にはできるだけ左右のスピーカーの中央で、その音と自分の耳との間に遮蔽物がない状態で聴いたほうがいいです。音の左右への動きやステレオ感をいかした表現がすごく重要な音楽なので片方のスピーカーに極端に寄ったりしてステレオ感が削がれると少なからず魅力が減じてしまうのは確実です。

自分はほぼセンターの位置で前に座っている人がいる中で立ってみることができたので音の動きを俯瞰するように鑑賞できたんですが、もうあと1時間でも2時間でも聴いていたいと心から思える素晴らしいサウンドを味わえました。

 福岡の後は東京、京都、大阪、静岡での公演が予定されています。

 

http://dotsmark.com/news.html

 

*1:ミュージックコンクレートの制作も行っている方のアンビエントだったりドローン寄りのパフォーマンスとかならあるんですが