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The International Nothing『The Dark Side Of Success』

去年の年末に買ってから全然ちゃんと聴いてなかったんだけどヤバいヤバいうわーーーーこれマジか…。

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ドイツ、ベルリンを拠点に活動するクラリネット奏者のふたり、カイ・ファガシンスキー (Kai Fagaschinski) とミヒャエル・ティーケ (Michael Thieke) のデュオ・プロジェクトInternational Nothingの三作目。2014年作。 リリースは1st, 2ndと同じくFtarriから。

即興演奏の分野でも活動する二者ですが、このプロジェクトで演奏されるのはすべて本人らによる作曲作品。

音程の動きはそれなりにあるのですが、メロディーを形成しているような場面はあまりなくて、ユニゾンで音を奏でる場面であっても、低音、高音でそれぞれの演奏ラインのすみ分けがされているような場面であっても、意識や関心は二者の音が混ざり、干渉することによって生まれる効果、響きに向けられているように思います。

ニゾンで音を発したときの干渉による音の揺れ、そこに重音奏法で倍音を重ねる場面なんかはとてもクラリネット2本による演奏とは思えないですね…。瞬間的にはクラリネット2本+サイン波オシレーター3個くらいの編成にすら聴こえます。それくらいそれぞれの響きが埋もれることなく個別に、まるで断面図を見せられているかのように耳に入ってくるんですよね。そしてそれがめちゃくちゃ美しいっていう。冒頭でうわーマジかって書いたのはこの部分に対してで、こうやって書いてるのも主にその部分に感動したから。本当に美しい響きだと思います。また、干渉や音の積み方など、周波数、倍音への配慮が感じられるだけでなく、音量の繊細なコントロールによって2者の音(混ざりあったひとつの音であったり、個別の複数の音であったり)が、左右に、時にはグラデーションの色合いが変化するように有機的に動いたり、時にはエフェクティブに飛ぶように感じられたりするのも興味深いです。

作曲から演奏まで、それを成り立たせる諸要素のコントロールに目を丸くする作品ですが、機械的ともとれるその徹底ぶりに対して、生まれている音楽は、クラリネットという楽器の持つ音色の(特に低音部での)柔らかさ と(特に高音部での)鋭さによってか、または演奏する限り不可避に入りこむことになるブレスの音によってか、簡単に有機的、無機的と判断できないような不可思議な魅力を放っているように感じます。

静かな夜なんかに集中して聴くと身じろぎひとつできなくなるくらい強力に惹きつけるものがありますよ。(反面、騒がしい環境で聴いたり、聴き流して楽しむような音楽ではないと思います)

このユニットの演奏は昨年のFtarri Festivalで観たんですけど(正にこのアルバムの曲を、1曲目を除いてフルで演奏してた)、なぜかこの人らの時だけ異様に眠くて演奏に全然集中できなかったんですよね…。なのでその時の印象はなんだかよくわからないって感じだったんですが、改めて集中して聴いてみるとこれは凄いなと。今更ながらあの時眠かったのが悔やまれる…めっちゃ惜しいことしてますね自分…。

 

 

今月のお気に入り(2016年1月)

今年も月毎にまとめていこうと思います。

 

 

トルネード竜巻『ふれるときこえ』

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感想こちらに書いてます。

 

 

・DJ MEREDITH『Burn Trax』

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bamuletさんの2015年のジューク/フットワーク5選は(普段あまり聴かないジャンルなこともあって)どの作品もとても新鮮で楽しかったんですが、一番気に入ったのはこれかな。音の質感がなんだかヒップホップ聴いてるように気分にさせてくれるところもあってかっこいい。他に挙げられていた作品では、Sun People『For Those Who Are Not As Others』とJlin『Dark Energy』も買ってよく聴いてました。特に後者は三連を多用したトラックが最初はちょっとしつこく感じたんですが慣れるにつれてクセになってきて、聴いた回数はDJ MEREDITHより多いかも。

 

 

・Matt Mitchell『Vista Accumulation』

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Merzbow, Mats Gustafsson, Balázs Pándi, Thurston Moore『Cuts of Guilt, Cuts Deeper』

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これ聴くときは伊達さんさんのこちらのレビューがクッソ素晴らしいのでお供に。

 

 

・RACHEL MUSSON + MARK SANDERS + LIAM NOBLE『TATTERDEMALION』

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・Le Berger『Music for Guitar & Patience』

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Jefre Cantu-Ledesma『A Year With 13 Moons』

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アンビエント・シューゲ。シューゲイザーの持つセンチメンタルな面もノイジーな面も薄めることなく表現できてると思うしアンビエントとしての機能性もあるしでズルい。 嫉妬の対象。

 

 

・enso56『Mare Smynthii』

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フィールドレコーディングにピッチダウンなどの加工を施して作られたモノクロームで徹底的に非ロマンチックで退廃的というか廃材的(?)なアンビエント作品。カーテン閉めた部屋で片目瞑って探し物してるような気分になったり。

 

 

・Eryck Abecassis『Ilumen』

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・Taku Sugimoto『Opposite』

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・Otto A Tottoland『Pinô』

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・John Escreet『Don't Fight The Inevitable』

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トルネード竜巻『ふれるときこえ』

2016年、最初に聴いたアルバムはこれでした。

 

 

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2009年より現在まで活動休止中のバンド、トルネード竜巻のセカンド・アルバム。このバンドには2008か2009年辺りに、スーパーカーやSCLLなどのバンドが好きでそれらに近い音楽性のバンドを探していく中で出会って、1st、2ndどちらも買って聴いていたのですが、いまいちハマれなかったんですよね…。でも昨年末にちょっとしたきっかけで聴き返してみたところすごく良くて。いろいろと思うところもあったのでなんか書いとこうかなーと。

なんか捻くれたインディーバンド然としたバンド名ですが、音楽的にはポップスと言ったほうがしっくりくる感じ。“ジャンルを超越した音楽性”というのがこのバンドを語る際には多く用いられるセンテンスらしいのですが、今作は1st『アラートボックス』に比べるとそういった作編曲における遊びが表立って印象に残る部分は少なく、さりげなく洗練されたかたちで生かされている印象です。私はそれによって普遍的なポップスとしての強度が増していると感じますが、1stやそれ以前からのファンの方には好みは分かれるところかもしれませんね。また“ポップスといったほうがしっくりくる”理由は録音の質感も大きいのかなと。その辺の事情にはあまり詳しくないですけど、Jポップとかアニソンとかの録音でよく感じるようなちょっとキツいくらいの音のクリアさとか、近くで鳴ってる感じが強いんですよね。自分は例えばスーパーカーだったら(それが理由ってわけじゃないですが)最も宅録感のあるセカンドが一番好きだったりしますし、SCLLも冷たすぎも温かすぎもしないリバービーな質感のサウンドに惹かれてた面はあったと思うので、その流れで聴いたこのバンドにもそれに近いサウンドを無意識に求めていたのが当時ハマれなかった一因なのかなとか、今になると思います。

個人的な話が長くなってしまいましたね…。音楽の中身にも触れときたいと思います。やっぱ一番印象に残るのはボーカルの声、歌い方かな。平易な言葉で書かれた歌詞を丁寧に歌うは様はなんか“うたのおねえさん”っぽいというか、誤魔化しがないんですよね、歌に。作曲はキーボードの方がほとんどらしいですが、自分が作曲者の立場だったらこれほどメロディーを一音一音クッキリ歌われるのはちょっと恐いと思う…。アレンジの面は凝ってるのかもしれないけど、核となるメロディーの提示の仕方に関しては裸で仁王立ちじゃないですけど、真っすぐブレずにこちらを見つめてくる。話がまた2008年辺りに戻っちゃいますけど、当時の自分はこの歌い方も多分ダメだったんだろうな…。ナカコーにしろSCLLの大坪さんにしろ、そのメロディーラインの誤魔化し方というか、歌い方による味付け方は特徴的だし。その辺りのバンドの音や声が醸し出す“曖昧”さみたいなものとは、このトルネード竜巻の音楽はちょっと距離があるように思います。自分の好みがその頃と大きく変わったとも思わないんですが、当時それなりに聴き込んでもピンとこなかったのが今は大丈夫になったのはタイミングがよかったからなのかなんなのか…理由はわからないですけど音楽ってこういうこと起こるから不思議ですね。

あとこのアルバムは12曲入りなんですけど、前半(1~6曲目)と後半(7~12曲目)で結構雰囲気が違ってて、特に前半が素晴らしい。後半の曲群は遊び心を感じさせる曲調の飛躍(7曲目)だったり、ゆるい世界観の歌詞(8曲目)だったり、シングル曲(『アラートボックス』収録の「恋にことば」や本作収録の「パークサイドは夢の中」)などで顕著なイチニノサンで飛び込むような(NHK亀田音楽専門学校』で“サビ前のジャンプ台”と形容されていたような)王道ポップスなサビへの導入など、これまでの彼らを特徴付けてきた要素が多く出てきますけど、前半はそれらより“新しい魅力”と言っていいかはわからないですけど、違う面が印象強くて、それは何かっていうと“リピテーション”ですね。前半の曲の中で唯一のシングル曲「言葉のすきま」や3曲目「サンデイ」のリフレインの先に見えてくるような、螺旋階段をグルグルと上って行き着くようなサビへの到りかたは、先述したようなイチニノサンで飛び込むようなものとは違ってますね。4曲目「君の家まで9キロメートル」と6曲目「あなたのこと」はほとんど淡々としたメロディーの繰り返しのみで成り立っているような曲ですし、そんな進行感に乏しい曲調の中で「リアルなんてのはこんなもんさ」と歌われる4曲目なんか間違いなくハイライトでしょう。6曲目も淡々とした曲調ゆえにか、間奏のギター(ただジャーンとコード鳴らした後にアルペジオ弾いてるだけ)が異様にかっこよく響きます。

