LL

LL

Best of 2014 再考版

12月に入って各種メディアの2015年間ベストとか続々出てますが、このタイミングで去年2014年の年間ベストを改めて選んでみます。

このブログで去年12月に出したもの(上半期下半期)を見返してみて、その時点からのこの一年間で実際に愛聴したものはちょっと違うなとか、その時点では聴けてなくて2015年に入ってから聴いた2014年作品にもすごくいい作品あったなとか、いろいろ思うことありまして、それらを改めて紹介できればなと。

こういう個人が選ぶものは特にそうですが、“年間ベスト”なんていってもその年に出たもの全て聴くなんて実際不可能なわけだし、個人の好みだって変化するものだと思うので所詮は暫定的なものに過ぎないんですが、一年という期間を置いて改めて選んでみるとなんだか精度の高いものになっている気がして不思議なものです。特に上位6作品はこれからも折に触れて聴き返していくんだろうなぁと。まぁ先のことなんてわかんないんですが。

 

では20作品、順位も付けました。カウントダウン方式で

 

20. Shotahirama : Miclodiet『Clampdown』

youtu.be

 

19. Rhodri Davies, John Butcher『Routing Lynn』

www.ftarri.com

 

18. Kyoka『IS (Is Superpowered)』

soundcloud.com

 

17. Tomas Phillips『Two Compositions』

soundcloud.com

 

16. John Tilbury, Philip Thomas Et Al.『Morton Feldman - Two Pianos and other pieces, 1953–1969』

youtu.be

 

15. STL『At Disconnected Moments』

youtu.be

 

14. Matt Brewer『Mythology』

ミソロジー

ミソロジー

 

 

 

7~13位辺りの順位はかなり迷いました。差はあってないようなものです。

 

13. Oren Ambarchi『Quixotism』

youtu.be

 

12. Jürg Frey / Radu Malfatti『II』

www.ftarri.com

www.erstwhilerecords.com

 

11. Ambrose Akinmusire『The Imagined Savior Is Far Easier To Paint』

youtu.be

 

10. Joseph Clayton Mills, Deanna Varagona, Carrie Olivia Adams『Huntress』

soundcloud.com

 

9. Apartment House『Laurence Crane; Chamber Works 1992-2009』

youtu.be

 

8. Tyshawn Sorey『Alloy

Alloy

Alloy

 

 

7. Joe Panzner / Greg Stuart『Michael Pisaro's White Metal』

f:id:yorosz:20141225185327j:plain

youtu.be

 

 

ここから上はもう全部1位みたいなものです。

 

6. Grouper『Ruins』

youtu.be

Grouerの作品の中でも一番好き。これ聴いてると自分このまま眠りについて目覚めない(=死ぬ)んじゃないかと思うんだけど、それに全く拒否感を感じないどころかすごく自然なことにすら思えてくる。甘美な眠り(≒死)への誘いとかそういうものとは違うし、枯れた末の自然な絶命みたいなものともまた違う、なんでこんな作品作った(作れた)んだろう。

 

 

5. Lucy『Churches Schools And Guns』

youtu.be

 

テクノ/ダンスミュージックとしての機能性を一切失わず、文学的とまで言えそうなひとつの世界観をここまで徹底的に描くことができるのかっていう。機能性とロマンの同居。

 

 

4. Konzert Minimal『Antoine Beuger - Tschirtner Tunings For Twelve』

youtu.be

ヴァンデルヴァイザー楽派の代表的な作曲家アントワーヌ・ボイガーの作品をKozert Minimalという演奏家グループが演じたアルバム。12の楽器がそれぞれに発する持続音と、その間に挟まれる無音のみで構成されている音楽です。音程の移り変わりなどもありますが、執拗な持続音と無音の繰り返しの中にあってもそこに意味や規則性を見出すことは難しく、耳に留まるのは特に発音時に顕著に表れる(管楽器ならば息が管体を通ることで、弦楽器ならば弓と弦の圧力のバランスが不均一なことで起こる)擦れた音と、人が生楽器で持続音を出すと避けようなく表れる音の揺らぎで、それらが無音と持続音という限りなく削がれた構成の中であっても、豊かな音響的コントラストや、目、耳、鼻、口、を塞がれても伝わってきそうな人の気配までも感じさせてしまいます。アントワーヌ・ボイガーの作品は様々なヴァンデルヴァイザー楽派の作品の中でもこういった人の気配を、“浮かび上がらせる”といったかたちではありますが、それ故に(?)最も色濃く感じさせるもので、例えばブラック・ミュージックとは全く違った音楽ですけど、同じくらいセクシーな音楽なのではないか、とか思います。

今回選んだ20枚中に3枚入ってることからも分かる通り、Another Timbreの作品はやっぱり好きだし本当によく聴きますね。

 

 

3. Steve Lehman Octet『Mise en Abîme』

youtu.be

昨年末の時点でも下半期の2位に選んでいた作品。一曲一曲の短さ、アルバム全体でも40分を切るタイトさもあって今年に入ってからもガンガン聴いてました。大き目の編成ですし管のアンサンブルや絡みも結構複雑なので、リズム隊はしっかり土台を支えることに徹する、なんてことになっても良さそうなものですが、そんなことお構いなしに全編細かにそしてダイナミックに叩きまくるタイショーン・ソーレイのドラムが最高すぎます。スティーヴ・リーマンってその顔初めて見た時からこの人絶対むちゃくちゃ頭いいんだろうな…って思ってたんですが、そんな知性を感じさせる部分に、前述したタイショーン・ソーレイをはじめとした面々がもたらす演奏のフィジカル性(もちろんリーマン自身の演奏も素晴らしいです。2曲目の延々ソロ吹いてる時の音の切り方、間のとり方とかほんとゾクゾクします。)も上乗せされてとんでもないクオリティになってしまった今作のリリースの後では、もうその目つきだけで恐ろしさを感じるようになってしまいました。

