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今月のお気に入り(2018年7月)

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・Nitai Hershkovits『New Place Always』

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・Donny McCaslin『Beyond Now』

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Loren Connors『Angels That Fall』

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・Leo Okagawa『Tiny Portraits』

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・Mika Vainio『Lydspor One & Two (Blue TB7 Series)』

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・Justin Brown『Nyeusi』

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・Kristjan Randalu『Absence』

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・Zeitkratzer, Carlsten Nikolai『Electronics』

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・Farben, James Din A4『Farben presents James DIN A4』

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・David Binney『Here & Now』

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・Gianluca Favaron『Variations (Fragments of Evanescent Memories)』

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・Claudio F Baroni『Motum』

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・Various Artists『Music of Northern Laos』

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・Luigi Nono『Seguente』

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Alan Lamb『Primal Image / Beauty』

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・Enore Zaffiri『Musica Per Un Anno, March 28th, 6 P.M.』

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三浦大知『球体』

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・Jozef Dumoulin & Orca Noise Unit『A Bigginer's Guide To Diving And Flying』

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・Otis Sandsjö『Y-OTIS』

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・Dick Raaijmakers『The Complete Tape Music Of Dick Raaijmakers』

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・Stephanos Vassiliadis『En Piry / Bacchae』

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・Various Artists『Feedback: Order from Noise』

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・Opéra Mort『Film Works』

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・The Internet『Hive Mind』

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・Gruppo Di Improvvisazione Nuova Consonanza『Gruppo Di Improvvisazione Nuova Consonanza』

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・Dystil『Dystil』

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・Chevel『In A Rush And Mercurial

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・Josiah Steinbrick『Meeting of Waters』

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・Quatuor Diotima『Reinhold Friedl: String Quartets』

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・Girolamo De Simone『Shama』

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浅井健一 & THE INTERCHANGE KILLS『Sugar』

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2018上半期ベスト

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 みんな大好き(もちろん私も)上半期ベストです。今回は25枚選び順位をつけました。ストリーミングで聴く割合がグッと増えたことも関係して例年より聴いた作品数は多めな反面、(あくまで回数的な意味でですが)聴き込むといったことがあまりできなかった半期だったかもしれません。なのでリスナーとしての焦点がぼやけていたのか、盤選こそスムーズにいったものの順位でとても悩みました(書きながら何度も入れ替えました)。しかしそれ故にここで示されている順位は自分の今のモードやリスナーとしての態度を改めて考え整理し、提示するものになっています。では、どうぞ。

*画像クリックでbandcampやyoutubeなどの試聴サイトへ飛びます。あと記事の最後にSpotifyプレイリスト貼ってあるんでまずそちらの再生ボタン押してから読むのもオススメです。

 

 

25. EP-4 [fn.ψ]『Obliques』

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エクスペリメンタル・アンビエント。シンセから発せられるあらゆる種類の音が融解しオーケストラ化したようなダイナミックな仕上がり。ライブ録音。

 

 

24. Francisco Meirino & Bruno Duplant『Dedans / Dehors』

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ミュージック・コンクレート。ノイズ/コンクレート的な作風が特徴のスイスのサウンドアーティストのフランシスコ・メイリノと、フィールドレコーディングから作曲作品まで幅広い手法を用いて活動するフランスの音楽家ブルーノ・デュプランによる共作。話し声や足音など人がたてる日常的な音が多く用いられたミュージック・コンクレートとなっておりこの二者が関わった作品の中では風通しのいい仕上がりに思える。ジリジリとした高域の電子ノイズやドアベルのような音が印象的に用いられた1、2曲目が特に好み。(3曲目も基本的には同様の作風だけど出だしがやたらノイジー

 

 

23. Lucy Railton『Paradise 94』

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電子音楽/ミュージック・コンクレート。ECMの作品(彼女は本年リリースされた『Lucus』も素晴らしかったThomas Strønen Time Is A Blind Guideのメンバー)やRussell Haswellのトラックにも参加した経歴があるというチェロ奏者のデビュー作。チェロの演奏も用いられているが、それは他の環境音や電子音、ノイズなどと同列にコンクレート的な感覚で扱われている印象で、作品としては電子音楽としての趣が強い。

 

 

22. Sleep『The Sciences』

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ストーナーロック/ドゥームメタルアメリカのバンドによる約20年ぶりの新作。

 

 

21. A$AP Rocky『Testing』

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ヒップホップ。今年の上半期はヒップホップの話題作多かったけど個人的にはこれが一番だった。

 

 