こういった“反復”を中心に組み立てられた、流れていくようなポップミュージックって個人的にめちゃくちゃ好きなところでもありますし、これまでの彼らがその音楽的な飛躍やそれを可能にする運動神経など、いわばコーダルな面で評価を受けてきたとするなら、今作はその場にたたずんで語るようなモーダルな面、その魅力がそれをパワーバランス的に上回っている作品と言えるんじゃないかと。歌詞の面でも前半の曲はちょっと息苦しいくらいのトーンで人を思う際の心象風景を描いたものが多くて、この感じで最後まで通してたらもっと凄いことになってたんじゃないかとか思ってしまいますね。まぁそれだと重いアルバムになってた可能性もありますけど。

 

 

2015年に聴いた旧譜ベスト

2015年に聴いた旧譜の中で、これ好きでよく聴いてたなってものや強く印象に残ってるものをまとめときます。全20作品(絞るの大変だった…)。順位は付けてないですけど思いついたものから順に並べてるので上にあるものほど印象強かったってのはあるかもしれません。

文中の“今年”は2015年のことです。

()内はリリース年。

画像がYoutubeなどの試聴ページへのリンクになっています。

 

 

・Joe Panzner / Greg Stuart『Dystonia Duos』(2013)

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好きなノイズのアルバム?これですよこれ。このふたりは最強なんですよ。Youtubeに上がってる2曲目が好きで何度も聴いててずっと欲しいと思ってたんでFtarriの店頭で見つけた時はその場で小躍りでしたよ。

 

 

・Haptic『Excess of Vision: Unreleased Recordings, 2005-2014』(2014)

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Best of 2014(再考版)でも選んだ通り、これめちゃくちゃハマりました。1曲目はBest of 2015のほうで選んだCarl Michael von Hausswolff『Squared』の1曲目が好きな人にも是非聴いてみてほしい。そちらと比べると主体となるドローン以外の装飾的な音の比重が割合高くてインダストリアル感が強めですが、それらの音からも常に持続への意識のようなものが感じられるので個人的には結構近い感覚で聴いてます。2曲目も構成はやや異なりますが(1曲目は徐々に音が足されていくのに対し、2曲目は音楽を構成する各音がほぼ鳴りっぱなしの状態で序盤から提示される)、同じ感覚で聴けるので、未リリースの音源をまとめたものとは思えないほどトータルで統一感のある素晴らしいインダストリアルドローンなアルバムになってます。これは本当にすごい。

 

 

・Haptic『Abeyance』(2013)

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『Excess~』でドハマりしたわけなんですが、それ以前に買っていたこちらにも徐々にハマってきましてどちらも省くわけにはいかないほど聴いてたので同じアーティストの作品でも気にせず載せときます。こちらは『Excess~』よりかなり抑制されたドローン。というか換気扇の音と薄くリバーブかけたホワイトノイズとサイン波を重ねたような音がずーーーーっと続いて、時たま冷たいトーンのピアノが小さな音で加わるっていうただそれだけの40分。最初聴いたときはふーんって感じだったんだけど、なんか気付いたら聴いてた。疲れてなんも聴けねぇよって時でもこれは聴ける。自分にとっては常用薬みたいなアルバム。Youtubeにフルであるので是非。割合としては高くないだろうけどこれめちゃくちゃ好きっていう趣味傾向の人一定数いると思うし、そういう方にとっては必携の一枚になり得る作品だと思います。

 

 

・Joseph Clayton Mills, Deanna Varagona, Carrie Olivia Adams『Huntress』(2014)

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・Thomas Ankersmit『Live In Utrecht』(2010)

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私の2015年はこの作品から始まりました。感想はこちら(張り切って1月7日に書いてますねw)

 

 

・Fabio Selvafiorita / Valerio Tricoli『Death By Water』(2011)

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・John Wiese『Circle Snare』(2009)

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ジョン・ウィースは名前は知ってるし音源も全く聴いたことないわけではないんだけどいまいちピンときてない作家、だったんですが、2015年作『Deviate From Balance』で完全にブチ抜かれましてライブまで観に行き、そんでライブ会場で本人から買ったのがこれ。本作は様々な作風の曲が収められている『Deviate From Blance』の中でも特に自分がかっこいいと思った要素のみで構成されたような一枚で、トータルタイム30分ってタイトさもあって、これ買ってからはこちらばかり聴いてました。実際にテープ加工で作られてるかは定かではないですが、逆回転する感じや暴力的な変調、そしてそれらが引き裂かれるように「ビィャーー!!」ってなるとこなんかはなんかそれっぽい感じしますね。聴いてると音っていう目に見えないはずのマテリアルが、目の前で紙屑のように丸められたり、引き裂かれて左右に散らばったりするような手触りが感じられるんですけど、その紙屑は実は薄い金属板で、それを丸めた彼の手は気付いたら肉が裂けまくって血まみれ…みたいな異様な生々しさまであって、最高すぎてゾッとするなぁ~。でもこの作品の、そういった“目の前で起こっていること”のみを強く意識させるというか、聴取する側の視点がその一瞬一瞬の音の快楽性にフォーカスしたようなミクロな視点に(いつの間にか)立ってしまう感じって、実は、時間が経過するにつれて音がどんどん大袈裟に歪んでいって、最初のほうは左右センターを行き交って明滅するように鳴ってた音が最後のほうでは三点同時放射みたいになる瞬間もあったりっていう、構成の面だったり音の質感の遷移だったりへの意識、いわば制作側のマクロな視点によって成り立って(しまって)いるというか、全部計算ずくでそう仕向けられてる気がして、なんというか質の悪い巧妙さみたなもの感じますね。この人うまく人殺せるんじゃないかな(笑)

 

 

・John Escreet『Sabotage And Celebration』(2013)

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2015年に聴いたジャズ系の音源で一番の収穫はこれだったかな。今年はJTNCとかMikikiでも書いてる北澤敏さんの推してるものとか中心にメインストリームな(?)コンテンポラリージャズを結構聴いてたんですけど(他にはDonny McCaslin, Maria Schneider, Mark Turner, Kurt Rosenwinkel などもよく聴いてました)、この作品には本当に驚かされました。ジョン・エスクリートはこれを聴く前に『Exception To The Rule』『Consequences』『Sound, Space And Structures』って順番で聴いてて、中でも『Consequences』は特に好き、でもちょっと聴いてて疲れる感じというか肩肘張って演奏してる感じが苦手かなって思ってたんですけど、このアルバムはピアノトリオ+1or2管っていうオーソドックスな編成が多かった過去作と比べて、同じく二管のクインテット編成を基本としながらも、そこに曲によってストリングスやブラスセクションを絡めたり、ギターやコーラスなども演奏に加わったりする割合手の込んだ作風になってるにも関わらず、以前から感じていたそういった問題点は完全にクリアされてて通しで聴いたときの聴き心地のよさは段違いな印象。この辺は録音の質感の違いも大きいのかも。デビューアルバムの頃からフリー/アヴァンギャルドな面を巧みに組み込んだ演奏や全体の構成のセンスは変わってないと思いますし、また作品によってはインタールード的なトラックを配したりもしていたので、一枚のアルバムとして総合的な強度を持った作品を作りたいって思いはずっとあったんじゃないかと推測できるんですけど、個人的にはその方向性は今作で極まった感があるなと。次作『Sound, Space And Structures』ではちょっと違った方向に舵をきってるし、本人的にも今作にはかなりの手応えがあったんじゃないかなぁ。収録されている7曲(1曲目はイントロ的なトラックなので実質6曲)は本当にどれも聴きどころだらけで、1曲づつ細かに触れていくと長くなりすぎるのでやらないけど、全体通して特に感じたのは作曲とパートの構成の巧みさ、そしてなにより編成上それらの土台を形づくることになるJohn Escreet(p), Matt Brewer(b), Jim Black(ds) っていうトリオの強固さですね。二管のデヴィッド・ビニーとクリス・ポッターがどれだけ吹きまくっても曲の枠組みたいなものが全く崩れないのが恐ろしい…。ジム・ブラックのドラムってこれ聴くまでは音が硬くてかなり苦手で、これはジョン・エスクリートの演奏にも同じように感じていたことなんですが神経質でキツい印象があったんですけど、今作ではマイナスとマイナスかけたらプラスになるじゃないですけど、とにかくめちゃくちゃハマってるんですよね。1曲だけピアノトリオでの演奏が収録されてるんですけど、それもこのトリオで1枚アルバム出してくれって思わせられるほど抜群にかっこいい。ポスト印象主義(?)的というかメシアン辺りを連想させるようなモチーフ、和音、アルペジオと、瞬間的にはセシル・テイラーさえ連想させる鍵盤上で踊り狂うような上昇する音型や強打を巧みに行き来するとんでもないポテンシャルのソロが聴けます。前述したような“行き来”が曲のパート構成全体に反映されたような3曲目のタイトルトラック、そういった分かりやすく言うと現代音楽に近いようなシリアスさと対を成すような明るいフュージョン寄り?な5,7曲目(エレピの使用やギターやブラスセクションなどの参加も効果的)、これぞコンテンポラリージャズって感じの曲がりくねったテーマの決まり具合から二管のテンションの高いソロまで文句なしにかっこいい2,6曲目と、タイプの違う曲の収録バランスもいいし、ほんと“完璧”と言って差し支えない作品だと思います。とにかく最初から最後までアルバムトータルで一瞬たりとも退屈させない素晴らしさで、そういった意味ではSteve Lehman Octet『Mise en Abîme』、Ingrid Laubrock Anti-House『Roulette of the Cradle』なんかと並べたくなる出来栄え。一枚のアルバムってものを価値の単位として重要視するというか、物語性とは限らないんですけど、名曲がいくつかあったりテンションにムラがあるよりは、粒が揃ってるものを求めてしまうのってロックリスナー的な視点なのかなって思ったりもしますし、特にフリージャズなんかはライブ感というかテンションのムラ込みで楽しむって面もあると思うんですけど、やっぱ個人的には録音作品を聴く喜びを一番感じられるのってこういう作品に出会った時なんですよね。なので音楽を一回性よりも再現性ありきで楽しまれる方、特に一枚のアルバムを繰り返し聴いてじっくり細部を噛み砕きながら楽しむのが好きな方には是非手に取ってもらいたい。プログレ好きな方にもいいかも。あとこれは余談なんですが、3曲目「Sabotage And Celebration」で冒頭のピアノの和音の後に入ってくるストリングスの和音(おそらくピアノとユニゾン)と、RadioheadHow To Disappear Completely」の冒頭で鳴らされるストリングスの和音がかなり近い(音とって調べたわけではないので印象論です)んですけど、そういえばその時期のレディオヘッドもオンドマルトノの使用だったり「Pyramid Song」の不可逆リズムだったりメシアンを連想させる部分は多いんですよねー。コンテンポラリージャズとレディオヘッドの関係って個人的にかなり興味惹かれるところなんですけど、それを考えるときにメシアンの音楽だったり和声感ってのはかなり重要なブリッジになりそうだなとか思ったり。