 

 

2. Haptic『Excess of Vision: Unreleased Recordings, 2005-2014』

noticerecordings.bandcamp.com

これは2015年に入って聴いたんですが死ぬほどハマりました。ドローン、インダストリアル、ミュージックコンクレートが溶け合ったような作風なんですが、無機的な持続音でズブズブ惹き込んだかと思いきやガシャガシャした環境音(?)放り込んでくるところとか展開の感じとかも絶妙に自分の波長と合うようなところがあって、なんかうまく言葉にはできないんですけどとにかくずっとこの音の中に居たいって思わせられる2曲、どちらも23分。Hapticのアルバムはどれも好きですけど、これと『Abeyance』は一際ディープなものを表現できてるように思います。

 

 

1. Thomas Ankersmit『Figueroa Terrace』

youtu.be

サージ・モジュラー・シンセを用いた即興とのことなんですが、場当たり的なものではなく確かな構成美を感じさせる作品で、特に中盤の静かなパートの音の抜き差しひとつひとつにはこの人の音響的な感覚の鋭敏さが表れているようでとにかくクール。でありながら、これ、聴けば聴くほどなんですが、感情や思念といったものとは全く別の、音響的な快楽性のみで駆動される衝動性みたいなものを感じさせる作品でもあるんですよね。語弊を恐れず言えばパンク的な感性を感じるというか。まぁつまりはとにかく滅茶苦茶なかっこよさなんですよ(これで十分ですね笑)。

去年の時点で選んだものでも(上半期のほうで)1位に選んだ作品ですが、今年に入ってからもやっぱりよく聴きましたし個人的な2014年はやっぱこれに尽きるのかなって思います(とか言ってHapticとどちらを1位にするか相当迷ったんですけどね笑)

「かっこいい電子音楽」って聞かれたら真っ先にこれが思い浮かぶ状況は当分続くんじゃないかな…。

 

面倒なのでいちいちリンクは貼りませんでしたが、半分くらいはApple Musicで聴けるみたいなので気になったものがあったら是非チェックしてみてください。

 

 

Ftarri Festival

面倒なので細かな説明は省きますがFtarri Festivalに行ってきました。二日目だけ。

特に印象的だった二組についてとりあえず書きます。

おそらくかなりまとまりのない文章になりそうですがご了承ください。

 

 

 

・杉本拓作曲『Septet』

演奏:杉本拓 (ギター) + 大蔵雅彦 (クラリネット) + 池田陽子 (ヴィオラ) + 池田若菜 (フルート) + マティヤ・シェランダー (コントラバス) + 入間川正美 (チェロ) + 宇波拓 (サイン波)

杉本拓の作曲作品『Septet』の日本初演となる演奏。

演奏時間は40分。

 

演奏はフルートとクラリネットが同じ音程で無理のない程度の長さの持続音を発するところから始まり、各楽器が徐々に同じく無理のない長さ(どれほど長くても10秒には満たないくらいだったと思います)の持続音で演奏に加わっていきます。

フルートとクラリネットは最初に発したものと同じ音程の音を、同じような要領で(おそらく任意の)間隔を置きながら演奏の終了まで発し続けます。

それ以外の楽器については持続音であることは変わりませんが音程は変化します。

この作品が微分音を用いたものである確認はとれていないのですが、フルートとクラリネットというこの編成の中で吹奏楽器に類する二つの楽器が、ひとつの音程の音しか発しなかったことから、おそらくそうではないかと思います。(楽器の構造、チューニングの問題で他の音程は周波数がズレてしまって使えないセッティングになるのではないかと推測します)

演奏が開始しそれぞれの楽器が演奏に加わり終わって少しの時間が経過するまで(おそらく演奏開始から10~15分辺りまで)は、例えば同じ音程を発するフルートとクラリネットの音色の違い、そのふたつの楽器の音にこちらも同じ音程で(いつの間にか)紛れるように加わり、ふたつの楽器の持続音が途切れると(音量はおそらく変わっていないにも関わらず)浮かび上がるように姿を表すサイン波の存在、不運にもこの当日にE-BOWが壊れたとのことで、この編成の中で唯一、発音から減衰していく純粋な撥弦楽器としての出音しか用いることができないギター、など、それぞれの楽器が発する音自体の性格に耳がいくのですが、ある程度の時間が経過するとそういった音に対するミクロな視点も飽和してくるというか、“音”以外の部分に意識が向いていき、耳よりも目や思考が優位にたつような時間が訪れました。

具体的に挙げると、視界では、ゆっくり弓を引くヴィオラ、チェロ、コントラバスの、ときに筋肉の震えが見えてくるような肉体的な負荷(スローモーションの動きを改めて生身の人間が真似する時のような感覚)の伝わり、楽器を口の位置から水平とは言わずともある程度それに近い位置、角度で保つフルートの演奏姿勢と、その保持による筋肉の硬直(演奏終了後に息を吐きながら首を回し、肩周りの筋肉をほぐすような動きをされていたのがその辛さを物語っているようでした)を感じとったり、それに基づく思考では、こういったゆっくり動くことや動きを止めることによって生み出される緊張感というのは、その肉体的な負荷を人間の身体が(意識的、無意識的であることに関わらず)感じとってしまうことによるいわば生体的、先天的な反応なのか、それとも歌舞伎、能、狂言など、ゆっくり動くことや動きを止めることを表現の内に多く用いる日本の文化とその下で育った人間(ただ私自身はそういった文化に親しんでいるわけではないので、この場合は無意識的な影響の下、ということになりますが)であることによる文化的、後天的な感覚なのか、ということなどです。