20. Christian Lillingers Grund『C O R』

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抽象的でスリリングなジャズ。ドイツのドラマー/作曲家クリスチャン・リリンガーによるユニットの作品。編成は2人のサックス(及びクラリネット)奏者、ピアノ(またはフェンダーローズ)、ヴィブラフォン、2本のベース、ドラム。フリーやインプロなどでの活動も精力的に行っている面々ですが、本作では作曲と即興の縫い目を攻めるような場面が多く危うい魅力に溢れた一枚。ツインベースとローズの組み合わせとかすごいかっこいい。

 

 

19. Melaine Dalibert『Musique pour le lever du jour』

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現代音楽。フランスのピアニスト/作曲家による長尺のピアノ作品。この人は昨年Another Timbreから出したアルバム『Ressac』も素晴らしかったが、本作もそちらに収められている楽曲と傾向は近く、規則的な歩みを思わせるミニマルなリズムと、螺旋階段をイメージさせるような変化とも循環とも認識されるような音階の扱いが大きな特徴。そのうえでそこで用いられる音階がより和声的に透明度の高いものになっていて簡素な美しさが際立った内容になっている。ちなみにアートワークはDavid Sylvianによるもの。

 

 

18. MABUTA『Welcome to This World』

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南アフリカのジャズ。②などではアフリカ音楽のエッセンスをしっかり垣間見せながらも作品トータルとしてはそこだけに焦点が当てられているわけではなく、UK、USをはじめ様々な現行の様々なジャズをよく研究していることが伺える完成度の高い作品になっている。特に楽曲が展開する瞬間がかっこいい。

 

 

17. Richard Chartier『Central (for M.Vainio)』

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電子音響/ドローン。昨年他界したフィンランド電子音楽家ミカ・ヴァイニオに捧げられた作品。実験的な作風で知られるリチャード・シャルティエだが本作は彼の諸作の中ではストレートにドローン的な作風で、扁平なオシレーターのトーンやザラついたノイズの持続が心地いい。リバーブの使用が効果的。

 

 

16. morgan evans-weiler『iterations & environments』

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現代音楽。米国ボストン在住の作曲家でありヴァイオリンとエレクトロニクスの演奏家でもあるモーガンエヴァンス・ウェイラーの作品。35分ほどのヴァイオリンのための作品と20分ほどのピアノとエレクトロニクスのための作品を収録。複数本のヴァイオリンがオーバーダビングされた1曲目の擦れた持続音の連なりやその中から浮き上がってくるような倍音はHarley Gaberの作品を思わせる。

 

 

15. YoshimiO, Susie Ibarra, Robert Aiki Aubrey Rowe『Flower of Sulphur』

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プリミティブな即興演奏。BoredomsOOIOOなどの活動で知られるマルチ楽器奏者YoshimiO、ジャズや即興の分野で活動する打楽器奏者のスージー・イバーラ、モジュラーシンセと声を用いたパフォーマンスやハリー・ベルトイアの音響彫刻を用いた作品などで近年注目を集めている音楽家ロバート・アイキ・オーブリー・ロウのコラボレーション作品。

 

 

14. Pali Meursault『Stridulations』

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電子音楽実験音楽。フィールドレコーディング的な手法を用いコンセプチュアルなサウンドアート作品を多くリリースしているフランスのアーティストPali Meursaultの作品。本作は虫の鳴き声と蛍光灯チューブの音(?)を用い自然と機械の間に存在する奇妙な音の親和性を探るといったコンセプト。どのようなシステムで作られているのかわからないけど、虫の鳴き声にブチブチといったノイズや低い周波数の持続音など多様な音が行き交い非常に楽しい電子音楽として聴ける。

  

 

13. Mary Halvorson『Code Girl』

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風変わりなジャズ(?)。近年のジャズの中でもその個性的な音楽性で際だって評価されているギタリスト/作曲家のメアリー・ハルヴァーソンの作品。本作は彼女とマイケル・フォルマネク、トマ・フジワラからなるギタートリオ「Thumbscrew」にトランペッターのアンブローズ・アキンムシーレ、ヴォーカリストアミルサ・キダンビを加えた新バンド「Code Girl」としての初作品。素っ頓狂ともいえる音程の足取りがなぜかチャーミングさや奇妙なポップさを感じさせる独特なコンポジション、乾いたアコースティックライクなトーンでペコペコと紡がれる単音のラインやディレイを用いたテープの早送り巻き戻しを思わせるエフェクティブな演奏が耳を引くギタースタイルなど、これまでの作品で感じられていた彼女らしさに加え、今作ではヴォーカリストの参加とメロディアスな演奏に秀でたアンブローズ・アキンムシーレの存在により彼女の音楽が備えていた歌謡性がグッと引き出され、声が器楽的な機能を果たし歌モノとは異なるバランスの音楽が形成される場面やアブストラクトな即興の場面もポップに耳に届いてくる。

