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Best of 2015 (30→16)

2015年の年間ベスト、今回は30位から16位までの15作品です。

50位から31位まではこちら

画像がYoutubeなどの試聴音源へのリンクになっています。

 

 

【30】TRIAC『Days』

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今年のアンビエント/ドローン的な作品ではHakobune『Love Knows Where』と並んでよく聴いた作品。12Kの作品もいいのあったんですけど、そのどれよりLINEから出たこれが気に入りました。個人的に今年は12KよりLINEの年、でしたね。

 

 

【29】Michael Pisaro - Cristián Alvear『Melody, Silence (For Solo Guitar)』

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現代音楽や即興音楽の分野で活動するチリ生まれのギタリストCristián Alvearによる米国の作曲家マイケル・ピサロの作品「Melody, Silence」の演奏。12のパートからなり、それらを自由な順番で演奏することができるとのこと。簡素な和音とメロディー、E-Bowによるドローン、無音、の3つのパートで成り立った美しいギター曲です。非常にゆっくり立ち上がるドローンや長く無音が続くパートもあるのですが、それらの時間はおそらく演奏者の任意ではないかと。和音、メロディーの部分に関してはこの曲の演奏経験がある杉本拓さんのツイートによると五線譜に書いてあるそう。パートの並び替えや長さなど時間軸上の操作を演奏者に委ねることで、その操作の違いによって音楽の聴こえ方がどう変わってくるかとか、そういったところに焦点を当てた作品なのかも。個人的にはなによりソロギターのための静謐で長尺の楽曲(本演奏では46分)というのが新鮮でした。和音とメロディーのパートには淡い郷愁感のようなものを感じるんだけど、これがピアノで演奏されたものだったら随分印象も異なっていたのではないかな(もっと無機質に聴こえそう)。あとこれとTRIAC『Days』、全然違った音楽ですけど、どちらも同じくらいの濃度で“ラテンっぽさ”を感じる音楽だなと思ったり。

 

 

【28】Virginia Genta, Dag Stiberg, Jon Wesseltoft, David Vanzan『Det Kritiske Punkt』

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数日前に届いたばかりの今年最後の大捕り物。最高にやかましいフリージャズです。とにかく冒頭からVirginia Gentaの吹きっぷりが最高。でもこのアルバム、どこかサラッと聴けてしまう軽さみたいなものもあって、しかめっ面で演奏する姿がすぐ思い浮かぶような観念的で重々しい雰囲気が一切ないんですよね。こんだけ吹きまくり弾きまくり叩きまくりの熱のある演奏でも、そこに「スタイル」以上の価値を感じさせないようなところがある気がします。個人的にはそれはすごく重要なことで(何かしらのイデオロギーがついてまわったり、その発生装置と化している音楽ってどちらかというと苦手なので…)、そのドライさがあるからこそ、こういうスタイルの、ものすごくカッコいいものだってこと以外を何も考えずに楽しむことができました。

 

 

【27】Sam Prekop『The Republic』

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The Sea and Cakeのフロントマンの2010年以来のソロアルバム。モジュラーシンセを用いて制作されたアルバム。アルバム前半に収録された「The Republic 1~9」というタイトルのインスタレーション用の音源がとてもいい。モジュラーシンセを用いて制作された作品って、それまでの自らの作風は一旦置いて目の前の機材と戯れたようなものと、自分の音楽を維持してあくまでその中の一要素として扱ったものがあると思うんですけど(このタイプはモジュラーシンセ以外の機材も同時に用いることが多い印象)、今作はモジュラーシンセのみを用いているにも関わらずその音に自身の作家性を封じ込めることができているように思います。

 

 

【26】Nick Fraser『Too Many Continents』

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トニー・マラビーとクリス・デイヴィスの演奏がたっぷり聴けるすごくオレ得なアルバム。サックス、コード楽器、ドラムって編成は、それぞれと共演歴もある面子で構成されたTom Rainey Trioと近いとも言えそう。音楽の成り立ちもそう言えるかも。そのTom Rainey Trioも今年アルバム『Hotel Grief』出してたんだけど、私はこっちがより好みでした。フリーキーな音楽なんだけど、リラックスして演奏してる感じもあってなぜかとても聴きやすいのでリピートして聴けるってのが大きい。トニー・マラビーはテナーはいつもより自然体で、ソプラノはよりアグレッシブに吹いてる印象で、ソプラノにいたっては相当積極的に変な音出してるんだけど、ジャズ寄りの奏者でソプラノでこういう表現する(できる)人ってすごく珍しい気がする。ロスコー・ミッチェルくらいしか思い浮かばない(即興系ならエヴァン・パーカーとかジョン・ブッチャーとかいっぱいいるけど)。