また、その視界から伝わるものが主に“負荷”だったことや、私自身は演奏中に耳以上に目や思考が優位になる状況があまり好きではないことから、先述したような考えをひと通り経過してからは結構な時間目を瞑って聴いていたのですが、そうすると音の聴こえ方も随分違ってくるように感じられたりもしました。端的に言うと柔らかい音色が心地いいミニマルな音楽として、アンビエント的な聴取が可能になるというか。視界から伝わってくる肉体が軋むような、マイナス方向への身体性とでも言えそうな感覚がマスキングされるというか。杉本さんの『Quartet / Octet』や、杉本さんとも交流のあるヴァンデルヴァイザー楽派の作品を、どちらかというとそういったアンビエント的な聴取だったり、身体性が曇りガラスの向こう側にボヤけて見えるくらいにしか感じられない音楽として楽しむ機会が多かった私としては、こちらのほうが自分なりのこの音楽への向き合い方としてしっくりくる感じもありました。

この作品は最初のフルートとクラリネットのみによるごくわずかな時間を除くと(ヴァンデルヴァイザー楽派の作品などでは多く用いられる)無音が続く時間はなく、常時何らかの楽器が音を発しているものだったのですが、やはり静かな音楽作品であることには変わりなく、聴衆に沈黙を要請するようなところもあって、そういった静かさへの意識というものは聴覚へも大きく影響を及ぼすようで、私、演奏中に足を組み替えた際に前方の椅子に少し靴が当たって“コンッ”という 音をたててしまって、それ、すごく小さな音だったと思うのですが私の耳にはめちゃくちゃ大きな音に聴こえたんですよね。これは音楽の外側で起きたことですけど、音楽に誘発された感覚の下で初めてできる体験であるとも言えそうですし、少し面白く感じてしまうところでもありました。(近くで聴かれていた方、ご迷惑だったらすみませんでした…)

あと、演奏中に感じたこととしては、音楽に対する聴衆の数や会場の規模について。正直今回のイベント、会場(スーデラ)、観客の数はこの作品に対しては少し大きすぎたのではないかと思いました。スーデラとFtarriの中間ぐらいが丁度いいんじゃないのかな、となんとなく。

演奏中に思ったこと、感じたことをとりあえず書き出してみたかたちなのでなんともとりとめのない文章になりましたが、この作品の今回の演奏について私が書けるのはこんなところですかね。作品の構造的なシンプルさが引き出す聴衆の一定時間内での、音(耳)をはじめとし、それ以外の部分にも波及する感覚の変化が面白い(そして恐ろしいとも言えそうな)ところなのかもしれませんね。

 

 

 

・ジョン・ブッチャー (テナー・サックス、ソプラノ・サックス) + ロードリ・デイヴィス (エレクトリック・ハープ)

 

これ目当てにわざわざ遠征したといってもいいくらい楽しみにしていた演奏。結論から言いますと期待にバッチリ応えてくれる演奏で最初から最後まで本当に楽しく聴くことができました。この二者の演奏についてはどういう風な流れの演奏だったとか、どういったところが驚きだったとか、そういう風なことを書くこともできなくはないですが、ちょっと今回は別の視点から。

イベント翌日に、ご自身も出演されていた杉本拓さんがイベント全体を振り返るかたちでされていたツイートで、ジョン・ブッチャーの演奏に言及されていた部分が非常に興味深かったので、まずはそちらを

 

 

 

 これらの発言についてというか、これらの発言に勝手に影響されて、私なりに思うところがあるのでそれを書いてみようかと思います。

まず最初の、ジョン・ブッチャーの演奏がテクニックの「カタログ」に聞こえるという点についてですが、これは私も彼の近作のいくつか(具体的に挙げるとソロ作『Nigemizu』やMark Sandersとのデュオ盤『Daylight』など)で最近特に強く感じるようになっていたところでもありまして、持ち前の様々な演奏上のテクニック、奏法を順番に披露していくようなスタイルはまさに「カタログ」と形容されてもおかしくないと思いますし、それは“即興演奏”という観点からするとどうなのかと。例えば今回の演奏中、彼は数度テナーサックスとソプラノサックスを持ち替えたのですが、毎回それまでにまだ披露していなかった奏法で演奏しある程度の時間演奏したうえで持ち替える、というパターンで、たらればですけどソプラノに持ち替えて何の変哲もないロングトーンを2回出してすぐテナーに持ち替える、なんてことは多分起きないんですよね。とにかくその場の思いつきで何が起こってもいいし、そうでなければ“即興演奏”とは言えない、なんて言ってしまうのは安易である意味偏狭だとすら思いますが、私個人はジョン・ブッチャーの演奏に前述した「たられば~」のような意味合いでの奔放さは求めていないですし、もしかしたら“即興演奏”である必要性すらなくて、なんらかの“完成された表現”のようなものを求めているのかもしれないなと思いました。例えばあの演奏がすべて予め決められた、“書かれた”作品の演奏だったとしても正直私はどうでもいいですし、それであの演奏の価値が落ちるとも全く思いません。