 

 

12. BES & ISSUGI『VIRIDIAN SHOOT』

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ヒップホップ。SWANKY SWIPEやSCARSでの活動でも知られるラッパーBESと16FLIP名義でビートメイクも行うラッパーISSUGIのコラボ作。NYのプロデューサーGWOP SULLIVANが多くを提供したシンプルかつツボを押さえたサンプリングビート(最近はこういうのブーンバップっていうみたい)の応酬がとにかく心地いい。

 

 

11. cero『POLY LIFE MULTI SOUL』

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ポップ・ミュージック。「魚の骨 鳥の羽」とか「Waters」とか本当によく聴いた。あとインスト版がやたらかっこいい。リズム面の創意工夫(特にポリリズムの扱い)がまず耳を引くし、自分もそこに大きな魅力を感じてるのはたしかなんだけど、それだけでなく演奏の中でのちょっとしたフレージングひとつから音楽的な豊かさが溢れ出るように感じられる瞬間が多くて本当に聴いてて楽しい。インスト版だとそれがよりはっきりとわかる。

 

 

10. Rafiq Bhatia『Breaking English』

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ジャズを起点にインディーロックの分野などでも活動するギタリストによる作品。前作『Yes It Will』はヴィジェイ・アイヤー、ビリー・ハートなどが参加したエッジーなコンテンポラリージャズ作品だったが、今作はジャズ的なアドリブスペースを減らしコンポジションに焦点が当てられ、声や微分音を多く用いたストリングスなどのゲスト陣の演奏、自ら行う音響処理などのサウンドメイキングといった様々な面で響きの探求精神が発揮されたチャレンジングな内容。特にベン・フロストやティム・ヘッカーをフェイヴァリットに挙げ、大きな影響を受けたという電子的な音の扱いと器楽とのミックスのセンスが素晴らしく本年屈指の話題作となるのも納得。個人的にはUntitled Medeleyでインタビューを担当させていただいた経緯もあり特に今年特に聴き込んだ一枚。聴けば聴くほどに違った聴きどころが見つかる多面的な魅力や音楽的な深みがある作品のように思います。

 

 

9. Jan Jelinek『Zwischen』

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エクスペリメンタルな電子音楽/コラージュ。クリックハウスエレクトロニカ期の名盤『Loop-Finding-Jazz-Records』で知られるドイツの電子音楽家ヤン・イェリネックの本名義では12年ぶりとなるアルバム。英語で「between」を意味するタイトル通りジョン・ケージレディ・ガガオノ・ヨーコなどのインタビュー音声から言葉と言葉の間や言い澱みの瞬間のみを抜き出し電子音と掛け合わせたコラージュ的な内容で、仕上がりとしてはGESELLSCHAFT ZUR EMANZIPATION DES SAMPLES名義で発表していた作品に近い。1つのアイデアのみで作った小品集のような趣のアルバムだが、意味を成す直前のある種のゴーストのようなサンプルが含む吃音やブレスなどの音響的な情報の豊かさが異様なほど官能的に響いてくる、音楽的に充実した傑作となっている。

余談だが(?)彼のキャリアに関してはRAの記事が詳しいので興味のある方は是非。本作についても少し触れられています。

 

 

8. Peter Evans & Weasel Walter『Poisonous』

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アヴァンギャルドなジャズ。現代のジャズ/即興界隈で随一のトランペッターであるピーター・エヴァンスと、ハードコアの影響などが伺えるインディペンデントな活動、粗い音質へのこだわり、そして徹底的にラウドなプレイスタイルが特徴のドラム奏者ウィーゼル・ウォルターによるデュオ作。アヴァンギャルドなジャズっていう形容がここまで似合う音もなかなかないなってくらい痛快さ極まった演奏。ちょっとPeter Brotzmannの『Machine Gun』を想起したりも。こっちはたった二人での演奏なのに…。ピーター・エヴァンスは同じく今年リリースしたCory Smytheとのデュオ作『Weatherbird』も大変素晴らしくどちらを入れようか、というかどちらも入れてしまおうか、と非常に悩ましかった。

 

 

7. Leon Vynehall『Nothing Is Still』

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ラウンジ/クラブ/エクスペリメンタル。UKのエレクトロニック・ミュージックのプロデューサーでありDJのレオン・ヴァインホールの初のフルアルバム。ディープハウスやダウンテンポをはじめ現代的なブーミーなサウンドも織り交ぜつつ、それらをストリングスやたゆたうようなシンセで纏い、硬派なエレクトロニック・ミュージックとしてもアーバンなラウンジミュージックとしても機能するような絶妙なバランスに辿り着いている。ストーリー性のあるアルバムの流れが最高。曇り空や雨の日に聴くと本当にハマる(それこそMassive AttackProtection』並に)。いかにもUKにおけるいろいろな人種、文化的背景を持った人々が行き交う場としてのクラブから生まれてきた音という感じがするし、そういった点は現在盛り上がりを見せている若い世代のUKジャズとも通じるので(音楽的にも多少は近いフィーリングがあると思うし)、そちらのシーンをフォローしている方々にも是非聴いていただきたい一作。

