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Common Objects 『Whitewashed With Lines』 その2

 

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Another TimbereのHP上のCommon Objects『Whitewashed With Lines』についての文章をtimanyamaaaさんに訳していただきました。併せて是非。

 

以下、訳文(訳: timanyamaaa / 原文: 

http://www.anothertimbre.com/commonobjects.html

 

ウェールズ出身の即興演奏家でありハープ奏者でもあるRhodri Daviesが杯状穴*と最初に出逢ったのは2007年のことで、HALF LIFEというイベントに取り組んでいるときだったようです。

* 原文では「cup and ring marked stones」だが、以下すべて「杯状穴」とする

このイベントはThe National Theatre of ScotlandとNVAという、二つの機関によって開催されたもので、 サウンドキュレーションにはBarry Essonが関わりました。

Rhodri DaviesとAngharad Daviesはこのイベントにおける演奏のため、およそ2週間ほど、スコットランド西部はアーガイルのキルマーティンという小さな村付近に広がる森林や暗闇の中で音楽を演奏し、作曲をしたとのこと。

キルマーティン村には杯状穴をはじめ、先史時代に起源を持つとみられる遺跡が豊富にあることで知られており、半径約10km以内に350以上もの史跡があるともいわれています。

同じくHALF LIFEに参加したLee Pattersonもまた同様に、Toshiya Tsunodaとサウンドアートインスタレーションを、このキルマーティン付近で製作していたようです。

このとき、NVAのクリエイティブディレクターでありTest DeptのメンバーでもあるAngus Farquharは、Rhodri Daviesたちを色々な史跡などに連れていってあげたようで、Angus Farquharの抱く新石器時代に対しての熱狂に、Rhodri Daviesも影響されたところが大いにあると語っています。

Rhodri DaviesはHALF LIFEが成功裡に終わると、ノース・イースト・イングランド (North East of England)に移り住みました。彼によると、数多くの史跡のそばで暮らせるということに非常に心躍るような気持ちだったようです。

さらに、Rebecca Shatwellとの共演、そしてAV Festival 2014への参加によって、それらの史跡に対する関心はより深まっていったとのことで、とりわけ

・アルバム『Routing Lynn』に参加してJohn Butcherと共演したこと

・グループであるCommon Objectsのために書き上げた楽曲である「cup and ring」の図形楽譜 (この曲はディスク1に収録されています)

以上の2点によってますます深められていったと述べています。

ちなみに、彼によると、90年代半ばにサウンドポエットであるBob Cobbingと邂逅したことを皮切りに、Sound and Concrete Poetryや、脳内イメージを音に変換していくプロセスなどに惹かれていったとのこと。

以来、彼が手掛ける楽曲の数多くには図形楽譜が伴われることとなりました。

ところで、杯状穴を初めて目にしたとき、彼は「これは図形楽譜にとって格好の素材になるな」という思いを抱いたようです。

この謎めいたシンボル群が何を意味しており、どのような役割を果たしていたのかということについてはいまだ分かっておらず、決定版と呼べるような解釈がありません。

つまり、そこには数多くの解釈や意味付けが存在しているのです。その事実こそが、オープンスコアにはうってつけのインスピレーションになったのだとRhodri Daviesは語っています。

AV Festival 2014の一環として、The Mining Institute in Newcastleという場所で演奏された 「cup and ring」のパフォーマンスには異様なくらいのエネルギーが満ちており、そのオーラとでもいうべきものは身振り手振りなどによって音楽に積極的に参与してくれた聴衆によって、さらに高められていったのではないかというのが彼の所見。この模様こそ、本アルバムのディスク1に収録されているものです。

これらの楽曲の楽譜を作成する上で参考となった書物は多いようで、例えば、1891年にA. Reader社から出版された作者不詳の『Archaic Rock Inscriptions: An Account of the Cup & Ring Markings on the Sculptured Stones of the Old and New Worlds』という書物や、岩石の研究ではその道のパイオニア的な存在であるStan Beckensallによる数々の書物などからインスピレーションを得たようです。

また、ディスク2に収録されている「repose and vertigo」という集団即興のナンバーは、「cup and ring」よりも1年ほど前にノース・イースト・イングランドで演奏されたもの。

きっかけはAndy Hamiltonという人がデイヴィスに、Senate HouseにあるDurham Universityで、とあるシンポジウムを共同主催しないかという話を持ち掛けたことでした。

結果、シンポジウムの一環としてCommon Objectsは演奏することとなったわけです。ちなみに、シンポジウムのテーマは「不完全の美学 (Aesthetics of Imperfection)」というもの。

以上、今回のリリースで世に送り出される二つのコンサートによってわたしたちにつまびらかにされるのは、

・オープン図形楽譜の解釈

・集団即興

という異なる2タイプの音楽作りであるとRhodri Daviesは述べています。

両コンサートともに同じメンバーで演奏されてはいますが、使用する楽器が微妙に異なっていたり、演奏場所の音響効果が多少なりとも違っていたりするので、それぞれの演奏が互いにコントラストとなり、その微妙な差異がわたしたち聴き手に感じられやすくなればいいと、Rhodri Davies自身は望んでいるようです。

HALF LIFEについては→https://m.facebook.com/302851151270/posts/10151038107841271/