 

 

・David Binney『Graylen Epicenter』(2011)

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デヴィッド・ビニーの作品はこれ含めて5作ほど聴いてるんですけど、これはヴォーカルが入ってたりツインドラムの曲があったりで、特にやりたい放題やってやった一枚って気がします。トータルタイム70分超えで参加メンバーも多いので最初は面食らったんですけど、曲調は明るめでフォーキーな曲もあるし、グレッチェン・パーラトの歌声も爽やかなのでアルバムとしての風通しは意外と悪くないです。それぞれに違ったタイプの見せ場が用意された様々な曲が入ってるんですけど、個人的には1,2,3,9曲目辺りが好きですかね。特に1曲目「All Of Time」の冒頭の息の長いテーマから繋がって、単音のリフのしつこい繰り返しにツインドラムが絡む場面と、9曲目「Any Years Costume」の中盤辺りでトランペットとピアノのアグレッシブなソロが並走するところにツイ(ry~な場面とか最高。1曲目のそれはいつまでも続けてくれってくらい二人のドラマーのやり取りが面白いし、9曲目はただでさえめちゃくちゃスリリングなコンテンポラリージャズ(この曲のAmbrose AkinmusireとCraig Tabornヤバすぎる…!)なのに+α的に聴きどころが上乗せされてる感じで聴覚上立体的にすら聴こえるし…ほんと贅沢なことしやがります。2曲目のタイトルトラックは曲調自体は牧歌的なんですけど、1曲目以上にいくつものもはやプログレッシブといっていいくらいの展開が用意されてて、この雰囲気的に聴き流せそうなタイプの曲になぜにそれほどまでに凝りに凝ったことするのかワケがわからない何考えてんだって感じ(笑)。1曲目と2曲目聴けばこの人のいち奏者としてではなく、トータライザーとしてのヤバさみたいなところはわかってもらえるんじゃないかと。頭ん中どうなってんだよ。んで3曲目「Equality At Low Levels」はいち奏者、ソロイストとしての魅力が出てるんじゃないかなと。サックスとピアノが短いソロを交互にとるってのを延々やってる曲で、だんだん音数増えて演奏が加速度的に熱を帯びていく感じがいいです。デヴィッド・ビニーのソロって、この曲に限ったことではないんですけど、外した音をわざと目立たせるような音数の少ないところから始まって、坂道を転がっていくように徐々に加速していくように音数増えていって最終的に停車線思いっきりはみ出すみたいに勢い余って吹きすぎるっていうのが多い気がします。前掲の『Sabotage And Celebration』の2曲目とかそんな感じだし、この曲でも最後のほうはそうなってる感があるんですけど、交互にソロをやりとりするってかたちにそれぶち込んでくるこの人もこの人ならそれに平然と応えてるクレイグ・テイボーンもやっぱどうかしてる(ぜw)。他の曲もいろいろ面白いんですけど長くなるんでこの辺で。飽きないっていうよりは単純に情報量多くて消化に時間が掛かるって意味で長く楽しめる作品なので、金欠な人にオススメです(笑)

 

 

・Ambrose Akinmusire『The Imagined Savior Is Far Easier To Paint』(2014)

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・Tyshawn Sorey『Alloy』(2014)

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・Mary Halvorson Trio『Ghost Loop』(2013)

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2015年のメアリー・ハルヴァーソンといったらギターソロアルバム『Meltframe』なんですけど、私はそちらが出たのと同じタイミングでこれを入手してしまい、結果こっちばかり聴いてました。John Hebert(b), Ches Smith(ds) とのトリオでは2枚目になるアルバム。この人の音楽は何度聴いても聴き切れなさが残るというか、再生中は結構手応えみたいなものを感じれるんだけど、終わってちょっと時間がたつとどんな音楽だったかうまく思い出せなくてまた聴いてしまう。みたいなことが多いんだけど、このアルバムは1枚目の『Dragon's Head』よりもその感覚が強くなってて、不定形の音楽度合がすごいことになってる。まぁ単純によくわかってないから聴くのを止められないだけかもしれませんけど(笑)。しっかりと作曲された非常に記名性の強い旋律部とそれにある程度基づいているようにも聴こえる即興の部分からなりたってるんですが、作曲と即興をグラデーショナルに、まるで溶けていくように行き来するものだったり、それらの切り替え部分が割合しっかりと見えるものだったりがごちゃ混ぜに入ってるのが捉えどころのなさに繋がってるのかなぁ。でもその塩梅が取り付く島もないってほどでは全然ないところが絶妙。構成はオーソドックスと言えそうなものもあるのでむしろすぐに記憶できてもおかしくないタイプの音楽だと思うんだけど…う~んやっぱなんかその辺魔術めいたものがこの人にはあるんじゃないかと思ってしまう。

 

 

Q-Tip『Amplified』(1999)

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ATCQでおなじみすぎるQ-Tipの1stソロ。1999年作。これは今年になって初めて聴いたものではないんですが、なんとなく聴き返したらとんでもなくハマってしまったので。ほとんどの曲をQ-TipJ Dilla(この時点ではJay Dee)が共同でプロデュース。私はJ Dillaが関わった作品ではSlum Village『Fantastic, Vol. 2』がダントツで好きな人間だったんですが、今聞かれたらこっちって言っちゃいます。まぁ大した数聴いてないんですけどね。ATCQの諸作よりも好き。シンプルで、押しの強い華やかさは控えめだけどどれも佳作揃いのトラックの上で、クセもあるけどスムーズで、彩り豊かなのに淡々と流れていくQ-Tipの不思議なラップが存分に楽しめます。客演が続く最後の2曲はちょっと余計な感じもあるんですが(できれば客演なしでいってほしかった…)、それを除いた曲がどれも本当に甲乙つけがたいくらい好き。そんな中でもハイライトを挙げるなら7曲目「All In」かな。この曲のスネアの入り方がなんか異様にかっこいい。その音色も正にディラ!って感じの抜けのよさだし。全体的に遊び心よりはミニマルな構成美を感じさせる作風で、収録時間も長くないですし、歴史に名を刻むような名作っていうよりは粒ぞろいの佳作って形容が似合うような作品なんですけど、それゆえに本当に飽きないですし、いくらでもリピートして聴けてしまうような身軽さがあって、聴いてるだけでゴキゲンになれる最高に心地いいアルバムです。

 

 

Loren Connors『Airs』(2015年再発。オリジナルは1999年)

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・HIsato Higuchi『2004 11 2005 4』(2005)

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・France Jobin『sans repères』(2014)

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感想はこちらに。France Jobin好きでこれチェックしてない人はひとつ大きなものを見落としていると言える。かも。

 

 

・Klara Lewis『Ett』(2014)

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Megoから2014年にLPとデジタルで出てた作品。ちなみにこの人WireのGraham Lewisの娘さんらしいです。これはなんというかめちゃくちゃ傑作って感じでもないんですけど、なんかよく聴いたんですよねー。環境音うまく使ってる感じとか、ダークさと無機質さが程よい温度感でアルバム全体に流れてる感じとか絶妙で、気軽に聴けちゃうのがいい。ライブも観に行ったけどなかなかよかった。「Shine」は名曲。