 

 

6. Dan Weiss『Starebaby』

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アメリカのドラム奏者/作曲家によるメタルの影響なども取り入れたジャズ。メシュガーや初期のメタリカなどメタルのバンドが影響源として挙げられていて、リフの反復を多く用いた曲構成、ディストーションやファズの効いた歪んだ音色の多用などに反映されているが、それらはダン・ワイスの音楽が以前から持っていた変拍子インド音楽に習った周期の長いビートサイクルなどのドラマーらしいリズム面の工夫と巧みに接続、交錯されており、結果的にはプログレッシブロック的折衷感覚に基く得体の知れないミステリアスさを纏った音楽が奏でられている。こちらにレビューあります。

 

 

5. Jim O'Rourke『sleep like it's winter』

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ジム・オルーク流のアンビエント(への批評としての)作品。リリースされてからまだ数回程度しか聴けてないことと何より作品の持つ深みのためまだまだ自分の中で評価の定まっていない一枚ですが、本作の大きな魅力のひとつとしてシンセによる電子音が割合としては大いにも関わらずアコースティック楽器を思わせるような響きやダイナミクスの豊かさ(音の立ち上がりと消失の美しさ!)が感じられるという点はあると思う。そういった点含めジム・オルークの耳の良さが作品の魅力に直結しているような印象。

 

 

4. International Nothing『In Doubt We Trust』

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現代音楽。主に即興演奏の分野で活動するクラリネット奏者2人による特殊奏法などを活かした作曲作品。2つの(重音奏法なども用いているため時にはそれ以上の)音の重なりや完璧にコントロールされたうなりが美しい。

 

 

3. Mika Vainio『Lydspor One & Two (Blue TB7 Series)』

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電子音響/エクスペリメンタル。2017年に他界したフィンランドのサウンド・アーティストのミカ・ヴァイニオが2015年に遺した録音のリリース。アメリカの電子楽器メーカーMoog Musicが所有するスペースMoog Sound Lab UKで製作された音楽を限定リリースするレーベルMoog Recordings Libraryのリリース第一弾でもある。モジュラーシンセサイザーのSystem 55を用い制作されたふたつの楽曲は、紛れもなく無機質かつ時にダークなミカ・ヴァイニオのサウンドであると同時に、そこからはどこか電子音を操る喜びが滲み出ているように感じた。また制作の経緯もあってかシンセサイズ・ミュージックとしての面白みも前面に出ているように感じられ、これまで彼の音楽をそういった観点からは強く意識していなかった自分にとってはそこが大きな学びだった。

 

 

2. Okkyung Lee『Dahl-Tah-Ghi』

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ジャズや即興演奏の分野で活動するチェロ奏者によるソロ・インプロ作品。40分一本勝負。2013年6月、オスロのエマニュエル・ヴィーゲラン美術館で30人限定で行われたパフォーマンス。非常に残響の豊かな空間のためか、その音響特性を確かめるように様々な方法の発音を用いた演奏になっており、特に12分辺りからの空間に傷を残すかのような激しいボウイング、そしてそれが徐々に消失していく様や、低音弦を弓で激しく弾いたり叩いたりする場面での残響の連なりによって膨張したような響きなどが凄まじい。既発のソロ作『Ghil』などではディストーションなのかおそらく何らかのエレクトロニクスを用いたような歪んだ音色での演奏も行っていた彼女だが、ここでの演奏は完全にアコースティックなものにも関わらずそれ以上に音響的な豊かさを感じさせる。チェロやコントラバスの即興演奏については正直なところこれまで心底ヤラれた経験というのがなかったのだけど、これは自分にとって初めてそれをもたらしてくれた一作となった。おそらくこれからそういった分野の演奏を聴く際に自分にとってのひとつのリファレンスになってくるだろう。

 

 