そしてそれらを踏まえて振り返ってみるに、今回の演奏は私にとっては“即興演奏”であることとは関係なく、ひとつの“完成された表現”のようなものとして素晴らしく、楽しめるものであったように思います。なにより演奏中、最初から最後まで、音を聴くことが楽しかったんですよね。International Nothingについてのツイートで、杉本さんはジョン・ブッチャーの演奏を引き合いに出すかたちで「こっちは「音楽」がまずある」と仰られていますが、私にとっては今回のジョン・ブッチャーとロードリ・デイヴィスの演奏は“即興演奏”であることなどの他のあらゆる事に先んじてまず“音楽”だったんですよね。

「なにが“音楽”的であるか」、というのは人それぞれ違うと思いますが、私にとって音楽というのは、究極的には聴いている間あらゆることを忘れさせてくれるもの、その間は何も考えなくていい(考えることができない)もの、なんですよね。そういう意味で、例えば先に長々と書きましたけど、同日の杉本さんの『Septet』の演奏などは“音楽以上”の、自分の手に余る代物に感じてしまうのが正直なところです。なのでそういった作品を書かれる杉本さんがジョン・ブッチャーの演奏に対してこういう見方をされるのは、私のほうではなるほどな、と勝手に納得のいくものでもあります。

 

私は音楽について考えることと音楽を聴くことをあまり上手く同時に出来ない質で(そのため『Septet』の演奏中は思い浮かんだあれこれのほうに意識が向いてしまい音があまり耳に入っていない時間が結構ありました。その点ジョン・ブッチャーとロードリ・デイヴィスの演奏は音から意識が離れる瞬間が全くなかったです。)、今回の文章も書き始めてから集中して音楽を聴くことができない状態になってますし、何より音楽を聴くことがまず好きな人間なので、ここまで書くのも(この程度のことですら)結構苦痛でした。音楽を聴くことの楽しさに加え、それについて考えるということにおいても示唆に富んだ素晴らしいイベントでしたが、今はやっと自分の中でのFtarri Festivalに区切りをつけられたとほっとする気持ちのほうが大きいです。長い割にまとまりのないものだったと思いますが、最後まで読んでくれた方、ありがとうございました。

 

 

 

2015年11月のリスニング

・Colin Vallon Trio『Le Vent』

Le Vent

Le Vent

 

 来日公演が各所で話題になっててその流れで聴いてみたんですがとてもよかったです。

ただこのアルバムももちろんいいんですがyoutubeに上がってたライブ動画のほうがさらにいい。

youtu.be

↓ この動画本当に素晴らしい

youtu.be

 

 

 

・Kendrick Lamar『To Pimp A Butterfly』

To Pimp a Butterfly

To Pimp a Butterfly

 

 なんとなく聴くタイミングを逸してスルーしっぱなしになってたんですが、今更聴いてみたところやっぱり良かったです。6の前半や13でのシリアスなトーンのラップはめちゃくちゃかっこいいし、11はまんまレディヘのPyramid Songだし(ただどうせなら四角錐拍子までパクってその上にラップ乗せたらもっとヤバいことになってたんじゃないかと思わなくもない)、15は先行シングルバージョンにふなっしー↑的なはっちゃけたフロウが上乗せされてて最高だしで聴きどころありすぎます。

youtu.be

 

 

 

・Visionist『Safe』

Safe [未発表ボーナストラック(DLコード)+帯]

Safe [未発表ボーナストラック(DLコード)+帯]

 

 ジャケも音も結構な衝撃でした。最近フロア寄りな音が多くなってるイメージのPANから、その方向性を決定づけるようなリリース。UKインストグライムシーンの異端であり急先鋒(?)ってな感じなんでしょうか。まぁよくは知らないんですけど。“グライム”っていうと2000年代半ばのラップありきなイメージというか、ヒップホップがあまり根付かなかったイギリスで生まれた独自のラップミュージックみたいなところで止まってたんですが、インストでこんなことになってるとはつゆ知らず…。特集とかも組まれてるみたいでこれからクる(もうキてる?)音なのかもですね。これは嬉しい発見でした。

youtu.be

 

興味ある方は是非一読!

www.wasabeat.jp

 

 

 

・Oracles『Divination II』

weareoracles.bandcamp.com

で、Visionist聴いてからインストグライムをちょこちょこチェックしてみてるわけですがこのNYP(だったんですがいつの間にか1ドルになってる…)のコンピが素晴らしかったです。Visionitからこういう音に入った身としては6曲目なんか特にキターーーーってな感じですが他の曲も相当気に入ってます。私の調べが甘いだけかもしれませんが参加しているのはまだソロ作などリリースしていないトラックメイカーがほとんどのようでこれから楽しみですね。できれば早いとこ何かしらのリリースがあってほしい。

 

 

 

・Floating Points『Elaenia』

Elaenia [帯解説・ボーナストラック1曲収録 / 国内盤] (BRC487)

Elaenia [帯解説・ボーナストラック1曲収録 / 国内盤] (BRC487)

 

 これはすごい話題になってますね。今作出すまでにもリリースは結構ある人らしいんですが、全く知りませんでした…。音のほうはさりげなくて、でもすごく手が込んでいて、、とか形容詞を並べたてることはできるんですが、例えばジャンルは何なのかと聞かれるとこれが非常に難しくて、いわゆる情報量過多なごった煮感みたいなものはないんですが、それを回避したうえで、しかしどうしようもなくハイブリッド・ミュージックというか。なんか今までにないものを作ろうって肩肘張ってやった結果ではなくて、作ってたら結果的に様々な分類から紙一重のところで絶妙に逃れ続けるようなものができてしまったみたいな(そんな理想的な音楽の生まれ方があっていいのか…)、まぁ要は“スムーズ”なんですよね。何もかもが。自分は音楽におけるスムーズさってどちらかというと退屈に感じてしまうことが多かったんですが(ただ退屈であることが必ずしも音楽的にネガティブな方向に作用しないアンビエント・ミュージックにおいては違います)、最近そういうものにも幾分価値を見出せるようになってきたところがあって(これ見よがしな屈折感みたいなものに正直飽きてきてます)いろいろ考えるところの多い作品でもありました。