 

 

・Sviatoslav Richter『Brahms: Piano Concerto #2, Piano Sonata #1』(1988)

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リヒテルは今まで自分にとってそれほど特別な演奏家ではなかったんだけど、知人の紹介でいろいろ聴かせてもらったりしたおかげで今更ながらこの人の凄さに少しは気付くことができました。クラシック音楽はここ数年はほとんど聴いてなくて、好きな曲とかも固まってしまってた感じだったんですけど、今年は新しく好きな曲がいくつかできたのも嬉しかった。シマノフスキピアノソナタ2番バルトークピアノ協奏曲2番シューベルトピアノソナタ21番、そしてこれに入ってるブラームスピアノソナタ1番リヒテルの演奏に触れてなかったらこれほど好きになれてたかどうか…。すでに好きだった曲においてもファーストチョイスになりそうな演奏にも結構出会いましたし(ショパンバラード3番、大好きなドビュッシーの版画、そしてこれに入ってるブラームスピアノ協奏曲2番など)、本当にこの方面でこれほど収穫を得ることになろうとはって感じです。多謝。

 

 

・Tom Lawrence『Water Beetles Of Pollardstown Fen』(2011)

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今年はフィールドレコーディング系の音源はそれほど新しく買ったりはしてなくて、聴きたくなったらクリス・ワトソンばっかり聴いてたんですけど、これはすごく良かった。沼地で録音した水中生物のコミュニケーション信号を捉えた作品とのことなんですけど、聴いてるぶんには虫や鳥や蛙の鳴き声をピッチダウンしたような音が大半で、そのやや曇った質感がすごく落ち着きます。それほど新しく買ってないって書きましたけどこれ出してるGruenrekorderってレーベルのはいくつか買って愛聴してましたね。Andreas Bick『Fire And Frost Pettern』はこれと甲乙つけがたい名作だと思うし、2015年作のHafdís Bjarnadóttir『Sounds Of Iceland Íslandshljóð』も良かった。

 

 

・Various Artists『Compilation ろ』(2008)

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NHK'Koyxeи名義でも活動するMatsunaga Kouheiの自主レーベルFlying Swimmingからリリースされているコンピレーションアルバム。Rashad Becker, Haswell & Hecker, Trevor Wishartの曲を収録。ラシャド・ベッカーの音源は貴重だし内容もいいんですけど、それ以上なのがHaswell & Heckerのライブ音源。10程度の1曲のみなんですけど、Russell Haswellのノンアカデミックな感じの暴力性とHeckerのちょっと頭でっかちすぎてなんかすごいことやってるんだろうけど聴覚上やや面白みに欠けるところがうまい具合に合わさって、個人的に凄く好みな演奏になっててこの曲だけかなり聴きました。Russell Haswellは今年になって聴いた『Live Salvage 1997→2000』もめちゃくちゃかっこよかったんですけど、ちょっと自分には重く感じるところもあるかなぁ…。まぁ気分次第でそっちがいいって時も全然あるんですけど。Haswell & Heckerにはこの感じで1枚アルバム作っといてほしかったなー。『Blackest Ever Black』って共作アルバムもあるんだけど、それはこれとは違った作風だし…。

 

 

以上20枚。どれも本当に素晴らしい作品でした!これで2015年のまとめは終わり!

Best of 2015 (15→1)

2015年の年間ベスト、いよいよ15位から1位までです。

50位から31位まではこちら

30位から16位まではこちら

画像がYoutubeなどの試聴音源へのリンクになっています。

 

 

【15】Fraufraulein (Billy Gomberg & Anne Guthrie)『Extinguishment』

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共に米国の音楽家であるBilly GombergとAnne Guthrieによるユニットの二作目。距離感の上手く掴めない淡くくすんだフィールドレコーディングや話し声、歌声、リバーブのかかった物音、などの音の層に加え、打楽器のように響くベースギターのハーモニクスや、船の汽笛のように響くフレンチホルンといった楽器演奏も用いた結構なんでもありな作風。楽器の音が入っていることもあってか音がリアルタイムに重ねられていっている感じもあるんですが、それらの音、手法を用いて描かれるのが「水辺の記憶」というか、その土地に染みついた様々な人、もの、こと、の残り香を断片的に掘り起こしてサウンドスケープ化したような、儚げな情景を常に思い浮かばせるようなもので、精妙に作りこまれたコラージュ絵巻としての鑑賞が可能なものになっています。

 

 

【14】Apartment House『James Saunders - Assigned #15』

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イギリスの作曲家James Saundersの楽曲を演奏家集団Apartment Houseが演じたアルバム。1曲45分。なおJames SaundersはApartment Houseのメンバーでもあるため、短波ラジオで演奏に参加しています。聴き心地はドローンに近いのですが、各楽器の発音は断続的なものが多いので、サウンドスケープといったほうがいいのかな。聴いていると「仄暗い水の底から」っていう形容が頭に浮かんでくるような響き(ただしホラー感はありませんのでご安心を)。音の関係性がほぼ変化しないので正直かなりダレるんですけど、前述したような仄暗い像の掴めない場所から響いてくるようなサウンドの立ち上がりに、それだけでこの位置に置きたくなるほど魅了されました。抜けそうな床の上を歩く際の板の軋みや、その具合を足先で感じとり察知しながら歩く際の身体感覚を想起させるような、ヴィオラやシンバルの擦音、カタカタと小刻みに震えるチェロやパーカッションなどが、視界をマスキングするようなオルガンのドローンと短波ラジオのノイズの中をユラユラと彷徨い歩くように現れ、横切り、姿を消す、そんな描写的にも思える音の連なりには、停電した建物の中で距離感の掴めない他者の動きを音で探っているような光景、心持ちを呼び起されたりも。

 

 

【13】Joe Panzner『Tedium』

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Greg Stuartとのコンビでのリリースが多かったけど今回はソロ。この二人は今一番好きなノイズ作家。この二人の音からは、(音をよく聴いてるだけで他の事をあまり知らないからかもしれないけど)思想や思念を排除したようなクールさを感じるし、だからこれだけ思いっきりノイズやっても重さやドロドロジメジメしたありきたりなアングラ感みたいなものがない。ハーシュノイズ的に攻めるところも音の動きがわかりやすく聴き取れるのがいい。

 

 

【12】Inner8『Inner8』

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テクノデュオDadubの片方のソロ。歪んだ音使い、前のめりなビートがめちゃくちゃかっこいい。最初と最後と中間部にドローントラック挟む構成もとてもいい。テクノを褒める時って踊れるとか心地いいグルーヴとか体感的な表現になることが多いと思うんですけど、これはとにかくまず“かっこいい”って感じ。この表現が似合う。

 

 

【11】Koenraad Ecker『Sleepwalkers in a Cold Circus』

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昨年のDigitalisからのアルバム『III Fares The Land』も素晴らしかったベルギー人サウンドアーティストの二作目。EMS Synthi100の電子音を中心に、弦や管楽器、マイクを極端に近づけて録音されたという物音、フィールドレコーディングなども用いて単なる音やフレーズ以上曲未満といった具合の楽想を作成し、それらを一曲の中で突然切断したり無音を挟んでフェードインさせたりすることで非常に足元の覚束ない正にタイトル通り「夢遊病」的なサウンドスケープを描いています。Synthi100による無表情な電子音によるマシニックで、ゆえにただただ快楽的でもある音響パートと、ゆっくり煙が立ち上るように現れる楽器音による情景描写的なダークアンビエント(?)なパートの、それぞれが持つ別種の不穏さの対比も効果的。いくつものパートが現れては消えるって構成の曲が並んでるので、聴いていると今何曲目なのかわからなくなりますし、集中して聴くととても疲れますが、それも「夢遊病」っていうテーマに沿った夢と現実との境界の曖昧さを表したものと思えば、まぁ肯定的に受け取れなくもないですね…。

 

 

【10】Imaginary Forces『Low Key Movements』

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ひたすら無慈悲にズシンズシンと打ち込まれるビートにノイジーなエレクトロニクスが絡むっていうタイプの音楽でそれ自体は別段新しいものでもないと思うんだけど、今の自分の気分と合ったからなのかなんなのか異様にハマった。6曲目「Wage Packet」や8曲目「Skatta」なんかいやー極悪な鳴りで、容赦なくリスナーを殺しにきてんなってニヤニヤしてしまうほど。Mika Vainio好きは絶対チェックです。あぁこの人のライブ観てみたい。。しかしほんとこのキックの鳴りはなんなんだ…!あー鬼クソかっこいいぞコノヤロー!!