1. Alva Noto & Ryuichi Sakamoto『Glass』

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電子音楽アンビエント。ドイツのサウンド/ヴィジュアルアーティストと日本の音楽家によるコラボレーション作品。コネチカット州にある建築家Philip Johnsonのグラスハウスでのライブ録音。シンギングボウルやクロテイルの弓弾き、そしてグラスハウスの壁を擦った音などアコースティックな要素もあるようだけど全体の印象としては(この二人の音楽家としてのイメージに引っ張られてる面も大きいだろうけど)超リッチなシンセアンビエントみたいに聴こえる(「あぁ~!シンセの音ォ~!!」)。夜中の長時間の運転の際にこれをひたすらリピートして聴いてたのが今年の音楽体験の中では最も印象的だった。坂本龍一ドキュメンタリー映画CODA』の中で昨年の『async』についてや自身の理想とするサウンドの在り方としてタルコフスキー映画のサウンドへのシンパシーを口にしていたけど、自分としては『async』よりむしろこちらにそのような趣(惑星ソラリスっぽさ)を感じた。

 

 

 

KINK GONG JAPAN TOUR 2018『電磁的音族』

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7月8日に福岡IAF SHOPにて行われるKINK GONG JAPAN TOUR 2018『電磁的音族』に出演いたします。

https://www.facebook.com/events/221750651981481/

 

私は20~30分程度のライブを行う予定です。

お近くの方もそうでない方も是非ともいらしてください。

 

《イベント概要》

 アジア圏少数民族の音楽収集家LAURENT JEANNEAUによるサウンドプロジェクトKINK GONGが待望の初来日を果たし、福岡にもやって来ます!

 

第一部 TALK 18:30~19:30 Interview with KINK GONG 聞き手:コテカ 通訳:Fumiwo Iwamoto

第二部 LIVE 19:30~22:30 出演: KINK GONG 松浦知也 コテカ Shuta Hiraki

DJ: hassi POLYPICAL

 

入場料/2000円+ドリンクオーダー

 

現代の音楽にとって、演奏よりもプリミティブな行為として録音というプロセスがあると思うのですが、19世紀末に発明されたこの技術は、20世紀に入り巨大な産業と化す一方で、数多くの研究機関や研究者の手により、古より受け継がれ変遷してきたその土地固有の文化として、世界各地の民族の音が記録に残されてきました。言うまでもなく、この両者は相互の影響関係にあります。 テクノロジーや交通網が発達し、フィールドレコーディングという手法は、様々なタイプの音楽に取り入れられるようになりましたが、KINK GONGはこうした極初期からの民族誌的フィールドレコーディング作家としての系譜を受け継ぎながら、それらを素材としたコラージュや電子加工による独自の音響世界を構築する、特異な電子音楽家でもあります。今回は、そんな彼のアジア各地を回りながら膨大な音を収集してきた旅のエピソードを中心にその経験と考えを伝えるTALKと、驚異の新作『DIAN LONG』も取り入れたスペシャルセットなLIVEの二部構成で、その魅力を伝えていきたいと思います。

 

・KINK GONG

長年に渡り、アジア圏少数民族の音楽を現地で録音・収集してきたフランス出身LAURENT JEANNEAUによるサウンドプロジェクト。自主製作で少数発行されたCDR作品は膨大なカタログが存在し、ALAN BISHOP(SUN CITY GIRLS)主宰SUBLIME FREQUENCIESのフィールドレコーディング部隊としても活動している。極初期の民族誌的フィールドレコーディング作家としての系譜も受け継ぎながら、それらを素材としたコラージュや電子加工による独自の音響世界も追求しており、民族音楽ワールドミュージックのリスナーのみならずアンビエント電子音楽のリスナーからも多くの注目を集めている。DISCREPANTよりリリースされた最新作『DIAN LONG』を引提げて待望の初来日が実現。

http://kinkgong.net/

http://soi48.blogspot.com/2018/05/71sun-soi48-vol29-kink-gong-special-be.html

http://fnmnl.tv/2018/05/13/52511

https://vimeo.com/40564867

 

・Shuta Hiraki

 長崎在住の電子音楽家。「アンビエントヤクザ」とも自称するほどSNSやブログでアンビエント電子音楽のディープな情報発信もしている。

https://soundcloud.com/obalto

https://obalto.bandcamp.com/

 

・コテカ

 福岡の名物レコードショップ「カラヴィンカミュージック」のコテカさん。DJ目線からワールドミュージック民族音楽の素晴らしさを提唱してきたお店だけに、また違った角度から企画の内容に光を当ててくれるのではないかと。鍵盤の生演奏にフィールドレコーディングの音源を重ねるパフォーマンス。イベント前半のKINK GONG公開インタビューでは司会も担当してもらいます。

http://kalavinkamusic.com/

 

・松浦知也

 九州大学の院生でもある松浦知也さんは「Sound Maker」というちょっと耳慣れない肩書なのですが、その経歴を見てみても東京藝術大学~内橋和久~チームラボ~YCAM~蓮沼執太と極めて現代的な横断をしており気になる存在。プログラミングや音響機材の制作など、音のシステムごと設計するそのアプローチは、今回の企画に新たなテーマを与えてくれるように思います。

https://matsuuratomoya.com/

 