 

↓ 一応試聴貼りますけどこれは是非アルバムトータルで聴いてほしい作品です。Apple Musicなどの各種ストリーミングサービスでも聴くことができるみたいなのでできればそちらで。

youtu.be

 

 

 

・Oneohtrix Point Never『Garden Of Delete』

GARDEN OF DELETE [帯解説・ボーナストラック1曲収録 / 国内盤] アマゾン限定特典マグネット付 (BRC486)

GARDEN OF DELETE [帯解説・ボーナストラック1曲収録 / 国内盤] アマゾン限定特典マグネット付 (BRC486)

 

 なんか発売されたタイミングといい音の内容といいジャケといい、どうしてもFloating Points『Elaenia』と対になった作品みたいに思ってしまうんですが、まぁそんなところを加味せずとも十分すぎるくらい話題になってますね(渋谷タワレコの店頭ポップに踊る“神”の文字にはもはや苦笑いでしたが)。一言で言うと随分忙しなくなった印象。Replica辺りから顕著になったコラージュ感に加えて、強いビートやよりラウドに歪んだ(EDM的な?)シンセなどなどのおかげでいつになくうるさいです。これは知り合いの方が指摘していたことなんですが、Aphex TwinCome To Daddy」みたいに聴こえるところ(Warpだし確信犯的にやってそうですね)ありますし、ブレイクコアの再解釈と言われればなるほどなって納得できる部分も多いですね。そういった指摘を受けると「Come To Daddy」にしてもブレイクコアにしてもあまり好きでない私がこのアルバムに素直に入っていけないところがあったのも頷けますし。ただこのアルバム、先日東京に旅行行った際の散策時によく聴いていたのですが、特に人混みの中で聴くとめちゃくちゃいいんですよね…(「MUTANT STANDARD」とか本当に最高すぎます)。特に渋谷のあらゆる意味で情報量過多な光景、空気とは“合う”っていうよりは、そういったある意味ストレスフルな視界を音で塗りつぶすというかなぎ倒すようなイメージなんですが、脳内で想起されて素晴らしく快楽的でありました。と同時に、あまり音楽聴くうえでこういうことは考えたくないんですが、このアルバムは田舎に暮らすもの(私もそうです)が聴くものではないんじゃないかって疎外感を感じる瞬間でもありました。正直自分の身近なところであの感覚は再現不可能ですもん。人混みとか、目にも耳にもうるさい街とか、基本的には苦手ですし、例えば恒常的にそういった環境に居ることは自分には耐えられないと思いますが、あの感覚はちょっと羨ましいなぁとは思いますね…。

youtu.be

 

 

 

・Rema Hasumi『UTAZATA』

ruwehrecords.bandcamp.com

福岡県出身、ニューヨーク在住のピアニスト、ボーカリスト、即興演奏家による初めてのアルバム作品。よくチェックしているJOEさんのブログで知って聴いてみた一枚で、そちらのレビューが素晴らしいのでここで私が書くことってあまりないのですが…。

ご本人のHPにはこの作品について、

“雅楽、今様、子守唄など、日本の伝統的音楽を、フリー・インプロビゼーションを基盤に演奏している。 ヨーロッパ主義的な平均律の12音階のシステムという視点ではなく、その外側にある音楽的視点から、日本の音楽をとらえ、ラディカルな再構築をすることを目標とした。”

とありまして、“後半の平均律12音階の外側にある音楽的視点”についてはもう少し具体的な言及がほしいと思ったりもするんですが(何か具体的な方法論を用いているのか、それとも演奏に臨む意識レベルでの話なのか、とか…)、あまりそういったところを意識せず私が聴いた印象としてはTyshawn Sorey『That / Not』っぽいなってのが第一印象でした。Tyshawn Soreyが『That / Not』や『Alloy』などの作品で何を目指して演奏していたかは不勉強で知らないんですが、蓮見さんはTwitterなどでもTyshawn Soreyの演奏に何度か言及されていたような記憶がありますし、音楽が目指す方向性として近いものがあるのかもしれませんね。もちろん今作にはそういったTyshawn Soreyの諸作と差別化される要素もあって、中でもやはり大きいのが声の存在ですね。今作の即興部分は非常に点描的なのですが、そこに入る声のパートは常に“線”として存在している印象で、それが入るだけで演奏自体のトーンは変わらぬままで安定感を感じられる、ちょっと他の楽器では代用できないような効果がありますし、これは音楽的に安易だと捉えられそうな気もするのであまり言いたくないんですが、なんか安心するんですよね。これはTyshawn Soreyの作品にはない部分で、この感覚がある故に『UTAZATA』はアヴァンギャルドなジャズなどに馴染みのない方でも結構聴ける作品になってるんじゃないかなとか思います。大衆性やポップさとはまた違うんですが、根源的に落ち着くものを表現できているというか。