 

 

【9】John Butcher『Nigemizu』

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これに関しては書きたいことはだいたいこちらに。この人のライブ観れたのは間違いなく今年のメイントピックのひとつだし、ノンPAで聴くソロ演奏の凄さ贅沢さったらなかった…。準備中に軽く出しただけでもとんでもなく良い音なんだもんマジでなんなんだあれは…。

 

 

 【8】Sprawl『EP 1』

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インストグライムの注目株MumdanceとLogosがShapednoiseっていうインダストリアル系(?)の人と組んだユニットのデビューEP。2/3はグライム畑の人なわけだから暴力的なノイズが飛び交う、しかししっかりとしたビートミュージックみたいになるかと思いきや、今作はそういったグライムなどのクラブミュージックで肉体に直接的に訴えかけてくる部分以外の言わばサブリミナルに機能している部分(ノイズ成分とでも言えばいいか…)や、その現場の雰囲気(レイヴ感とでも言えばいいか…)のみを抽出して音響作品化したような仕上がり。全部シンセで作ってそうな音ではあるんだけど、なぜかミュージック・コンクレート聴いてるような気分にさせられるところがあるし、圧倒的な存在感のある低音部にはそれだけでわかりやすいビートの不在をカバーできてしまえるような、クラブミュージックのうま味が詰まったような鳴りを感じるしで、本当にこういうのが聴きたかったというか、今の自分にとって理想的な音楽のひとつと言ってもよさそうなほど気に入ってしまいました。今年のモードは“ミュータント”だったのかもしれないけど、このエイリアン・ミュージック(Mumdanceは自身の音楽をこう表現しているそう)、OPNよりArcaよりかっこいいよ。

 

 

【7】Ingrid Laublock Anti-House『Roulette of the Cradle』

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今年はリーダ作以外でも多くの作品がリリースされて、追う方としては楽しくもあり、色んな意味で大変でもあったイングリッド・ラブロックのメインユニットと言ってもよさそうなAnti-Houseの三枚目になるアルバム。この作品でこのユニットの音楽が急に変化したり、また大きく飛躍したものでもないと思うんですが、着実に完成度をジワジワと上げてきている様な、聴くほどに味わい深いアルバムでした。音数が多く、各々の音の徒競走的な競り合い(本当にそういう雰囲気なんですw)や、それを急に止めてピアノやドラムの合図で別の種目が始まるような素っ頓狂な展開がおもしろい長尺の2,7曲目も熱演なんですが(特に7曲目5:50辺りからのラブロックのテナーとメアリー・ハルヴァーソンのギターが歪んだ音で並走する場面は超スリリング!)、個人的には比較的静謐な室内楽的な雰囲気を保った3~6曲目がより聴きものかなと。ソロをとっている楽器に変な間で絡むリズム隊以外の他楽器の音(似たようなモチーフを各々違うタイミングで発したり、タイミング合わせてユニゾンしたり…)があちこちから現れては消えるようなところは、聴覚がモグラ叩き的に振り回されるようなおかしさ、掴み切れなさがあります。ソロなどの即興的なパートにおいても、最終曲のリフレインのような“書かれた”パートにおいても感じられるこの人の風変わりなセンスに今年は本当に夢中でした。あと今作にも参加してるMary Halvorsonは今年出したギターソロの『Meltframe』ってアルバムがすごく話題になってたんですけど、個人的には今作の4,7曲目での演奏のほうが好きかなぁ。まぁ『Meltframe』ももちろん好きではあるけれど。

 

 

【6】Nicolas Bernier & Francisco Meirino『Fiction』

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トーンクラスター聴いてるときのような切迫感を感じさせる強迫的な音の放射と、その(めっちゃメイリノ印って感じの)切断が恐ろしくかっこいい容赦なく無慈悲な音響作品で、ベルニエのどの作品より、もしかしたらメイリノのどの作品よりもこれが好きかもってレベルなんですけど・・・ひとつだけ、これ、レコードよりもCDとかデジタルフォーマットで映えるタイプの音だと思うんだよなぁ~。自分の再生環境がヘボいだけかもしれないけど、Vimeoに上がってる長尺のダイジェスト音源(音がクリア!)のほうがかっこよく聴こえる始末…。

 

 

【5】Hiatus Kaiyote『Choose Your Weapon』

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オーストリア出身の四人組ネオ・ソウル・バンドの二作目。今年のJTNC周辺の音源ではダントツでハマりにハマった一枚。ネオ・ソウルって書きましたけど、それらしいメロウなパートはもちろんありつつ、プログレッシブに展開する部分だったりのそこからはみ出す部分も多いです。「Shaolin Monk Motherfunk」の4分過ぎからの展開後どんどん熱を帯びていく演奏とボーカル(“ハッ!ハッ!”っての最高)にはロック的なダイナミズム感じますし、シンセの彩りや様々なビートの叩き分けが目まぐるしい「By Fire」、アラビックな感じで始まったと思ったらボーカルのリフレインのバックでどんどん演奏の趣が変化していつの間にかドラムンベース的なビートやゲーム音楽っぽいシンセが挿入されてたりする「Atari(ゲーム会社の名前だそう)」なんかには音楽だけにとどまらず様々なものに積極的に影響を受けていくこの人たちの姿勢がよく出ているし、本当にひとつの枠に収まらない奇妙なバランスで成り立った音楽だなと思います。一番好きな曲はバンド感が最も強く感じられる「Swamp Thing」。歪み気味のファットなベースと、つんのめってるのかモタってるのかわからなくなるくらい大袈裟にズレたタイム感で叩くドラムが合わさって、アルバム中でも最もアクの強いビートで押し切るような曲で、外連味のあるコーラスや歌、誇張したくらいにジャズ的な華やかさを纏って演奏に絡んでくるピアノなど、個々の演奏の技量に耳がいくんですけど、それはこれだけアクの強い演奏を入れ込む枠組みとしての曲が比較的シンプルな構造でできているからなのかなと。その辺のコントロールも巧みですね。

 

 

【4】Ropes『dialogue』

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女性シンガーachicoとART-SCHOOLのギタリスト戸高賢史によるデュオのファースト・フル・アルバム。これ本当によく聴きました。1曲目「dialogue」は多分今年一番聴いた曲だと思います。今年は引きこもりがちな自分にしては珍しくあちこち出かけることが多かったんですが、あの時の電車の中でも、あそこへ向かうバスの中でも、あの街並みを眺めながら歩いていた時もこれだったし。おそらく、これほど好きな作品でも、当然のことではあるんですが聴く頻度はこれから徐々に少なくなっていくと思うんですけど、だからこそ、いつか、久しぶりにこれを聴き返すという機会が来た時には、最初に鳴らされるギターの4つの和音だけでで2015年を思い出すことができるんじゃないかなと。それだけで自分にとって代えがたい価値を持ったアルバムってことは明らかだし、それだけで十分ですね。私はこのデュオのメンバー二人に関しては何も知らず、関わった音源もひとつも聴いたことがないので、言わばこれは自分の興味の外側にあった作品なんですけど、Twitterで交流してる方がレビュー書いてて、そこで興味持って初めて出会うことができた一枚なので、この場を借りてお礼を言いたいです。ありがとうございます。

 

 

【3】Matana Roberts『Coin Coin Chapter Three: River Run Thee』

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現在はNYを拠点に活動するシカゴ生まれのサックス奏者・音楽家のマタナ・ロバーツの、Coin Coinというプロジェクトとして3枚目になるアルバム。マタナ・ロバーツは作品を聴くのも本作が初めてで詳しくはないので推測になってしまいますが、基本的にはフリージャズの領域で活動する人だと思います。なんですけどこの作品、比較的なんでもありな感じのあるフリージャズって枠組みの中でも明らかに風変わりな作風で、大雑把に言うと環境音、電子音、オルガン(かシンセ)などの演奏、人の話し声などのコラージュで作られた背景音に本人の歌唱とサックスが混じるというもの。歌声はコラージュに乗るようなかたちで音が近めなのに対して、サックスの音は遠く、背景に混じるようなかたちで収録されていることから、音楽の中心は声なのかなと思います。なにがどうなってジャズ系のミュージシャンからこんな音が出てきたのか全くもって謎なんですけど、単なる環境音や話し声からノイズ的な電子音やら何やらすべてが、音楽に奉仕するような必然的な響きを持ってしまっていることに本当に驚きます。孤独な祈りのような歌唱に始まり、トーンクラスター的なオルガンの和音に酩酊やうめき、そして宣教のようにも表情を変える声が重なる不和を象徴するような部分、鎮静を呼び込むような多重録音のコーラスや子守唄のような歌唱、路上での原始的な喜びに溢れた風景のドキュメントのような響きを有したサックスの演奏、など、グラデーショナルに明暗や喜怒哀楽を行き来する様々な場面を経て、調和の訪れを表すような肯定的な和声感のドローンへ辿り着く構成はシンプルながら身体の内から湧き出るような感動を呼びます。音だけでなくそれが鳴る空間ごと溶かし込んで液状化したブルースとか、ゴスペルの土着成分を培養してできた“環境”音楽とか、この音楽を形容する言葉はいろいろ思いつくんですけど、そのどれもを肯定的に内側に含んでしまうような底なしの包容力を感じる音楽です。私個人はこのマタナ・ロバーツという人とは何から何まで異なった重なる部分のほとんどない人間だと思うんですけど、意味ひとつわからないこの人が発する声にわけがわからないほど心を揺さぶられてなぜか泣きたくなる瞬間がいくつもあって、言葉ではなく音で何かを語るってことの可能性をこれほど盲信させてしまうような音楽もそうないんじゃないかなと。なんというかこの音楽には“すべて”が在ります。めちゃめちゃいい連呼で熱くイチオシしてくれたzu-jaさんに本当に感謝です。

 

 