 会場のBGMは、KINK GONG東京公演にて共演するタイ音楽DJユニットSOI48をそれぞれ福岡・熊本でサポートしていたhassiとイベント主催POLYPICALの両名で担当します。

 

今月のお気に入り(2018年6月)

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・tricot『potage / ブームに乗って』

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・Siouxsie and the Banshees『Tinderbox』

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David Lynch『Lost Highway』

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・Actress, London Contemporary Orchestra『LAGEOS』

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・Peter Evans and Weasel Walter『Poisonous』

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・Eliane Gazzard『Aurora Ouroboros Borealis』

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・Arikon『The Prophet's Blood Is Boiling』

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・Childish Gambino『This Is America』

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・JQ『Invisible』

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・Thumbscrew『Ours』

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・Jon Hassell『Listening To Pictures』

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・Melvins『Hostile Ambient Takeover』

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・Trio HLK『Standard Time』

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・Molecule Plane『The Empress』

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・Mark Fell『Intra』

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・Cristián Alvear, Takashi Masubuchi, Yoko Ikeda & Wakana Ikeda『Santiago Astaburuaga: la perpetuidad del esbozo 2』

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・Melaine Dalibert『Musique pour le lever du jour』

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・Daniel Carter, William Parker, Matthew Shipp『Seraphic Light』

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Radiohead『OK Computer OKNOTOK 1997 2017』

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Iannis Xenakis『Percussion Works』

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・Kink Gong『Voices』

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Gonzo『Se Asian Noise(s)』

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・Leon Vynehall『Nothing Is Still』

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・Hiroki Sasajima and Eisuke Yanagisawa『Jōgashima』

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・Dre Hočevar『Transcendental Within The Sphere Of Indivisible Remainder』

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・Pali Meursault『Stridulations』

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Nyantora『マイ オリル ヒト』

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・Zbigniew Krakowski & Tetsuo Furudate『World As Will III』

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A$AP Rocky『Testing』

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・Jim O'Rourke『sleep like it's winter』

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宇多田ヒカル『初恋』

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マイ・フェイヴァリット・フィールドレコーディング9選

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先日Polypicalさんがツイートされていたマイ・フェイヴァリット・フィルレコ作品に触発されて(ていうか単なるパクリですが)、私も選んでみました。

簡単な紹介文も書いてます。画像をクリックで試聴などのリンクへ飛べます。

 

・Chris Watson『In St Cuthbert's Time』

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フィーレコといったらこの人クリス・ワトソンによるイギリス、ノーサンバーランド州の小島リンディスファーンの環境録音。数種類の鳥の鳴き声と水と風の音が織りなす原初感すら感じさせる圧倒的なアンビエンス。この人の録音は音の捉え具合や解像度が他のフィーレコ作品とは段違いで響きの説得力がとにかく凄い。

 

・Francisco Lopez『Through The Looking-Glass』

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フィールドレコーディング、ミュージック・コンクレートなどの手法を用いて活動するサウンド・アーティスト、フランシスコ・ロペスのアンソロジー的5枚組。フィールドレコーディング的観点からだとなんといってもDisc 1『La Selva』が圧倒的。コスタリカ熱帯雨林で録られたあらゆる環境音のミックスで猿のうめき声から虫の羽音、土砂振りの雨や雷鳴などに加え最早何の音かわからないような音まで。Disc 3の『Buildings New York』も素晴らしい。

 

・Merzouga『52°46’ North 13°29’ East – Music for Wax-Cylinders』

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エジソンが初めて開発した録音機 ”ワックス・シリンダー” にて記録された世界各地の自然/環境音を用いて制作されたコラージュ作品。 柔らかいノイズにまみれ、いっそう不可思議さを増したサンプルに、本人による素朴な演奏が加わるかたちでストーリー性すら感じられるような非常に音楽的な作品に仕上がっています。メンバーによる楽器の演奏なども加えられているため狭義のフィールドレコーディング作品とはいえないかもしれませんが、本当に大好きな一枚なのでこれだけは外せなかった。

 

・Jérémie Mathes『Efequén』

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フランスのフィールドレコーディング作家、Jérémie Mathesがスペイン領カナリア諸島の火山島ランサローテ島にて一週間かけて集めた音から構成したアルバム。人の声や雑踏なども含む多様な環境音から成り立っていますが、中でも水の音が印象的。おそらく環境音をそのまま用いるスタイルで音色自体の加工などはなされていないと思いますが、音のレイヤーや抜き差しによる展開や起伏の作りが巧みですごい“聴かせる”作品になってます。