また、完全に聴いただけの印象ですが、今作雅楽(東遊)、御詠歌、筑前今様、竹田の子守唄といった日本の伝統的音楽をテーマとした4つの演奏はそれぞれ別の方法(?)、視点で演奏されているようにも感じます。

各楽器の点描的な発音の中に旋律が姿を隠しているようにも思えて、その気配を探しているうちにトランペットに導かれるような形でそれが姿を現す構成が巧みな1曲目、

演奏に参加する楽器すべてが旋律をユニゾンすることや、その提示を終えた後のソロパートでも旋律的な音運びを多用することでハーモニーが前景化することを避けているように感じられる2曲目、

歌に対する音の足し方はコード伴奏というより対旋律的?で合いの手のように聴こえるところもあったり、ギターのソロが入ってきてからはジャズ的な演奏にも思える4曲目、

言葉や音楽の持つ機能(この曲の場合は子守歌)に忠実な演奏の7曲目、

といった具合に。

 

 

 

・Kendrick Scott Oracle『Conviction』

コンヴィクション

コンヴィクション

  • アーティスト: ケンドリック・スコット・オラクル
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
  • 発売日: 2013/03/13
  • メディア: CD
  • この商品を含むブログを見る
 

 今年出た『We Are The Drum』は未だによくわかんないんですが、遅ればせながら前作のこちらを聴いてみたところハマりました。各曲の出来、全体の流れまで気の配られた素晴らしいアルバムだと思います。ジョン・エリスやマイク・モレノなど気になってはいたけどあまり耳にする機会のなかった奏者の演奏にしっかり触れることができたのも個人的に大きな収穫でしたし、特にポスト・ローゼンウィンケル(?)的にも聴こえるマイク・モレノのギターが炸裂する10曲目なんか最高ですね。

youtu.be

 

 

 

・Chevel『Blurse』

Blurse

Blurse

 

 Stroboscopic Artefactsからアルバム作品が出てるの不覚にも見逃してました。この人は名前も聞いたことなかったんですが、イタリア出身で現在はベルリンを拠点に活動を続けるテクノ/ハウスプロデューサー、なんだそうです。音のほうは結構曲毎にテクノだったり、エレクトロニカっぽかったり、グライム風なのもあったりで多彩ですし、音の質感やその隙間のとり方、ビートの配置にいたるまで、これまでのStroboscopic Artefactsのイメージにはないものになってると感じます。正直初聴時は何かの間違いかとすら思いました。特にマットな質感のビートにリバーブやディレイの強くかかった空間的なウワモノが乗る、みたいな各パートがわかりやすく分離した音作りってこのレーベルのイメージになくて、例えばLucy『Churchs Schools And Guns』やDadub『You Are Eternity』のようなすべての音がひとつの世界観を表現するために混然一体となっているような濃厚さは今作にはありません。例に挙げた二作が大好きな私としてはいささか残念に思うところもなくはないんですが、しかし個人的な興味の向くところであるインストグライム、UKシーンの影響が如実に感じられるような4曲目などすごく好きですし、7曲目の「Flippant Remark」はLucy「The Self As Another」をスカスカにして再構築したようにも聴こえますし(というかそうとしか聴こえない)、ある意味レーベルのこれまでのカタログを対象化するような一作にも感じられます。最初は面食らったんですけど、勢いを増すUKシーンの動向などにも目を向けたうえで、レーベルカラーとの絶妙なせめぎ合いを経た、考え抜かれたリリースに思えますし、なにより聴く度にどんどんしっくり来てるんですよねこの音が。やっぱり外さないな~Stroboscopic Artefacts!

youtu.be

 

 

 

・Ingrid Laubrock『Ubatuba』

firehouse12records.com

今年はこの人がリリースラッシュでしかもどれもいいので追うほうとしては楽しいんですが大変でもあります。これはテナーサックス、アルトサックス、トロンボーン、チューバ、ドラムっていうよくわからん編成なんですが、その聴きなれないバランスのアンサンブルが妙に心地いいわ(自分こういうちょっと変な編成すきみたいです)ティム・バーンはかっこええわで大満足。この人は個人的に今一番チェックするのが楽しい演奏家かもなぁ。メアリー・ハルヴァーソンはいろんなところで言及される機会も増えたように思うけど、ハルヴァーソンともよく絡んでるこの人はあまり取り上げられてない気がするんですがどうでしょう。そこのところ正直ちょい不満です。

 

 

 

Spangle call Lilli line『ghost is dead』

ghost is dead

ghost is dead

 

 ライブ活動再開の知らせは聞いていたんですが、新作が出るとは思ってなくてこれが出るの知ったのも発売日の前日(!)でした。発売日になったその日からApple Musicで聴けたのでありがたくチェックさせてもらったわけなんですが、参りましたね素晴らしいです。SCLLは『Nanae』『or』『FOR INSTALLATION』辺りが好きなんですが、『FOR~』以降は作を重ねるごとに興味が薄れていって2010年代の活動はほとんど追ってないくらいでしたし、ここ数年はあまり聴き返すこともなかったんですが、そういった個人的な経緯も重なってなのかすごく新鮮に響くんですよね。何か特別新しいことにチャレンジしているようにも聴こえないんですが、なぜなんでしょう。音の質感はパキっとしていて過去作だと『Trace』に近いと思うんですが、自分は『Trace』あまり好きではなかったにも関わらずこれはすごく好きだと思えますし、なんだか自分でもよくわからないことだらけですね。でも、いいんですよ、本当に。淡々としてるようでさりげなく捻くれてる、みたいな後半の楽曲群とか特に不思議な魅力を放っています。

 

↓ PVも多く制作されているようですね。

youtu.be

youtu.be

 