【2】徳永将豪『Alto Saxophone 2』

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東京で活動するアルトサックス奏者の二作目。ロングトーン中心の即興演奏(と言っても内容を想像できる人はわずかだろうけど)。私はこの人の演奏は2013年の高岡大祐との共作『Duo/Solo』で初めて聴いて、その管楽器から発せられたとは思えない響きに耳を疑うほど驚いたのですが、今作はその時点から特に表現のダイナミクスの幅に格段の進化が伺えるものになっています。継続的に、微細に変化する中で聴きとれる様々な響きの中でも特に特徴的なのは、やはり冒頭から用いられているフィードバックに近いような(つまりサイン波のような)響きかなと思いますが、この音が本当にすごくて、何度聴いても耳が慣れないというか、再生ボタンを押し音が出て「そうそうこの音」みたいにならないんですよね。大袈裟に言えば初めて聴いた時のように毎回ビビります。即興演奏と聴いて頭に思い浮かべる音は人によって違うと思いますが、これはほぼロングトーン(とブレス)で構成されているため、リズムという概念はありませんし、一般的な意味での音程の変化もごくわずかなので、耳にされた方の中にはこの演奏のどの部分に即興性が表れているのかと疑問に思われる方もおられるかもしれませんが、(これは私個人の考えですが)一続きの発音の中で音色(倍音重音の操作)、音量など、音の存在を成り立たせるミクロな要素をどう変化させるか(または変化させず維持するか)にそれは十分聴きとれるのではないかなと思います。また前述したフィードバック(≒サイン波)に近いような響きは性格的には非常にマシニックであるはずなんですが、聴覚的にはそう聴こえても体感的には身体性が全く減ぜられることなく感じとれるのが不思議なところ。他の発音部では比較的わかりやすく耳に入ってくる管楽器の音であることを証明づけるような、息の揺れが即座に反映された音の揺れや発音に混じる息の音も、この部分では非常にわずかであるように思うのですが、たとえわずかでもそれが聴き手にもたらす印象の差異(この場合は身体性の有無)というものは決定的なのだなと思います。即興性や身体性の及びうる(というより内在する)領域を顕微鏡的に拡大し発見した演奏とも言えそう。

 

 

【1】Carl Michael von Hausswolff『Squared』

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これに関しては特に書くことないです。特別目新しいところはない、しかしヤバすぎるドローン。

 

 

 

《総評》

いやーいろんなとこでいろんな人が言ってますけど今年はヤバかったですねぇ。一言で言うと平均点が高い年でした。今回のだと11位からは全部1位みたいなものなんですが(本当にKoenraad Eckerが一位でも全然いいです)、それに続くレベルの作品がとにかく多くて、15~35位辺りの順位決めるのとか相当迷いました。多分一か月後に選ぶと結構変わると思います。こういう年間ベストとかって自分は20枚超えるとだんだん読む気しなくなってくるんで、自分で書く際にもその程度の枚数にすることが多いんですけど、今年はどうしても20,30枚に収まらなくてキリのいい落としどころってことで50って数にしました。これでも泣く泣く削った作品が結構あるのが恐ろしいところ…。あまり意識はしてなかったんですが聴いた新譜の数が例年より多かったみたいで、それもこういった印象の要因になってるのかも。210枚くらい聴いてました(去年はたしか150くらいだったので大分増えてますね)。

聴取傾向にふれておくと、今年はまずここ数年興味の薄れていくばかりだったロックをいいなと思えることが結構あったのが嬉しかったですね。今回のベストに入れたものだと、オウガ、SCLL、Le Volume Courbe、tricot、Ropes、辺りですか。

あとはビートミュージックもここ数年のアンビエント/ドローン寄りだった傾向からすると多く聴いたかな。インストグライムの発見も大きかったですし、最近一番リピートして聴いてるのはKode9『Nothing』ですし、OPNの作風の変化はやっぱいろいろ象徴してるのかなと。

その他のエクスペリメンタル系(あんまりこの分類好きじゃないんですが…)だと、コラージュ性ってのもテーマとして読み取れそう。Matana Roberts、Fraufraulein、John Wiese、Francisco Meirinoなんかはモロにそういう作風だし、Koenraad Eckerなんかもそういう風に聴こえる部分あると思うし、OPNもそうかも。

このブログを最低週一くらいのペースで更新するってのが今年の目標でもあったんですが、それもだいたい達成できたかなと思いますし、こういう風に継続的に音楽について書いたことは今までなかったのでいろいろと発見もありました。なにより自分がどれほどいい加減に音楽聴いてるのがわかった(というかわかってしまったw)のが大きかったです。書こうとして初めて自分が何も考えてないことに気付くということが本当に多かった…。いろいろ考えてるつもりでも、やっぱ何らかのかたちでアウトプットしておかないと、それはつもりで終わってしまうことがほとんどなんだなって。もちろん何も考えずに聴くのが悪いってことでは全然ないですよ。ただたまには、ない頭をこねくり回してよくわからん感想や見当外れな憶測を捻り出すのもなかなか悪くないです。大したものではないですけど、来年もまぁなんかしら書いていくとは思うので、質か量のどちらかは上げていきたいところですね(笑)

その他にも例年になく多くライブに行ったりもして、音楽的にはこれ以上ないってくらい恵まれた一年でした。なのでベストライブとかも気が向いたら書こうかな。

 

じゃ今年はこの辺で。よいお年を。

 

 

 

Best of 2015 (30→16)

2015年の年間ベスト、今回は30位から16位までの15作品です。

50位から31位まではこちら

画像がYoutubeなどの試聴音源へのリンクになっています。

 

 

【30】TRIAC『Days』

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今年のアンビエント/ドローン的な作品ではHakobune『Love Knows Where』と並んでよく聴いた作品。12Kの作品もいいのあったんですけど、そのどれよりLINEから出たこれが気に入りました。個人的に今年は12KよりLINEの年、でしたね。

 

 

【29】Michael Pisaro - Cristián Alvear『Melody, Silence (For Solo Guitar)』

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現代音楽や即興音楽の分野で活動するチリ生まれのギタリストCristián Alvearによる米国の作曲家マイケル・ピサロの作品「Melody, Silence」の演奏。12のパートからなり、それらを自由な順番で演奏することができるとのこと。簡素な和音とメロディー、E-Bowによるドローン、無音、の3つのパートで成り立った美しいギター曲です。非常にゆっくり立ち上がるドローンや長く無音が続くパートもあるのですが、それらの時間はおそらく演奏者の任意ではないかと。和音、メロディーの部分に関してはこの曲の演奏経験がある杉本拓さんのツイートによると五線譜に書いてあるそう。パートの並び替えや長さなど時間軸上の操作を演奏者に委ねることで、その操作の違いによって音楽の聴こえ方がどう変わってくるかとか、そういったところに焦点を当てた作品なのかも。個人的にはなによりソロギターのための静謐で長尺の楽曲(本演奏では46分)というのが新鮮でした。和音とメロディーのパートには淡い郷愁感のようなものを感じるんだけど、これがピアノで演奏されたものだったら随分印象も異なっていたのではないかな(もっと無機質に聴こえそう)。あとこれとTRIAC『Days』、全然違った音楽ですけど、どちらも同じくらいの濃度で“ラテンっぽさ”を感じる音楽だなと思ったり。

 

 

【28】Virginia Genta, Dag Stiberg, Jon Wesseltoft, David Vanzan『Det Kritiske Punkt』

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数日前に届いたばかりの今年最後の大捕り物。最高にやかましいフリージャズです。とにかく冒頭からVirginia Gentaの吹きっぷりが最高。でもこのアルバム、どこかサラッと聴けてしまう軽さみたいなものもあって、しかめっ面で演奏する姿がすぐ思い浮かぶような観念的で重々しい雰囲気が一切ないんですよね。こんだけ吹きまくり弾きまくり叩きまくりの熱のある演奏でも、そこに「スタイル」以上の価値を感じさせないようなところがある気がします。個人的にはそれはすごく重要なことで(何かしらのイデオロギーがついてまわったり、その発生装置と化している音楽ってどちらかというと苦手なので…)、そのドライさがあるからこそ、こういうスタイルの、ものすごくカッコいいものだってこと以外を何も考えずに楽しむことができました。

 

 

【27】Sam Prekop『The Republic』

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The Sea and Cakeのフロントマンの2010年以来のソロアルバム。モジュラーシンセを用いて制作されたアルバム。アルバム前半に収録された「The Republic 1~9」というタイトルのインスタレーション用の音源がとてもいい。モジュラーシンセを用いて制作された作品って、それまでの自らの作風は一旦置いて目の前の機材と戯れたようなものと、自分の音楽を維持してあくまでその中の一要素として扱ったものがあると思うんですけど(このタイプはモジュラーシンセ以外の機材も同時に用いることが多い印象)、今作はモジュラーシンセのみを用いているにも関わらずその音に自身の作家性を封じ込めることができているように思います。

 

 

【26】Nick Fraser『Too Many Continents』

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トニー・マラビーとクリス・デイヴィスの演奏がたっぷり聴けるすごくオレ得なアルバム。サックス、コード楽器、ドラムって編成は、それぞれと共演歴もある面子で構成されたTom Rainey Trioと近いとも言えそう。音楽の成り立ちもそう言えるかも。そのTom Rainey Trioも今年アルバム『Hotel Grief』出してたんだけど、私はこっちがより好みでした。フリーキーな音楽なんだけど、リラックスして演奏してる感じもあってなぜかとても聴きやすいのでリピートして聴けるってのが大きい。トニー・マラビーはテナーはいつもより自然体で、ソプラノはよりアグレッシブに吹いてる印象で、ソプラノにいたっては相当積極的に変な音出してるんだけど、ジャズ寄りの奏者でソプラノでこういう表現する(できる)人ってすごく珍しい気がする。ロスコー・ミッチェルくらいしか思い浮かばない(即興系ならエヴァン・パーカーとかジョン・ブッチャーとかいっぱいいるけど)。

