LL

Rudresh Mahanthappa 『Bird Calls』

 

 

Bird Calls

Bird Calls

 

 Rdresh Mahanthappa(as), Adam O'Farrill(tp), Matt Mitchell(p),  François Moutin(b), Rudy Royston(ds)

 

試聴はこちら→

https://www.actmusic.com/en/Artists/Rudresh-Mahanthappa/Bird-Calls/Bird-Calls-CD

 

ニューヨークを拠点に活動するインド系アメリカ人のサックス奏者、ルドレシュ・マハンサッパの2015年新作。個人的に現代ジャズのアルトサックス奏者の中では(双頭リーダー作もリリースしている)スティーヴ・リーマンと並んで入れ込んでいる存在で、

屈折したフレージングをブレスのタイミングなどで微妙に表情をつけながらもクールに紡ぐリーマンに対し、フレージングなどでは共通項は感じさせながらも、朗々とした音色であまりフレーズを短く切らずにゴリゴリと吹き進むそのスタイルに陽性な魅力を感じ、今作の発売もとても楽しみにしていました。

 

マハンサッパのリーダー作に対しては、前述したゴリゴリとした吹きっぷりや自身のルーツであるインド的な旋律を多用した作曲からか、快楽性が大きい反面気が休まるところがないというか聴いていて疲れる印象があったのですが、今作はタイトル『Bird Calls』の名を冠した小品的な曲が随所に挟まれるアルバム構成が功を奏したのか初聴時からいつになく聴き心地が良く感じました。

 

その要因としては、直近2作との比較になりますが、大きな存在感を示していたギターの存在がなくなったことでラウドさが減り、オーソドックスなアコースティックジャズ然とした編成によるところが大きいのかなと。

特にピアノのマット・ミッチェルの演奏が効いていて、マハンサッパやトランペットのアダム・オファーリル(初耳だったのですがまるでマハンサッパの演奏をトランペットに写し取ったように聴こえる瞬間も多く驚きました。)の互いにイメージの一致したソロの後ろで、曲中の時間経過に従い徐々にアウトしていくようなプレイ(4、6曲目など)が、朗らかな曲調ゆえにダレそうなところに適度に緊張感を与えているほか、

熱量のある演奏の中に音を足しているにも関わらずまるで風通しが良くなったような印象まで作り出しているのが、聴き心地という面で大きく貢献していると感じます。

 

他にも7曲目の高速のソロ回しの中でのガツガツした弾きっぷりや、11曲目でフィーチャーされる優雅なソロピアノなど聴きどころ多く多彩で、この人はシンプルなピアノトリオなどでの演奏も聴いてみたいなと思わせられました。

 

また、マハンサッパとピアニストというワードでまず思い起こされるのは、互いのリーダー作に参加しあい多くのアルバムを制作したVijay Iyerの存在であり、

まるで互いにとってのその存在の大きさを物語るかのように、両者の現時点での最後の共演作である Vijay Iyer『Tragicomic』(2008年) 以降、マハンサッパはピアニストを、アイヤーはサキソフォニストを、少なくともそれぞれのリーダー作では起用していなかった(唯一の例外がマハンサッパとバンキー・グリーンによる双頭リーダー作におけるジェイソン・モラン)のですが、

それを打ち破るかたちで起用されたマット・ミッチェルにはマハンサッパの目にかなう何かがあったはずですし、そこから今作にかける意気込みや自信も感じ取れる気がします。

 

このメンバーがレギュラー化するかは分かりませんが、今作の初めてとは思えないまとまりのある演奏にはそれを期待してしまいますし(買ってからかなりの頻度で聴いていますし傑作と言っていいと思います)、

同時期にECMという、ある種マハンサッパの音楽性が馴染まないようなレーベルからレギュラートリオの新作を出したVijay Iyerとの再共演がしばらく望めなさそうな現状(二人は袂を分かったのか?)でもあるので、この辺りでしばらく腰を据えてひとつのグループで表現を深めるのも良いのではないかと思うところですね。