 

 

・Carl Michael Von Hausswolff『Squared』

www.art-into-life.com

スウェーデン実験音楽家CMなんたらことカール・マイケル・フォン・ハウスヴォルフ(でいいんでしょうか?)の新作。1曲目が32分、2曲目が16分の2曲入り。これはとにかくハードコアなドローンの1曲目に尽きます。32分の長尺を全くものともしない緊張感、集中力、持続しているのは音だけではないですよ。ひとつの音に聴き入ること、音の中に潜り込んでいくことの素晴らしさが、目にも見えず触れることもできない音という表現形態の内の、最小限に絞られた移り変わりの中で、本当に確かなものとして手に残る、大傑作だと思います。ドローンって年に数枚自分の好みにバシッとハマるものがあるんですが、今年出た作品ではこれ断トツなんじゃないでしょうか。というか今年のものに限らずともこのレベルの作品はそうあるものじゃないと思います。聴き終わった時の手応え、充実感とかたまらんものがあります。どこも品切れで今から買うのはなかなか難しそうではありますが、リンク先のArt into Lifeの試聴が尺長めでそれだけでも結構楽しめると思うので是非。

一応レーベルの方でメールオーダーはできるみたいです。

http://www.aufabwegen.de/catalog/

 

 

 

2015年10月のリスニング pt.2

先日の記事書く際に多すぎるかなと思って省いたものですが、やっぱり載せておきます。どれも良いので。

 

Kurt Rosenwinkel『The Remedy』

レメディ~ライブ・アット・ヴィレッジ・バンガード

レメディ~ライブ・アット・ヴィレッジ・バンガード

 

 

youtu.be

 

 

・Takeshi Shibuya『Essential Ellington』

エッセンシャル・エリントン(HQCD仕様)

エッセンシャル・エリントン(HQCD仕様)

 

 

 

・Sviatoslav Richter『Bartok: Piano Concerto No.2 & Prokofiev: Piano Concerto No.5』

バルトーク:ピアノ協奏曲第2番

バルトーク:ピアノ協奏曲第2番

 

 

youtu.be

 

 

・Sviatoslav Richter『Szymanowski: Piano Sonata No.2 & 3, Mythes』

Szymanowski: Sviatoslav Richte

Szymanowski: Sviatoslav Richte

 

 

youtu.be

 

 

・Sviatoslav Richter『Schubert: Piano Sonata #21』

シューベルト : ピアノ・ソナタ第21番

シューベルト : ピアノ・ソナタ第21番

 

 

youtu.be

https://itun.es/jp/7537v

 

 

・Elisso Wirssaladze『Schumann: Arabeske, Sonate op.11, Fantasie, etc.』

Elisso Wirssaladze: Schumann

Elisso Wirssaladze: Schumann

 

 

 

Pan Sonic『Oksastus』

shop.kvitnu.com

 

 

・Otis Brown III『The Thought Of You』

The Thought of You

The Thought of You

 

 

https://itun.es/jp/06DG1

 

 

・Jon Irabagon『Behind The Sky』

Behind the Sky Feat. Tom Harrell

Behind the Sky Feat. Tom Harrell

 

 

soundcloud.com

https://itun.es/jp/5TGH9

 

 

・Asmus Tietchens + Richard Chartier『Fabrication』

richardchartier.bandcamp.com

https://itun.es/jp/G3HR2

 

 

 

2015年10月のリスニング

今月は一際引きこもって音楽ばっかり聴いてたからか多いです。

 

・John Wiese『Circle Snare』

helicopter.bandcamp.com

 

・Coppice『Cores/Eruct』

futurevessel.bandcamp.com

 

・Gianluca Favaron + Stefano Gentile『Entretien』

www.art-into-life.com

 

・Gianluca Favaron『Surfaces』

www.art-into-life.com

 

・Grischa Lichtenberger『LA DEMEURE; il y a péril en la demeure』

La Demeure; Il Y a..

La Demeure; Il Y a..

 

 

soundcloud.com

https://itun.es/jp/HMJH9

 

・Russell Haswell『As Sure As Night Follows Day』

As Sure As Night Follows Day

As Sure As Night Follows Day

 

 

soundcloud.com

https://itun.es/jp/82EO9

 

・Hiatus Kaiyote『Choose Your Weapon』

Choose Your Weapon

Choose Your Weapon

 

 

youtu.be

youtu.be

 

・TRIAC『Days』

lineimprint.bandcamp.com

 

Maria Schneider『Sky Blue』

Sky Blue

Sky Blue

 

試聴はこちらから ↓

 

・L'Arc~en~Ciel『ray』

ray

ray

 

 

Sam Prekop『The Republic』

samprekop.bandcamp.com

 

音速ライン『100景』

100景

100景

 

 http://www.nicovideo.jp/watch/sm667187

 

ほんとはもっとあるんですけどこのくらいにしときます。

 

 

Russell Haswell 『As Sure As Night Follows Day』

 

たまには更新しなきゃなってことで最近ヘビロテしまくってる逸品について走り書き。

 

As Sure As Night Follows Day

As Sure As Night Follows Day

 

 

boomkat.com

 

今年になって『Live Salvage 1997→2000』を初めて聴いてその魅力に憑りつかれ、5月のUnitでのライブにも行ってぶっ飛ばされたりと自分の中での今年の音楽のメイントピックのひとつには確実になるだろうRussell Haswellが、えぇ絶好のタイミングでPowellのDiagonalからリリースですよ。