 

 

【25】Visionist『Safe』

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全然セーフじゃない完全にアウトなベストオブ顔ジャケ2015。インストグライムの存在を私個人に知らしめてくれた偉大な作品です。爆撃を連想させるようなビートだったりアジテーティヴに感じられる部分と、声ネタとかのミステリアス?なのか多少ふざけているようにも聴こえる部分が混在してて、で、このジャケだし、なんか謎なセンスの持ち主だなって思います。PANから出たってのも重要(じゃなかったら多分手に取ってないと思う)、そこも併せて表彰したい。

 

 

【24】Vijay Iyer『Break Stuff』

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最初はちょっと地味なアルバムかなって印象だったんですけど、気付いたらこのトリオのアルバムでファーストチョイスになってました。デトロイト・テクノの重鎮ロバート・フッドの名を冠した4曲目「Hood」はその名に恥じぬミニマリズムとグルーヴを彼ららしい幾何学模様を思わせる音の組み合わせで完璧に表現した名曲名演だと思うし(この曲の中毒性たるや…)、コルトレーン作の「Countdown」でのマーカス・ギルモアの叩きっぷりには心底惚れ惚れするしで最高。あとECMのレーベルカラーに合わせてか静謐な楽曲も多いんですけどそれがまたどれもいい。

 

 

 【23】Rema Hasumi『UTAZATA』

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感想こちら(のページの下のほう)にあります。  

 

 

【22】Kode9『Nothing』

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Hyperdub主宰のソロでは初アルバムらしいです。ダブステップの人ってイメージだったんですけど、これはジューク/フットワークだったりグライムだったりの影響がより色濃く感じられるビート集。現在進行形のビート/ベースミュージックを渡り歩くような多彩さ、遊び心あるのに洗練された感じもあって(ズレ、モタり、つんのめるようなタイム感の操作も決してしつこくならない)、聴き心地は軽いのに軽薄ではないっていう、とにかく反則的にセンスがいい!特別なことはしていないように聴こえるんだけど、音を時間軸上に記す点として扱って、それをどこに置くか、どう重ねるか、そしてどう繋ぐかっていう、シーケンスを“組む”ことの可能性や楽しさが伝わる作品だと思います。

 

 

【21】Kendrick Lamar『To Pimp A Butterfly』

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音楽的な論点、政治的な論点、色んな方向から語りようがあるんでしょうけど、個人的なハイライトは「i」のアルバムバージョンで炸裂してるふなっしー的なフロウ。しょーもない気がしますけどそこが最高なんですすみません。「u」の前半や「The Blacker The Berry」のシリアスなラップ、まんまレディヘのピラミッド・ソングな「How Much A Dollar Cost」、「Complexion」の後半のJディラ的なビートなどなど他にもたくさん聴きどころあるしやっぱ傑作ですよ。2015年を代表する、とか、今後のブラック・ミュージックの方向性をなんたらとか、そういったことは置いといて、かっこいいヒップホップのアルバム(のひとつ)として大事にしていきたいな。

 

 

【20】tricot『AND』

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ソリッドなギターサウンドと変拍子を多用したリフ中心(ストロークに一捻りあるコードリフだったり歌メロの裏で複雑に動く単音のラインだったり多彩なのでリフって一言で表してしまっていいのかは微妙ですが…)の曲作りがまずかっこよくて、マスロック化したナンバーガールみたいにも聴こえたんですけど、考えてみるとマスロックってあんまりちゃんと聴いてないし、ナンバーガールはひと通り聴いてるけど実はそれほどハマらなかったってのが正直なところだったりするし…っていう個人的な経緯もあってかとても新鮮でした。で、このバンド、そういった曲の構造的な面白さだったり凝った演奏の部分がまず語られるべきところなんだろうなって思うんですが、そういった技巧的な面を歌メロの力(=エモさ!)が助走つけて飛び越えていくような瞬間が多々あってそれがどうしようもなくまた魅力的。声張り上げて荒っぽく歌うところなんか本当にいい。最後の曲「Break」は歌詞といい曲調といいニクいくらいにこのアルバムのラストに相応しくて、輝いて聴こえます。

