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マルチプルタップ・ファクトリー vol.2

 

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日本の過剰で混沌とした音楽を国内外に紹介し続ける流浪の音楽フェス、MultipleTap(マルチプルタップ)が企画するシリーズの第二回。今回は、昨年2月にロンドンで行われたMT初の海外公演に参加したアーティストたちの最新のライブ・パフォーマンスをお届けします。ドラびでおこと一楽儀光とインキャパシタンツ/非常階段のT.Mikawaによるデュオ演奏。そしてノー・インプット・ミキシングボード奏者の中村としまる、ロンドン在住のサウンド・ビジュアル・アーティストKen Ikedaが、工業用ミシンを使って刺繍作品を制作するアーティスト青山悟を迎えて行うトリオ演奏の二部構成です。”(uplinkのイベントHPより)

 

7月21日に渋谷アップリンクにて行われた『MultipleTap Factory Vol.2』に行ってきました。イベントの概要は上記のHPからの引用の通り。当日の流れとしてはまず中村としまる、Ken Ikeda、青山悟のパフォーマンス。少しの休憩を挟み、昨年2月のロンドン公演の映像を流しそれぞれの出演者の特徴や裏話などをドラびでお&T.美川が解説するユルいトークショーの後、ドラびでお&T.美川の演奏という構成でした。

MultipleTapというフェスに関しては不勉強で詳しく知らない状態だったんですが、この度のイベントでも映像が多く流された昨年2月のロンドン公演はなんとあのCafe Otoで行われたとのこと。映像にて紹介された出演者も非常階段やPain Jerk、毛利桂、大城真、川口貴大、石川高、秋山徹次などなど、自分なんでこれ知らなかったんだって不思議に思ってしまうような面子。ドラびでお&T.美川のアホと最高が交互に連呼される出演者紹介のトークも笑わせてくれました。特にT.美川さんの川口貴大さんに対する“椅子をみると積み上げたくなってしまうアホ”との評には吹きましたw

 

↓ ロンドン公演での川口貴大&大城真のパフォーマンス。他のアクトに関しても長尺の動画が多くYoutubeにアップされているので、興味あるかたは是非。

www.youtube.com

 

 

 さて、前置きが長くなってしまいましたが勿論肝心なのは当日の演奏ですよね。

 

まずは最初に行われた中村としまる、Ken Ikeda、青山悟の演奏。中村としまるがノー・インプット・ミキシングボード、Ken Ikedaはエフェクター数個に鍵盤上(?)の細長い機材を繋いだ簡素なエレクトロニクスを演奏し、青山悟は工業用ミシンで淡々と五線譜に糸で音符を縫い付け描いていくというもの。(青山の手元が常時スクリーンに映し出されています)

一見、青山はパフォーマンスの“音”の側面という意味での演奏には参加していないように見えるんですが、工業用ミシンのたてる音がアンプリファイされていて、むしろその規則的な物音を中心に演奏が行われている様な印象でした。終始寡黙な演奏でしたがKen Ikedaが鍵盤上の機材を触ったときの音色の変化と、やけに音楽的に聴こえる工業用ミシンの音が耳に焼き付いています。こういう演奏はライブで聴く以上に部屋で流しておきたいって思う人間なので音源化してもらえると助かるんですけどね。あのミシンの音が欲しい。

 

↓ 中央のKen Ikedaのセットの簡素さが目を引く。あの鍵盤上のコントローラーはなんだったのか。

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 そして最後のドラびでお&T.美川、ヤバかったです。ドラびでおのレーザーギターの音の瞬発性と多様さ、そしてT.美川のギターアンプから出力されたノイズの身体の芯に響いてくるようなあの密度。右肩上がりに音量や音の暴力性を増していくT.美川に対し、パーカッション的だったりピアノだったり勿論ノイズも擁してまさしく照射されるレーザーのように瞬発的に色合いを変えていくドラびでおの音。特にラストのバーストするような大音量のノイズの応酬に向かう前、ドラびでおが現代音楽的なピアノフレーズを挿入するパートのヒリヒリとした緊張感は鳥肌モノのかっこよさでした。そしてその張りつめた糸が引きちぎれるようなノイズの濁流の呑まれて恍惚の只中で終了。ノイズアクト二者の共演であることから先日のUnitでのRussell Haswell + Pain Jerkの素晴らしすぎる演奏も引き合いに出したくなるような最高の演奏でした。こういうノイズアクトの好きな演奏に触れられた時の興奮って本当にどうしようもない快感ですね。

正直ライブ前はドラびでおが使用しているレーザーギター(手元のパッドの操作に応じて客席に向けられた二台のプロジェクターからレーザーが照射される仕組み)で具合悪くなるんじゃないかと心配していたのですが、自分は結構目が光に強いのか客席のちょうど真ん中辺りにいてレーザー浴びまくってた割に全然大丈夫でした。というかこのライブの前日、前々日とあまり寝れてなかったからか最初の三人の演奏の際はその寡黙さもあって猛烈に眠くて何度も落ちそうになりながら見てたんですが、もちろんレーザー地獄の前ではそんなウトウトなど許されずで眠気を焼き切ってくれたので助かりました(笑)。最初のほうの点滅が多い時間帯はちょっと眩しい感じでしたけど終盤の重層的な光線はとてもキレイでしたよ。まぁ他のお客さんは視界をフライヤーや帽子で遮ってる人も多かったですが…。