あらかじめ公開されてた音源を視聴した段階でこれは期待できそうだなってのはハッキリ感じてたんですが、いざ手元に届いて(といっても買ったのはデジタルなんですが…)みてもこれが全く期待裏切らない出来でして。

 

音の内容としては同じくDiagonalからの『37 Minutes Work Out』に連なるもので、おそらくモジュラーシンセで出してると思われるノイズや歪んだシーケンスが、これまた極端に歪んでいたりあるいはチープだったりする質感のビートに乗るっていう構造的にはシンプルなものがメインなんですが、ボトムに対して無関係に思える周期でノイズ鳴らしてみたり(3曲目)とどっかしらに破綻が仕込まれてる感じです。

あと今作ではそういったノイズとビートが同居せず、ノイズのみやビートのみで成立しているようなトラックも多く収録されてまして、4曲目辺りのノイズのみのトラックは暴力性もさることながら(シンセのツマミいじってるだけなのかもしれませんが)音が急にグニョンと曲がるところがやけにドラッギーだったり、ビートのみのトラックは手打ちっぽいギクシャクしたリズムがフィジカル回帰的な最近の電子音楽の潮流を感じさせる一方そのパロディ的にすら聴こえるあまりのスカスカさ加減がそういった読み取りを嘲っているようにも感じられたり、まぁとにかく結構思い切ったことをいろいろやってくれてます。

ノイズのみだったりビートのみだったりするトラックは割合時間が短かったり展開なかったりなのでちょっとスキット的に聴こえたりする面もあって、ゆえにやっぱビートとノイズが絡む曲がメインなのかなって気がしますし、そういったアルバム通しての起伏もあってビートとノイズ絡む曲では尚更ブチあがるなコレって。特にビートに(サンプリング素材を加工したものかシンセで生成したものかわかりませんが)インダストリアルな“ガコンッ”みたいな音絡んでくるのとかたまらんですね。

あと今作はウェブ上で見つかる紹介文なんか見ると “テクノ、デスメタル、そして「エクストリーム・コンピューター・ミュージック」の要素を取り入れて” いて、また “Jeff MillsやHardwax(Robert HoodがM-Plantの前に運営していたレーベル)に影響を受けたというフロア・フレンドリーなトラックも数曲含まれている” ってなことらしいんですが、

そういうの読まず自分が聴いた第一印象は“インダストリアル系の人がヒップホップ作った、というかぶっ壊したみたいだな”って感じでして、ビートの手打ちっぽい感じのグルーブだったり(ただ今作のビートはヒップホップ的なもたり感や沈み込む感じではなくてつんのめるような感じですが)、チープな音が入ってくる時にはその質感に瞬間的にCompany Flowを想起させられたり、また5曲目のノイズトラック『Rave Splurge nO!se FM』のドラッギーさにはKanye WestYeezus』の一曲目「On Sight」に近いニュアンスを感じたりしたんですよね。『Yeezus』は二曲目の「Black Skinhead」でマリリン・マンソンをサンプリングしたりもしてて、オリジナル・インダストリアルを消化したいわゆるインダストリアル・ロックにインスパイアされて作ったところもあったでしょうし、『Yeezus』がヒップホップ側からのインダストリアルへの接近とすれば『As Sure As Night Follows Day』はその逆か?なんてのは夢想しすぎですね(笑) なんといってもハズウェル本人が影響源としてヒップホップの一語を発していないのですから!

まぁヒップホップ含めた広義のクラブミュージックという括りであれば、インダストリアル/ノイズ側からのそちらへの接近は数年前から特に盛んになってるところなのでその動きの最前線ってところが妥当でしょうかね。適当に走り書きしてライトに更新するつもりが随分長くなってしまいました…。

とにかくドラッギーなノイズとインダストリアルなサンプル(?)とビートが絡む曲とかは本当に皆が凶悪な笑み浮かべながら踊り狂えるような危ない魅力が充満してるんでこんな駄文は読み飛ばしてさっさと聴けって話です。Apple Musicでも聴けますしね。

 

あとジャケがかっこいい!ジャケがかっこいい!

 

soundcloud.com

 

 

Jacob Kirkegaard 『5 Pieces』

今年の2月によく聴いたもので挙げている通り、買ったのは今年の初めになるんですが未だにたまに聴くんですよこの作品。

 

f:id:yorosz:20150227163659j:plain

www.art-into-life.com

 

Jacob Kirkegaard電子音楽の分野では有名どころといっていいTouchってレーベルからいくつも作品を出してる人だったのですが、これはPosh Isolationっていうデンマークのインディー・レーベルから。同地の現代美術館で開かれる初の個展に合わせて出版されたものだとか。

 

何よりカセット三本組っていう販売形態が目を引く一品ですが、収録曲の内容も思い切ったもので1、2本目はA面B面にそれぞれ30分近い1曲が収録され、3本目はA面B面併せて60分でひとつ曲ってことみたいです。音の内容は三本とも端から端まで“聴く”っていうより“流す”っていう用途しかあり得ないようなそれ。

“いい曲”とかそういう風に楽しむものではなくて、あまり“音楽”として意識して接するものでもないような気さえする、そしてそういったこちらの頭に浮かぶあれこれを肯定するでも否定するでもなくただただ透過していくような。

音楽に現実を塗りつぶすような、音でそれ以外のノイズをかき消すような没入感を求めている人には合わないかもしれないけど、例えば音楽なんて聴きたい気分じゃないけど何かしらの音を流していたいってタイプの心持ちを理解できる人には重宝するんじゃないかなっていう“アイテム”ですね、これは。