 

 

【19】Hakobune『Love Knows Where』

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言わずと知れた日本を代表すると言ってもいいレベルのアンビエント/ドローン作家だけど、個人的にはそれほど多く作品を聴いているわけではなくて、これだ!と思う決定的な作品にもまだ出会えてない感じがあったんだけど(強いて言うならPleqとの共作『Adrift』が好き)、これは遂にキました。私はアンビエント/ドローンにはそれほど叙情性は必要ないと思ってるというか、扱いに注意しなければならないと思っていて、センチメンタルに流れ過ぎた“ドローン”としての硬派さを失ったアンビエントってもはや“それ風”のなにかにしか聴こえなくて嫌いなんですが(アンビエント/ドローンの“ドローン”の部分を重く見ているってことだと思います)、これはそういった硬派さを失わず叙情性をドローンの中に見事に溶かし込んでいるように聴こえてめちゃくちゃハマりました。これはある方がブログで紹介してて知ったんですけど、完全に予想上回る出来で、もう本当にあの記事書いてくれてありがとうございました。

 

 

【18】Grischa Lichtenberger『LA DEMEURE; il y a péril en la demeure』

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今年のRaster-Notonは結構好きなの多かったんですけど一番はこれでした。一曲目「1 B Palcamp Rm」のもう完全にヒップホップじゃんっていうようなモタったビートから最高。金属的なグリッチ音が飛び交う5曲目や前のめりなビートと細かくて速いエディットで押し切る6曲目もかっこいいし、極めつけは最も複雑に音が重なり合う9曲目「Cl Vb 2_v2」。この人の音ってインダストリアルさを感じるところもあるんだけど、それは切迫感を持ったリアルで退廃的な臭いのするタイプのものではなくて、なんというかSF臭のするような誇大妄想的でロマンチックなタイプのものである気がして、そんな彼の頭の中にだけある物質が目の前で組み上がって巨大な何かが姿を現すような、そんな曲になってます(←こんな妄想をしたくなる曲になってますw)。1stより随分コンパクトな作品になったのもあってリピートしまくりました。

 

 

【17】Stephen Cornford『Kinetic Sculptures』

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もはや一般的な意味での音楽家の範疇には収まりきらなくなってる感のあるスティーヴン・コンフォードの過去作品集+αな内容のアルバム。インスタレーションと言ってもいいような装置(あえて楽器とは言わない)が発する即物的な音の記録。特にこのアルバムは物音やノイズというよりはドローンやアンビエントに近いような持続音が多く収録されていて、頭脳労働の後みたいな、頭使って首肩凝って疲れたなーって時に聴くと、物質的な音がただただ頭と身体を通り抜けていく感じがとても心地いい。

 

 

【16】France Jobin + Fabio Perletta『Mirror Neurons』

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フランス・ジョビンは寡黙な作風のわりに結構リリースは多くて、本名名義で活動するようになったここ数年は年に一枚くらいのペースで出してると思うし、そのどれも年間ベストに入れるか迷うくらいに気に入ってるんだけど、今年はまた作風の近いFabio Perlettaと組んで格別にいいの出してくれました。France Jobinは特に本名名義で活動するようになってからは(元々はi8uって名前で活動してた)、それまでのロウアーケースからの影響を感じさせるサウンドアート寄りな作風から徐々により音楽的というか情感豊かなアンビエント/ドローン的な方向性へシフトしていってる感じだったんだけど(そしてその方向性の到達点が去年の『sans repères』かなと思うんだけど)、今作は「共感と物理的な距離の概念を調査するメディアプロジェクト」の一環として制作されたという経緯が示すようにサウンドアート的な側面が強い作品。透明な素材でできたオルガンの響きのような澄んだドローンに身体が消えてなくなるほど浄化される。