 

 

【25】Visionist『Safe』

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全然セーフじゃない完全にアウトなベストオブ顔ジャケ2015。インストグライムの存在を私個人に知らしめてくれた偉大な作品です。爆撃を連想させるようなビートだったりアジテーティヴに感じられる部分と、声ネタとかのミステリアス?なのか多少ふざけているようにも聴こえる部分が混在してて、で、このジャケだし、なんか謎なセンスの持ち主だなって思います。PANから出たってのも重要(じゃなかったら多分手に取ってないと思う)、そこも併せて表彰したい。

 

 

【24】Vijay Iyer『Break Stuff』

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最初はちょっと地味なアルバムかなって印象だったんですけど、気付いたらこのトリオのアルバムでファーストチョイスになってました。デトロイト・テクノの重鎮ロバート・フッドの名を冠した4曲目「Hood」はその名に恥じぬミニマリズムとグルーヴを彼ららしい幾何学模様を思わせる音の組み合わせで完璧に表現した名曲名演だと思うし(この曲の中毒性たるや…)、コルトレーン作の「Countdown」でのマーカス・ギルモアの叩きっぷりには心底惚れ惚れするしで最高。あとECMのレーベルカラーに合わせてか静謐な楽曲も多いんですけどそれがまたどれもいい。

 

 

 【23】Rema Hasumi『UTAZATA』

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感想こちら(のページの下のほう)にあります。  

 

 

【22】Kode9『Nothing』

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Hyperdub主宰のソロでは初アルバムらしいです。ダブステップの人ってイメージだったんですけど、これはジューク/フットワークだったりグライムだったりの影響がより色濃く感じられるビート集。現在進行形のビート/ベースミュージックを渡り歩くような多彩さ、遊び心あるのに洗練された感じもあって(ズレ、モタり、つんのめるようなタイム感の操作も決してしつこくならない)、聴き心地は軽いのに軽薄ではないっていう、とにかく反則的にセンスがいい!特別なことはしていないように聴こえるんだけど、音を時間軸上に記す点として扱って、それをどこに置くか、どう重ねるか、そしてどう繋ぐかっていう、シーケンスを“組む”ことの可能性や楽しさが伝わる作品だと思います。

 

 

【21】Kendrick Lamar『To Pimp A Butterfly』

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音楽的な論点、政治的な論点、色んな方向から語りようがあるんでしょうけど、個人的なハイライトは「i」のアルバムバージョンで炸裂してるふなっしー的なフロウ。しょーもない気がしますけどそこが最高なんですすみません。「u」の前半や「The Blacker The Berry」のシリアスなラップ、まんまレディヘのピラミッド・ソングな「How Much A Dollar Cost」、「Complexion」の後半のJディラ的なビートなどなど他にもたくさん聴きどころあるしやっぱ傑作ですよ。2015年を代表する、とか、今後のブラック・ミュージックの方向性をなんたらとか、そういったことは置いといて、かっこいいヒップホップのアルバム(のひとつ)として大事にしていきたいな。

 

 

【20】tricot『AND』

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ソリッドなギターサウンドと変拍子を多用したリフ中心(ストロークに一捻りあるコードリフだったり歌メロの裏で複雑に動く単音のラインだったり多彩なのでリフって一言で表してしまっていいのかは微妙ですが…)の曲作りがまずかっこよくて、マスロック化したナンバーガールみたいにも聴こえたんですけど、考えてみるとマスロックってあんまりちゃんと聴いてないし、ナンバーガールはひと通り聴いてるけど実はそれほどハマらなかったってのが正直なところだったりするし…っていう個人的な経緯もあってかとても新鮮でした。で、このバンド、そういった曲の構造的な面白さだったり凝った演奏の部分がまず語られるべきところなんだろうなって思うんですが、そういった技巧的な面を歌メロの力(=エモさ!)が助走つけて飛び越えていくような瞬間が多々あってそれがどうしようもなくまた魅力的。声張り上げて荒っぽく歌うところなんか本当にいい。最後の曲「Break」は歌詞といい曲調といいニクいくらいにこのアルバムのラストに相応しくて、輝いて聴こえます。

 

 

【19】Hakobune『Love Knows Where』

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言わずと知れた日本を代表すると言ってもいいレベルのアンビエント/ドローン作家だけど、個人的にはそれほど多く作品を聴いているわけではなくて、これだ!と思う決定的な作品にもまだ出会えてない感じがあったんだけど(強いて言うならPleqとの共作『Adrift』が好き)、これは遂にキました。私はアンビエント/ドローンにはそれほど叙情性は必要ないと思ってるというか、扱いに注意しなければならないと思っていて、センチメンタルに流れ過ぎた“ドローン”としての硬派さを失ったアンビエントってもはや“それ風”のなにかにしか聴こえなくて嫌いなんですが(アンビエント/ドローンの“ドローン”の部分を重く見ているってことだと思います)、これはそういった硬派さを失わず叙情性をドローンの中に見事に溶かし込んでいるように聴こえてめちゃくちゃハマりました。これはある方がブログで紹介してて知ったんですけど、完全に予想上回る出来で、もう本当にあの記事書いてくれてありがとうございました。

 

 

【18】Grischa Lichtenberger『LA DEMEURE; il y a péril en la demeure』

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今年のRaster-Notonは結構好きなの多かったんですけど一番はこれでした。一曲目「1 B Palcamp Rm」のもう完全にヒップホップじゃんっていうようなモタったビートから最高。金属的なグリッチ音が飛び交う5曲目や前のめりなビートと細かくて速いエディットで押し切る6曲目もかっこいいし、極めつけは最も複雑に音が重なり合う9曲目「Cl Vb 2_v2」。この人の音ってインダストリアルさを感じるところもあるんだけど、それは切迫感を持ったリアルで退廃的な臭いのするタイプのものではなくて、なんというかSF臭のするような誇大妄想的でロマンチックなタイプのものである気がして、そんな彼の頭の中にだけある物質が目の前で組み上がって巨大な何かが姿を現すような、そんな曲になってます(←こんな妄想をしたくなる曲になってますw)。1stより随分コンパクトな作品になったのもあってリピートしまくりました。

 

 

【17】Stephen Cornford『Kinetic Sculptures』

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もはや一般的な意味での音楽家の範疇には収まりきらなくなってる感のあるスティーヴン・コンフォードの過去作品集+αな内容のアルバム。インスタレーションと言ってもいいような装置(あえて楽器とは言わない)が発する即物的な音の記録。特にこのアルバムは物音やノイズというよりはドローンやアンビエントに近いような持続音が多く収録されていて、頭脳労働の後みたいな、頭使って首肩凝って疲れたなーって時に聴くと、物質的な音がただただ頭と身体を通り抜けていく感じがとても心地いい。

 

 

【16】France Jobin + Fabio Perletta『Mirror Neurons』

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フランス・ジョビンは寡黙な作風のわりに結構リリースは多くて、本名名義で活動するようになったここ数年は年に一枚くらいのペースで出してると思うし、そのどれも年間ベストに入れるか迷うくらいに気に入ってるんだけど、今年はまた作風の近いFabio Perlettaと組んで格別にいいの出してくれました。France Jobinは特に本名名義で活動するようになってからは(元々はi8uって名前で活動してた)、それまでのロウアーケースからの影響を感じさせるサウンドアート寄りな作風から徐々により音楽的というか情感豊かなアンビエント/ドローン的な方向性へシフトしていってる感じだったんだけど(そしてその方向性の到達点が去年の『sans repères』かなと思うんだけど)、今作は「共感と物理的な距離の概念を調査するメディアプロジェクト」の一環として制作されたという経緯が示すようにサウンドアート的な側面が強い作品。透明な素材でできたオルガンの響きのような澄んだドローンに身体が消えてなくなるほど浄化される。

 

 

 

Best of 2015 (50→31)

年間ベストです。今年は50枚選んで順位つけたのですが一気に載せるのは流石に見にくいので何回かに分けます。今回は50位から31位までの20枚を。

画像がYoutubeなど各種試聴へのリンクになっています。

 

 

【50】Gianluca Favaron + Stefano Gentile『Entretien』

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Gianluca Favaronが運営する“13”というレーベルは今年の嬉しい発見のひとつでした。Francisco LopezやCarl Michael von Hausswolffなんかの音源も出してるみたいでこれからも要チェックってことになりそう。今作もその13からで、フォトブック付きの凝った装丁がいい感じ。音のほうは基本的には周期的な音の折り重なりと即興的に挿入される様々な音で成り立ったサウンドスケープ系なんですが、環境音を加工したような音やガサゴソとした物音っぽい電子音、ノイズなどどれもが「この音どうやって作ってるんだろう…」って好奇心を刺激してくる感じで面白く聴けました。サンプルを逆回転してるように聴こえるところや、モジュラーシンセ使った即興で耳にするような感じもある、ような気がするけどよくわからない…。    

 

 

