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LL

トルネード竜巻『ふれるときこえ』

2016年、最初に聴いたアルバムはこれでした。

 

 

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2009年より現在まで活動休止中のバンド、トルネード竜巻のセカンド・アルバム。このバンドには2008か2009年辺りに、スーパーカーやSCLLなどのバンドが好きでそれらに近い音楽性のバンドを探していく中で出会って、1st、2ndどちらも買って聴いていたのですが、いまいちハマれなかったんですよね…。でも昨年末にちょっとしたきっかけで聴き返してみたところすごく良くて。いろいろと思うところもあったのでなんか書いとこうかなーと。

なんか捻くれたインディーバンド然としたバンド名ですが、音楽的にはポップスと言ったほうがしっくりくる感じ。“ジャンルを超越した音楽性”というのがこのバンドを語る際には多く用いられるセンテンスらしいのですが、今作は1st『アラートボックス』に比べるとそういった作編曲における遊びが表立って印象に残る部分は少なく、さりげなく洗練されたかたちで生かされている印象です。私はそれによって普遍的なポップスとしての強度が増していると感じますが、1stやそれ以前からのファンの方には好みは分かれるところかもしれませんね。また“ポップスといったほうがしっくりくる”理由は録音の質感も大きいのかなと。その辺の事情にはあまり詳しくないですけど、Jポップとかアニソンとかの録音でよく感じるようなちょっとキツいくらいの音のクリアさとか、近くで鳴ってる感じが強いんですよね。自分は例えばスーパーカーだったら(それが理由ってわけじゃないですが)最も宅録感のあるセカンドが一番好きだったりしますし、SCLLも冷たすぎも温かすぎもしないリバービーな質感のサウンドに惹かれてた面はあったと思うので、その流れで聴いたこのバンドにもそれに近いサウンドを無意識に求めていたのが当時ハマれなかった一因なのかなとか、今になると思います。

個人的な話が長くなってしまいましたね…。音楽の中身にも触れときたいと思います。やっぱ一番印象に残るのはボーカルの声、歌い方かな。平易な言葉で書かれた歌詞を丁寧に歌うは様はなんか“うたのおねえさん”っぽいというか、誤魔化しがないんですよね、歌に。作曲はキーボードの方がほとんどらしいですが、自分が作曲者の立場だったらこれほどメロディーを一音一音クッキリ歌われるのはちょっと恐いと思う…。アレンジの面は凝ってるのかもしれないけど、核となるメロディーの提示の仕方に関しては裸で仁王立ちじゃないですけど、真っすぐブレずにこちらを見つめてくる。話がまた2008年辺りに戻っちゃいますけど、当時の自分はこの歌い方も多分ダメだったんだろうな…。ナカコーにしろSCLLの大坪さんにしろ、そのメロディーラインの誤魔化し方というか、歌い方による味付け方は特徴的だし。その辺りのバンドの音や声が醸し出す“曖昧”さみたいなものとは、このトルネード竜巻の音楽はちょっと距離があるように思います。自分の好みがその頃と大きく変わったとも思わないんですが、当時それなりに聴き込んでもピンとこなかったのが今は大丈夫になったのはタイミングがよかったからなのかなんなのか…理由はわからないですけど音楽ってこういうこと起こるから不思議ですね。

あとこのアルバムは12曲入りなんですけど、前半(1~6曲目)と後半(7~12曲目)で結構雰囲気が違ってて、特に前半が素晴らしい。後半の曲群は遊び心を感じさせる曲調の飛躍(7曲目)だったり、ゆるい世界観の歌詞(8曲目)だったり、シングル曲(『アラートボックス』収録の「恋にことば」や本作収録の「パークサイドは夢の中」)などで顕著なイチニノサンで飛び込むような(NHK亀田音楽専門学校』で“サビ前のジャンプ台”と形容されていたような)王道ポップスなサビへの導入など、これまでの彼らを特徴付けてきた要素が多く出てきますけど、前半はそれらより“新しい魅力”と言っていいかはわからないですけど、違う面が印象強くて、それは何かっていうと“リピテーション”ですね。前半の曲の中で唯一のシングル曲「言葉のすきま」や3曲目「サンデイ」のリフレインの先に見えてくるような、螺旋階段をグルグルと上って行き着くようなサビへの到りかたは、先述したようなイチニノサンで飛び込むようなものとは違ってますね。4曲目「君の家まで9キロメートル」と6曲目「あなたのこと」はほとんど淡々としたメロディーの繰り返しのみで成り立っているような曲ですし、そんな進行感に乏しい曲調の中で「リアルなんてのはこんなもんさ」と歌われる4曲目なんか間違いなくハイライトでしょう。6曲目も淡々とした曲調ゆえにか、間奏のギター(ただジャーンとコード鳴らした後にアルペジオ弾いてるだけ)が異様にかっこよく響きます。

こういった“反復”を中心に組み立てられた、流れていくようなポップミュージックって個人的にめちゃくちゃ好きなところでもありますし、これまでの彼らがその音楽的な飛躍やそれを可能にする運動神経など、いわばコーダルな面で評価を受けてきたとするなら、今作はその場にたたずんで語るようなモーダルな面、その魅力がそれをパワーバランス的に上回っている作品と言えるんじゃないかと。歌詞の面でも前半の曲はちょっと息苦しいくらいのトーンで人を思う際の心象風景を描いたものが多くて、この感じで最後まで通してたらもっと凄いことになってたんじゃないかとか思ってしまいますね。まぁそれだと重いアルバムになってた可能性もありますけど。