 

・stilllife『夜のカタログ』

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 スティルライフは東京在住のフィールドレコーディング作家、演奏家である津田貴司 と 笹島裕樹による2人組。本作は2013年から2014年にかけて(主に夕方以降に)録られた膨大なフィールドレコーディングの中からの抜粋によって成り立っています。故に夜のカタログ。日本人には馴染みのある音も多い環境音とそこに控えめに寄り添うように時折鳴らされる楽器(あるいは物)の音。要素だけ見れば決して奇抜さや特殊性はないのですが、普通にレコーダー回してこんな風になる?っていうくらいに異常に雄弁に感じられる自然音が詰まっています。何十、何百という時間回せば数分は録れるかもってレベルの自然が語っているような瞬間を焼き付けた、語りの記録(=ログ)。日常的に存在している音に目を向けその底知れなさを知るって意味では衝撃的ともいえる作品だと思います。

 

・Heike Vester『Marine Mammals And Fish Of Lofoten And Vesteralen』

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クジラやイルカ、シャチだったり水中生物の録音モノってフィールドレコーディングには多分結構あると思うんですが(Douglas QuinのとかFREMEAUX&ASSOCIESから出てるのとか)、自分が特に愛聴してるのがこれ。自分が他に聴いたことあるものと比べると非常にクリアな録音で空間も広くて、そこにあのキュイーンって感じの最早電子音みたいなイルカの鳴き声とかが響く様がほんといいです(語彙…)。録音者のHeike Vesterって人はドイツ出身の生物学者であり海洋動物のバイオアコースティックを専門とするOcean Soundsのコーディネーター、創始者とのこと。音楽に関わるような活動はそんなにしてなさそうですけど調べてみたらBen Frost『By The Throat』においてシャチの音声で関わってるみたいです。

 

・Lawrence English『Suikinkutsu no katawara ni』

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音響レーベルRoom40の主宰でもあるサウンドアーティストによるタイトル通り水琴窟の録音。隙間が多く涼し気な音が点描的にこだまする、ここで選んでいるものでは最もアンビエントとしての機能性が高いかもしれない一枚です。暑い時期なんかになんとなくかけとくと特にいいと思います。

 

・Jana Winderen『The Wanderer』

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ノルウェー出身のサウンドアーティスト、ヤナ・ヴィンデレンによる作品。彼女はハイドロフォンを用いての海中調査、音の採取を長年続けているアーティストで、それによって得られた種々の音源を用いたサウンドスケープ作品を継続的にリリースしています。各作品で音が採取された場所やその採取のプロセスは異なるのかもしれませんが、聴覚上はその差異にはあまり耳が向かわないというか、どの作品も同じような意味で同じくらいいのでとりあえずどれでもいいから是非聴いてみてほしい作家です。冷たくも瑞々しい響きが多くなかなか不思議な感触の音響作品。(彼女の経歴についてはこちらのページが詳しい)

 

・Haco + Toshiya Tsunoda『TramVibration』

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ヴォーカリスト、作曲家などとしても活動するHacoとコンセプチュアルなフィールドレコーディング作品で知られる角田俊也による共作。

“2006年12月、大阪、阪堺電車恵美須町浜寺駅前を往復乗車し、その間、車内において、角田はピエゾセラミック・センサー・マイクと聴診器を使って振動音を、Haco は彼女が考案した、ふたつの誘導性マイクによるステレオ・バグスコープ・システム (stereo bugscope system) を使って電磁波を、それぞれ録音した34分36分の1トラック。全34分同じ車中にいながら、意外にも多様に変化する音の姿を、驚きとともに堪能できる。 ”(Ftarri商品説明より)

Hacoが捉えた電磁波の存在や角田俊也の捉えた振動音の動きなどから非常に電子音楽やミュージック・コンクレート的仕上がりになっている一作。電車の走行速度や線路の状況などに伴ってか音にダイナミックな起伏が生まれているのも面白いです。

 

 

今月のお気に入り(2018年5月)

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Grouper『Grid Of Points』

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・BES『UNTITLED』

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・Ståle Liavik Solberg『True Colours』

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・Lick-G『Trainspotting

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・Shuta Hiraki『Afterwhile』

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・Dedekind Cut『Tahoe』

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・MABUTA『Welcom to This World』

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・『The Music Improvisation Company』

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・Thomas Tilly『Codex Amphibia』

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・Richard Chartier『Central (for M​.​Vainio)』

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・Christina Kubisch『Night Flights』

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・Nik Bartsch's Ronin『Awase』

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Dave Holland『Uncharted Territories』

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・Edward Simon『Sorrows and Triumphs』

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・Will Montgomery『The Crystal At The Lips』