【49】Frank Bretschneider『Isolation』

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Raster-NotonやLINEなんかから多くリリースしてる電子音響の重鎮なんですが、これまでの作品は全然嫌いではないけどそんなにハマらなかったんですよね…。でも今年前述の2つのレーベルから出した二作はどちらもすごく好きで、すごく今更な感じなんですけどやっとこの人の音楽にしっかり没入することができた感じがして嬉しかったです。これはインスタレーション用に作曲されたもので、音も正にそんな感じというか、サイン波とホワイトノイズを主に用いたまぁこの辺の音よく聴く方なら「あーこういう音ね」って思っても不思議じゃないようなものなんですけど、そういったマンネリズムを単純にブラッシュアップされた音の精度や作品のクオリティで真正面から超えようとしてくるっていう、なんか男前な逸品でした。

 

 

【48】Frédéric Nogray, Yannick Dauby『Panotii Auricularis』

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Yannick Daubyは今年いっぱい出してて大活躍だったけど最終的にはこれが一番好きかな。モジュラーシンセと鳥や虫の鳴き声の共演。音数少ないのがいい。自分こういうの好きだなってしみじみと思う音。

 

 

【47】Coppice『Cores/Eruct』

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シカゴの二人組。名前は知ってて気にはなってたんだけどちゃんと聴くのはこれが初めて。だったんだけど無機質な音でたまんね。プリぺアド足踏みオルガンやテープ使ったって書いてあったのでまぁ一応“演奏”の記録とも言えそうだけど、聴いてる分にはまぁ無機質。スティーヴン・コンフォードとか好きな人は是非ご試聴あれ。

 

 

【46】Arca『Mutant』

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正直なところ『Xen』がわかりやすくダイナミックになっただけではって思うところがあるし、適当に作ってるだけにしか聴こえない部分だったり、結構凡庸なエレクトロニカになってしまってるように聴こえる曲だったりもあるんですけど、そういう部分に目を瞑ってしまえるくらい1曲目「Alive」が良すぎる。とかく“奇形”的な扱いをされる作家だしそれに納得いかないわけでも全然ないんですけど、この曲のあまりにストレートに胸に訴えかけてくるような魅力、感動は、音楽聴いて受け取ることのできるあらゆる事象の中でも王道ド真ん中のものであるように感じるんですよね。この曲、一体何考えながら作ったんだろう…めっちゃ気になる…というか願わくば特定の誰か(と生きることや死んでいくこと)を思いながら作った曲であってほしい…。

 

 

【45】OGRE YOU ASSHOLE『workshop』

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これ夜のドライブ中に聴くの本当に最高です。いや、欲を言うなら朝焼けの時間にかかることを見越した時間にやるともっと最高です。ライブに行きたくなるライブ盤。

 

 

【44】dCprG『Franz Kafka's South Amerika』

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dCprG(もといDCPRGもといデートコースなんたらかんたら)と言ったらポリリズム!何分の何拍子?数学的!知的!構造の美学!ポストモダン!ってな感じ(適当です)なのかもしれませんが、このアルバムに関しては私はひたすらギター!ギタァ!!うひょ~かっけーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!って感じです。はいバカです。ニコ生のライブ配信でもモニターの前でバカになってました。ますますこのアルバムが好きになる最高に楽しい配信でした。こちらからは以上です。

 

 

【43】Thomas Brinkmann『What You Hear (Is What You Hear)』

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Mikikiの八木皓平さんの記事にもあるように、ここ数年はミニマル・ミュージックをそれぞれのやり方で消化した音楽がひとつのトレンドになってる感じがあるんですが、そんな中で、というよりそんな流れとは一切関係ない感じで出された一枚。これはもうミニマル・ミュージックという名の音楽というより、ミニマリズムそのものを音に写し取っただけというか、ミニマルであること自体が持つ厳格な美意識以外のものが何もない世界でただ鳴り続けてる音って感じ。ひとつの価値観を中心に据えて作られた作品というとそんなに珍しい感じはしませんが、ここまで徹底してイっちゃってる作品はそうないでしょう…。例えばマイブラのラヴレスの音を理想としてそれをどこまでも追い続ける人がいるように、これが引き金となってある種のシンドロームが起こっても不思議ではないと思わせられるような強力な磁場を持った作品だと思います。

 

 

【42】William BasinskiCascade

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この人の作品で聴くピアノの音がとても好き。

 

 

【41】Frank Bretschneider『Sinn + Form』

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LINEからの『Isolation』も良かったFrank BretschneiderのこちらはRaster-Notonからのリリース。ブックラやサージのモジュラーシンセと戯れた音の記録って感じで、規則性とランダム性が入り交じる音の動きがおもしろかっこいいです。

 

 

【40】Francisco Meirino『Riots』

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リリースも多いし結構いろんな手法で制作する人な印象だけど、今回はタイトル通り“暴動”のフィールドレコーディング/コラージュで、コンセプトの明確さとコンパクトさ(A面B面合わせて20分程度)が前面に出てる感じ。A面なんて本当に暴動の音をコラージュしたただそれだけなんだけど、録音の質感から音素材そのものやその配置に至るまでこの人のセンスがギンギンに出てるし改めて強力な作家性の持ち主だなと思った。カセットの音質にも馴染んだ音楽だと思うしパッケージもカッコよかったし安いしでトータルですごく印象のいいリリースでもありました。

 

 

【39】Oracles『Divination II』

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NYPのインストグライム・コンピ。かっこいい曲多くてクオリティー高いです。

 

 

【38】Spangle call Lilli line『ghost is dead』

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興味を失いかけてたSCLLなんですけど、聴いてみたらすごくよかったし、すぐにいいと思えた自分にちょっとびっくりしたり。

 

 

【37】中島吏英『Four Forms』

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小物や小道具を用いて演奏する英国在住の音楽家のデビューLP。使用する小物などには電池式の駆動部のようなものが取り付けられていて、おそらくそれによってある程度自動的かつ規則的に音を出してるのかなと。カタカタ、コトコトといった規則的でこじんまりとした物音や、散発的に鳴らされる陶器や金属板などその素材の質感がよく感じとれる打音、ジリジリといった古めかしい目覚ましを連想させるような音、ガシャガシャといった濁音での形容が似合うような濁った低い響きなどなど、どれもシステマティックに鳴らされていそうなんだけど、不思議と人がたてる音特有の騒がしさみたいなものが耳障りでない程度に感じられて面白い。

 

 

【36】Le Volume Courbe『I Wish Dee Dee Ramone Was Here With Me』

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12月のある日、ふとこの人の1st『I Killed My Best Friend(2005)』の存在を思い出して聴いておりまして(それにしてもなんてタイトルだ…)、「そういえばこの人今なにしてんだろーなー」なんて思って調べてみたら11月に10年ぶりにセカンド出してやんの。という不思議な巡り合わせもあって若干眼鏡に色の付いた状態でしか聴けなくなってる一枚ですけど、まぁとにかく6曲目「Rusty」を聴いてほしい。1分過ぎた辺りでノイズなギター入ってくるとこ最高だから。鳥肌たつから。いやー自分こういう音でまだ感動できるんだなって心底うれしくなりました。曲単位では今年トップクラスに好きです。

 

 

【35】Russell Haswell『As Sure As Night Follows Day』

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ロウでワルーい音。でも現代的。ズルかっこいい。こちらに感想あります。

 

 

【34】John Wiese『Deviate From Balance』

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凄いんですけど、凄すぎてついて行けないと思ってしまうところが少しあるかな…。通して聴くと重いからアナログのA~D面に分けて聴こうと思うんだけど、『Circle Snare』買ってからはじゃあそっち聴けばいいやってなってしまってこちらを再生することが随分少なくなってしまった。

 

 

【33】Oneohtrix Point Never『Garden Of Delete』

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これについてはツイッターのほうで散々いろいろ言った気がするんですけど、どういう風なこと言ってたかはうまく思い出せない…。よく聴いたし面白いアルバムだと思います。好きな曲は「Mutant Standard」。これは名曲!!

 

 

【32】Jürg Frey『Circles And Landscapes』

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最後に収録された「Extended Circular Music No.9」が好きすぎる。

 

 

【31】Chevel『Blurse』

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LucyのStroboscopic Artefactsから今年唯一のフルレンス。正直このレーベルのイメージにない音で最初は「これアリなのか??」って戸惑い気味だったんですが何回か聴いてたら全然アリになりました(笑) Stroboscopic Artefactsはインダストリアルなど近年のモードはしっかり押さえつつも基本的にはディープテクノのイメージだったんですけど、これは90年代初頭のWARPのAIシリーズ思い起こさせるような曲だったり、グライムの影響が感じられるところも結構あって、なんかUK寄りな作風に思えました。あと音作りもちょっと独特で、例えばレーベルメイトのLucyやDadubなんかの全ての音が混然一体となった感じと比べると、レイヤー感がないというかそれぞれの音が個別に鳴ってる感じが強くて(まぁ単純に音数少ないからってのも大きいと思いますが)、かといって全然バラバラって感じではないんですけど、別々のハード機材から出た音が同時に鳴ってる(だけ)みたいな様子がすぐ頭に浮かぶ感じというか…。どんどん印象論になってしまうんですけど“黎明期のリスニング・テクノの音作りを意識した”とかそんな感じじゃないのかなとか想像してみたり。