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LL

2013の13 part.3

2013年の13枚。ラスト3作品を。

 

・John Butcher -Tony Buck- Magda Mayas - Burkhard Stangl『Plume』

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1曲目がJohn Butcher, Tony Buck, Burkhard Stangl 、2曲目がJohn Butcher, Tony Buck, Magda Mayas、ともにトリオによる長尺の演奏を収録。1曲目はやや古く2007年12月、2曲目は2011年4月、どちらもロンドンでのライヴ録音。

共に即興で行われているであろう演奏ですが、両者の趣は明確に異なっていて、1曲目が、静的な部分と動的な部分を行き来し、かっちりとした展開が用意されているのに対して、2曲目では焦点の定まらないような感覚が終始持続し、静動の行き来も、演奏全体の印象も、先を見据えない酩酊的なものに感じられます。

個人的には1曲目の構築性、そこから生まれる原始的なダイナミズムに強く惹かれました。そこに大きく寄与しているのがトニー・バックのドラムで、静的な場面、探り合うような音のやり取りの中にあっても、常に細かな音を周期的に放ち続けることによって、一定の規律を確保し、時にはそれを自ら崩すことで次なる展開の呼び水になり、演奏全体に明確なイニシアチブを発揮しています。

演奏中盤の14分辺り、乱高下しながら空間を縫うソプラノサックスと、高速でばら撒かれる様なドラムのフリージャズ的饗宴は鳥肌モノ。

 

 

 

・John Butcher, Matthew Shipp『At Oto』

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 イギリスの新興レーベルFATAKAよりリリースされたジョン・ブッチャーとマシュー・シップの共演盤。それぞれのソロも収録されているが、やはり目玉は最終曲、29分に及ぶデュオ。 

時に沈殿するような耽美なラインを奏で、時に強烈な打鍵と唸るような和音で空間を埋め尽くし、螺旋階段のように眩暈のする規則性から、エリントン的な遊び心を覗かせる奔放さまで、自在なギアチェンジで時間軸を引っ掻き回すマシュー・シップ。

対するジョン・ブッチャーは、凹凸のあるリズムに呼応するように突発的に音を発したり、持続音で演奏に別のレイヤーを生み出したりと、ある種職人的な対処をみせるのですが、

一瞬たりとも怯まずコラージュ的に眼前を更新し続けるマシュー・シップに触発されてか、躁的に強烈なブローイングに突入する場面も見受けられます。

ジョン・ブッチャーの他作品からはあまり感じられない、熱に浮かされたような脆い快楽性を孕んだ演奏です。素晴らしい。

 

 

 

 ・John Butcher / Thomas Lehn / John Tilbury『Exta』

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 John Butcher(saxophones), Thomas Lehn(synthesizers), John Tilbury(piano)による、上記と同じくイギリスの新興レーベルFATAKAからの作品。

楽器編成やメンバーの指向性から、必然的にアブストラクトな演奏に。

元々音数の多いタイプではないジョン・ティルバリー、いつにも増して特殊奏法中心のジョン・ブッチャー、そして結果的に最もワーカホリックに音を発しているトーマス・レーンも、金属的な発信音の持続や空間をざわつかせるような飛び道具的な音色を多用していて、最初聴いたときはひどく判然としない印象をもちました。

恒常的に鳴っている平板とした電子音と対比されてなのかはわかりませんが、ティルバリーのピアノが持つ耽美性はより増長され、ブッチャーの息音はグロテスクなほど生々しく響き、演奏全体に何かが蠢いているような不穏さが充満しています。

今年出されたジョン・ブッチャーの作品の中でも、今作は彼にしかできない表現を凝縮したようなコアな内容に仕上がっています。故にとっつき難さもあるのですが、電子音を組み込んだ即興演奏ということや、楽器編成などから致し方ないことかと…。

なんだか薄気味悪いジャケ写に魅かれた方など是非。

 

 

【雑記】

2013年は、昨年辺りから聴く頻度が徐々に増えていたフリージャズや即興演奏に初めて本格的にハマッた一年でした。中でもエヴァン・パーカー、ケン・ヴァンダーマーク、マッツ・ガスタフソンなどフリー系サックス奏者のアルバムをよく聴いていたのですが、今年発売の作品の面白さではジョン・ブッチャーが群を抜いてました。

また、旧作品のほうにより強く惹かれたため今回のベストには選出しませんでしたが、イギリスの即興/現音系レーベルAnother Timbreを知ったのも本年で、2012年発表の6枚組『Wandelweiser Und So Weiter』は年間でもっとも繰り返し聴いたように思います。

前半部で多く挙げたアンビエントやドローン、電子音楽については、聴き始めて数年が経過した今でも全く飽きることがなく、この方面への興味は自分の中で固定化されたと言えそうです。

最後に泣く泣く削ることになった次点作品をいくつか、

・Blacksheep『∞-メビウス-』

・Chris Watson『In St Cuthbert's Time』

・Oneohtrix Point Never『R Plus Seven』

・Run the Jewels『Run the Jewels

Ryoji Ikeda『Supercodex』

以上、不慣れなため少しずつの掲載になりました。

ありがとうございました。