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・Yu Kawa Shizuka『Le Portrait De(petite). M』

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・Maria Grand『Magdalena』

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David Grubbs & Taku Unami『Failed Celestial Creatures』

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・Ryo Murakami『Deist』

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・Invisible Fish『Through The Glass Wall』

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呂布カルマ『Supersalt』

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・Clarice Jensen『For This From That Will Be Filled』

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Jan Jelinek『Zwischen』

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・Francisco Meirino & Bruno Duplant『Dedans / Dehors』

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・Lars Lundehave Hansen『Irregular Pattern Decay』

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cero『POLY LIFE MULTI SOUL』

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・Cory Smythe & Peter Evans『Weatherbird』

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・The Thing『Again』

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・Kamaal Williams『The Return』

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・Morgan Evans-Weiler『iterations & environments』

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・Taku Unami『cloud of unknowing』

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Dan Weiss『Starebaby』

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Dan Weiss (drums, compositions), Ben Monder (guitars), Trevor Dunn (electric bass), Craig Taborn (keyboards, piano), Matt Mitchell (keyboards, piano)

 

NYを拠点に活動するドラム/打楽器奏者ダン・ワイスの4作目(?)となるリーダー作。

前々作『Fourteen』、前作『Sixteen』はそれぞれタイトル通りに14人、16人編成からなるラージアンサンブル作品でしたが、今作は2人の鍵盤奏者、ギター、ベース、ドラムというやや風変わりな小編成となっています。

ラージアンサンブル作品であった前2作とは編成の違いが大きく影響してか音楽の色合いは相当異なったものになっていて、声や管楽器などの参加で彩り豊かな印象のあった前2作に比してエレクトリックな楽器の(特にベン・モンダーとトレヴァー・ダンの放つ)歪んだ音色の存在感が強く、トーンの落ちた重い雰囲気が前面に出ています。

Pi Recordingsの作品ページの解説には本作の影響源が多く挙げられているのですが、その中でも目を引くのがメタルのバンドで、具体的にはMeshuggah、Burning Witch、High on Fire、Gorguts、初期のMetallica、Wormed、Confessorが挙げられています。本作の歪んだ音色の多用はこの辺りを参照としたものと見てよさそうです。

 

 

本作において音楽はすごく大雑把にいってMbase的なフレーズのズレであったり、インド音楽のビートサイクルを取り入れたものと思しきリズムの掴み難さ、面白みに主眼を置いた部分と、前述のような歪んだ音色を用いたメタル的な場面から成り立っていて、それらが④では前後半でハッキリと区別されたかたちで、⑤では混ざり合うように提示されたりするのですが、どちらにせよメタル的な場面であったり音要素が自分にはダン・ワイスの音楽に以前からあったリズムのドープさみたいなものをより増幅させるかたちで作用しているように聴こえ、そこが本作の一番の旨みであるように感じました。層の多さや複雑さといった面では以前の作品に劣るかもしれませんが、いちプレイヤーとしてダン・ワイスが叩きだすリズムに関してはその魅力(一音一音の音の重み)がよりずっしりと響いてくる印象です。これは自分がロックなども聴く人間だからかもしれませんが、メタルなどの影響を大きく取り入れた結果彼の音楽のグルーヴミュージック的側面がこれまで以上に素直に入ってくるような感覚があります。

他のメンバーの演奏に関して特に耳を引くのはベン・モンダーの存在でしょうか。リフを奏でる場面もありますがそれよりも楽曲のリズム構造に深く関わることはせず文字通り浮遊したような演奏をソロ的な扱いで披露する場面が印象的で、そこでの演奏は時折浮遊系と称するにはかなり暴力的なことになっていて本作における極上のアクセントとして機能しています。

本作のメタル的な場面では複数の楽器が変拍子の複雑なリフをユニゾンで奏でることが多く、直線的(単線的?)に疾走するような印象があるのでこの辺はジャズ的なグルーヴに耳が馴染んだ方には賛否わかれるところかもしれません。自分としてはこういった場面の演奏はリフの複雑さだったりそのストップ&ゴー的な連結の仕方だったりからメタルっていうよりマスロックに近いように聴こえました。特にラストの⑧は全編その方向性で押し切ってくる曲なのでマスロック好きな人には無理やりこの曲だけ聴かせてみたいところです。

 

 

 

本作の影響源としては他に電子音響音楽(Karlheinz StockhausenBernard Parmegiani、Luc Ferrariなど)、Sidney BechetからHenry Threadgillまでのあらゆるジャズ、テレビ番組「Twin Peaks」の第3シーズンなどが挙げられています。電子音響に関しては⑥の終盤や⑦の冒頭だったりで特に面白い音が聴こえますね。